![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/147114744/rectangle_large_type_2_7bb2eab27b6afe623f78ec015e917978.jpeg?width=1200)
アアルトの美学〜フィンランドの森と湖が育んだデザイン〜
ヘルシンキに向かう飛行機の中から見下ろすと、森と点在する湖の美しい景色が広がり、スケール感も色彩も調和する都市が見えてきます。前回の記事でご紹介した建築家アルバ・アアルトと、妻で建築家のアイノ・アアルトが暮らした自邸は、ヘルシンキ郊外の湖のそばにあり、夏の家はフィンランド北部の湖の島にあります。自然を感じながらの暮らしが、デザインにもインスピレーションを与えていると思います。
![](https://assets.st-note.com/img/1720835399414-tdkloiJeAX.jpg?width=1200)
アアルトのシンプルで柔らかさを持つインテリア製品のデザインは、80年以上たった今もモダンデザインの住宅に取り入れやすく、販売され続けています。私も日々愛用している製品を交えながらご紹介します。
◇波や湖を思わせるガラス製品
アアルト(Aalto)は フィンランド語で“波”という意味。
彼の感性を象徴するようなフラワーベースは、透明なガラスの曲線と水を透過した光が美しく、春は細めの花弁のチューリップを茎の黄緑の色も生かしながら、夏は水を活けるように涼しげに、秋から冬は葉の濃淡や色の違いと花の色を生かしゴージャス感を出しながらアレンジしています。
![](https://assets.st-note.com/img/1720835481480-JaNrIgqsAe.jpg?width=1200)
下の写真は、妻 アイノがデザインした水の波紋のイメージのグラス。硝子の色と飲み物の色との組み合わせが楽しめますし、厚みがあるので日常使いにしています。
![](https://assets.st-note.com/img/1720835551812-kGH5TlGw8t.jpg?width=1200)
◇照明
独特のフォルムと色彩でアクセントをつけて、空間を魅力的なものにしてくれます。
写真は、アアルト設計フィンランディアホール ホワイエの照明です。ホワイトのフォルムは陰影を際立たせ、煌めくゴールドの部分のスリットから、漏れる光の筋が広がります。白夜の太陽が低い位置から針葉樹林に差してきて、木々のシルエットが浮かび上がっているようなイメージです。
![](https://assets.st-note.com/img/1720835628725-GwenZkSMft.jpg?width=1200)
◇テキスタイル
アアルト自邸で書斎のカーテンに使われている、イタリア山岳都市シエナの石畳をイメージした「シエナ」というシリーズがあります。白と黒のはっきりした色使いですが、一つ一つのブロックの模様は、手作りのような優しさがあります。アアルトの建築でも多く使われているレンガのリズム感にも通じますし、ピアノの黒鍵にも似ていています。
![](https://assets.st-note.com/img/1720835756551-kvqAcyFBzr.jpg)
◇家具
フィンランドのバーチ材を曲げ加工した部材を使用して、明るい木の色で手触りが良いのが特徴です。下の写真のスツール60は、2020年ドイツ サスティナビリティ アワード 初のデザイン賞受賞。サイドテーブル、花の鉢などのディスプレイ、スタッキングできるので来客時の補助いすとして使用しています。
![](https://assets.st-note.com/img/1720835975201-3BteLTfhzv.jpg)
アームチェア パイミオは、サナトリウムで使用するため、呼吸が楽になるように背の角度が決められ、気持ちが明るくなるようにサナトリウムの鮮やかな黄色の床に置かれています。
下の写真は、1/16サイズで作成したペーパーモデルです。紙を貼り合わせて厚みを出してアームを作ると、微妙な曲線が実感できます。
![](https://assets.st-note.com/img/1720836027137-4MJRw3cBa2.jpg)
アアルト自邸のコートラックのバーチ材は、長い年月を経て落ち着いた色になっています。
![](https://assets.st-note.com/img/1720836084110-VTBURO8kZY.jpg)
インテリアを考えるとき、自然に由来した普遍的なデザイン、経年の変化を楽しめる木材などがベースになっていると全体が調和し、木を多用してきた日本人にも馴染みやすいです。
光の広がり方が美しい照明、ファブリックをプラスして、心の安らぐ暮らしにしてはいかがでしょうか?
(その6 終わり)
執筆 住まいのナビゲーター/一級建築士 亀井真理