「可愛い子と付き合いたい」とか言い返していたら。
「イケメンと付き合いたい」とか軽いノリで彼女が発言していた。そういうのは本音なのだろうけど、公にはしない方が無難だろうなと思わされた。
けっこう日常で、当たり前に出ている会話のようだけど。どこか少しは、躊躇されながら取り扱われる内容だと感じる。
「顔が良い」それが全てではないだろうとは思いながらも、なんとなく、そうした言葉は胸に刺さっている。ただ本音のところ、付き合うとするなら、誰でも"自分にとって都合が良い"そんな他人探しをしているのだろうとは思う。
当たり障りのない「性格が良い人が理想」だと言うのも。よく考えると、それも自分にとって必要としている要素として、都合を求めている価値観であって。
いうなら彼女は「性格が良い人」を探しているのと同じ感覚をして「顔が良い人」を探しているだけで。きっとそれが単純に、個々の感じる好みの違いなんだろうと考えさせられるけど。
僕の感覚は、彼女の言ってた「顔が良い」といった考えを支持したい訳ではなさそうだった。それが、なんとなく誰かの居心地の悪さをつくっていそうだからだろうな。とはいえ、そう言っていた彼女の言った言葉の意味は「付き合うとするなら」を前提にしていただけの意味だったのだと思う。
その考えをもってして、彼女は別に誰かを批判するようなことを表現していたつもりではなく。あくまでも批判することは違い、特別視を向ける相手の判断基準であって。本人自身も、顔が良いだけが全てだとは、思っていなかったのだと思うけど。
「そういうモノでしょう」なんて顔をされてから。「そういうモノであっていいのか」という疑問が僕の中に浮かんできて。
そんな言葉を聞いて。それでもきっと僕自身も他人から、そういう目線に晒されていて、そういう視点で見られていた節があったとは思い返して。その経験を通してからか、他人が人を見ている際、一体何を気にして見ているのか分かっているから、自分自身は何に気を使うべきなのかを意識しはじめたんだろう。
全ての人が、そうした偏りのある視点を持っていないにしても。彼女のような人がいて、そして僕のような考えの人もいて。結局のところ僕らの考えが共通してる所があるとすれば、どの価値基準を使って"自分に都合が良い要素を持つ人"を探しているかという点なのだろう。
こうして考えると自分の良さなんて、誰かにとってしての都合のいい良さであり。自分の為、とはなっていなくて。自分の良さを積み上げることで、誰かに認めてもらうためとして、自分の良さを繕ってしまっているからだろうと感じる。
誰かに何かを無意識に求めている代わりに、それは自分に求められていることとして周って返ってくる。きっと誰かに特別視をしてもらう為には、特別視を向けられるような人になろうと努力をしている。誰かに見られているってのが前提で、自分を良く見せる考えを常に人は持ってしまうのだろう。
彼女が言ってた「見た目」とかの価値観に、それが全てではないと、僕の中では解釈はしていながら。でもやはり"それも含めて"という考えが、僕の中にも確かにあるのを感じて。どうにもできない問題は、人の些細に感じてしまう感覚の中から生まれているんだと思えて。
結局のところ、顔が良いって部分も注目を集められる要素なのだ。ただ一つ言えるとすれば、それは一つの評価指標にしかすぎなく。顔が良くとも、それとは別に、性格が屑であれば評価も下がるだろうとは思えて。
評価指標は多種多様であるから。相手にとって都合が悪い要素も併せて持つなら、それに伴って評価も下がってくるもので。何かの評価で注目は集められたとしても、別の物差しでも測られた際には、注目が集まった数だけの評価は同時に下がるもので。
言ってしまえば、自分の考えなんかで全てコントロール出来るわけがなく、自分は誰かの感じ方だけに振り回されていて。自分に素直に生きているだけの彼女が毒舌のような発言に感じている違和感は、僕と彼女との感じ方の違いから相違したもので。
感じ方。そこから思えたのは。あの瞬間に僕が意地を張って「可愛い子と付き合いたい」とか、皮肉にも言い返していたら。彼女はそれに対して、どのような反応を示したんだろうと。
それを聞いて、彼女が怒りを込み上げるのなら。やっぱり彼女は単純に「自分に都合のいい他人を探している」だけなんだと納得できる反応だけど。
ただ。なんとなく下手したら本当に怒らせてしまいそうだから、彼女には言うのは躊躇した。
多分、ほんとうに何気なく思っている、そんな会話だったのだろうから。