設計者はワタシ~U邸家づくりルポ~第7回
●其の7 ショールームでお打合&構造をよ~く考える の巻
今日はショールームで商品を見て選んでいただき、その後で打ち合わせです。
ショールームに行くのは、そのメーカーの商品を知る、他と比べるのはもちろん、実際に色々と触れながらご自分の要望を探したり確認する意味もあるので、決めなければいけなくなる前に、早い段階で一緒に行ってもらうようにしています。一度設計者と一緒に一回りしておくと、その後はご自身だけでも色々と見に行きやすいと思います。
毎年各メーカーが凌ぎを削って新しい機能を開発しているので、とても一設計者が紹介できるはずもなく、ショールームではメーカーの方にアテンドいただき、図面と定価見積の作成をお願いして終わり、という流れになります。ここ数年とても混んでいるので、特に休日は予約が必須です。
ここで設計者の仕事は、図面を用意してアテンドしてくれる方に概要を伝えます。例えばキッチンのサイズ、天井の高さ、窓の位置、予算帯、大事なのは「今日何をしに来たか」ということ。キッチンの幅がどのくらい必要か考えているくらいの初期段階なのか、どのグレードでどのくらいの金額か大まかに知りたいのか、もしくは今日で最終決定してすぐ発注かけたいのか。それによって商品の紹介の仕方も、時間の掛け方も変わってきます。
ワタシは二社くらい一緒に回って、気に入ったほうで仮決めしてもらい、全体の予算が出てから改めて見に行きます。設備の最終決定は着工してからでも間に合うので特に納得のいくまで考えてもらうようにしています。納得のいく商品がなければ、フルオーダーで製作してくれる会社もありますし、ワタシが設計して現場で作るということもできます。選択肢も時間もたくさんあることをご説明し、今日は軽い気持ちで一通り決めてもらうようにU様にお願いしました。
また、ワタシの性分としてお願いしているのが、「木目調や石目調などの柄は、できたら避けませんか」ということ。柄をプリントしたものがどうしても受け入れ難いのです。確かに天然の素材は反ったり割れたり汚れたりしますし、材ごとのバラつきがあります。性能だけ見れば樹脂のほうが良いかもしれない。であれば、樹脂らしい樹脂を選べばよい。樹脂のくせに遠くから見ると木、石というのはなんだか気持ちが悪いのです。木の雰囲気が好きだけどお手入れが大変そう、という方が木調の商品を選ぶ気持ちも理解できるのですが、経年劣化が角のシート剥がれという素材はやはり愛着が湧かないのではないでしょうか。
そんなわけで、お施主様が希望するしないに関わらずそれだけは設計者の希望としてお伝えしています。
今日は三時間かけてキッチン、ユニットバス、洗面台を二世帯分仮決めし、駆け足で窓の見学までしていただきました。大変お疲れ様でした。
さて。
続いてお話するのは、構造です。
建築の図面は意匠、構造、設備に分けられます。
デザインや計画を指す意匠。建物が荷重、風、地震によって壊れないための構造。電気・空調・給排水・ガスなど設備。
構造は当然もっとも大切な部分ですが、一番お施主様にはわかりにくいもの。丈夫につくるのは当然として、必要以上に部材を使ってコストが上がらないように考えます。ここはじっくり慎重に、慎重に。
建物は構造形式にかかわらず全て、中規模地震(震度5強程度=東日本大震災における東京の最大震度)に対してほとんど損傷しない、大規模地震(震度6強~7)に対して倒壊・崩壊しないという基準の元に建てられます。
U様邸は長期優良住宅の認定を受ける予定なので、通常確認申請に必要な強さの1.25倍以上強い耐震等級2の計画が必須です。
次回は設備についてお話します。
(その7 終わり)
執筆 住まいのナビゲーター/一級建築士 古屋英紀