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設計者はワタシ~U邸家づくりルポ~第9回

●其の9 見積り打合せを重ね…ついに工事のご契約 の巻

 設計事務所の住まいづくりでは、住宅メーカーや工務店と違って、“設計者(設計する人)”と“施工者(工事する人)”はほとんどの場合、別々になります。
 そのため、設計が出来上がってから見積が出るまでに時間がかかること、そして、その見積が出るまでは正確な予算が把握できないのが難点です。基本設計をまとめ、施工会社が見積を上げてくれてやっと、その家の各所に値札がついたことになります。
 施工会社の見積には統一されたフォーマットはありません。例えば下駄箱が「木工事」「建具工事」「塗装工事」と3つの項目に入っていたりします。
 さらに「木工事」は<材料>と<手間賃>に分かれていたり、いったいこの下駄箱いくらなの?と聞かれても、すぐにお答えするのは難しいことが多いのです。
 ワタシはそれらの項目を揃えて比較し易くしたものを作成し、お施主様にも分りやすくお伝えするように心がけています。もちろん、その前に整理しないとワタシもわかりません。

 概要をU様にご説明した上で、減額するならこの項目、値引きを相談するならこの項目などとピックアップしていきます。もちろん、ただ単に「安くして!」ということではなく、実際に減らす項目を提示し、値引きの根拠も示すこと。とはいえ、設計者ワタシの気持ちとしては、ただ単に「安くして!」と言いたいですが…。

 打合せを踏まえて、施工会社2社に再度見積を依頼し、1週間頑張ってもらいました。内容自体を減額している項目と、単純に価格再検討をお願いしている項目があり、なかなかわかりづらいのですが、できるだけわかり易くまとめたものを用意しました。それを踏まえてさらに減額可能なものや、無くすまたは変更すればコストは下げられるけれど削らないほうが良いものなどについて打合せしました。
 これがすごく大事。
 打合せというのは、本当に大切なものを、資料を進めながら、会話を通して探すことだと思います。単純に安いほうがいいならばそもそも設計事務所に頼まれる必要がないのですから、コストに見合う価値のあるものはしっかりと意見をお伝えすることが大切だと考えています。

 その間に、U 様ご夫妻とショールームにて子世帯キッチンの打合せをしました。ショールームは3ヶ所目にですが、以前と同様にメーカーの方にアテンドしてもらいながら一通りの仕様を決め、見積を依頼しました。
 キッチンは奥様の大変大切にされている場所、設備ですので、納得いただけるまで考えて決めていただきたいのですが、全体のスケジュールからするとそろそろ工事の契約を結んで既存家屋の解体の手配にかからないと間に合わなくなってしまいます。
 そこで、ここまでで一番可能性のあるメーカーを仮に決めていただき、工事契約に進むことになりました。
 実際にキッチンの設置は工事終盤ですので、時間はまだあります。着工する前に決まっていなければならないこと、途中で決めても間に合うことがありますので、全て契約時、着工時で確定である必要はありません。
 なお、ユニットバスは工事の早い段階で組み立てて完成しますので、あまり悩んでいる時間はない項目でしたが、すんなり決めていただけました。

 そして大安吉日のパーフェクトな日に、お母様のお宅で、工事をお願いすることになった施工会社と工事請負契約を交わしました。ワタシも当然、立ち会いました。当初スケジュールより1週間ほど延びましたが、許容範囲のタイミングで、着工となりそうです。
 この後、既存家屋の解体、樹木の伐採、整地へと進みます。

解体の様子
造る時は大変だけど、壊すだけならあっという間
しっかり分別して廃棄するのでとても大変そうです

(その9 終わり)
執筆 住まいのナビゲーター/一級建築士 古屋英紀


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