人の嫉妬の感情が美しく映えて。
後悔しても遅いが「なぜ、あんなことを言ってしまったんだろう」と、今まで彼に浴びせてきた自分の言葉の数を思い返して、手遅れになってから後悔をしていた。
真っ直ぐに素直だった彼が、憎らしいくらいに素直すぎたから、自分は嘘を吐いていた。どこにそんな自信があったか、これから先でさえ、ずっと彼から愛されてしまえると勘違いしてた自分がいたはずで。今は、既に愛されなくなっていたことに気がついて、そんな自信も失った。
こんなにも孤独な気持ちを、全身で感じる夜でさえ。誰かと過ごしているだろう彼の姿を想像しただけで、何故か自分の中では嫉妬の感情が芽生え渦巻いて、気が狂いそうになる。いつの間にか、嫉妬をさせてた立場から、逆転したように。どこかで気持ちはズレていて、どこかですれ違っていた。
最後に、素直になれなかったのは自分の方なんだろう。きっと最初は、彼が同じ気持ちを味わっていただろう。
出会った頃の自分は"好き"だなんて感情は持ってなかったはずで。少しずつ、思いもよらない"好き"だという感情に飲みこまれて、それでも自分は最後まで素直にならなかった。それはきっと背徳感に負けていたからだ。ずっと愛されて、このまま惰性で愛される関係が続いて幸せになれる、と、思っていた馬鹿な自分に対して、下った天罰のような、この気持ち。
でも、そんな天罰を真っ向から受け止められるほど、彼のような純粋な気持ちが自分にはない。なんとなくこの気持ちを沸かせる彼に対して、悔しい気持ちが込み上がってしまう。未だ素直に「好きだった」なんて、軽々しく本音を誰にも言えないまま。愚かな自分は一人静かに、嫉妬の感情に寄り添われるだけ。
嫉妬をされている時に、それは確かな好意の状態だと確認する。でも逆に今は嫉妬するほど、彼に対する好意も確認した。
くだらない他人の嫉妬に、喜んでしまう感情。それに素直に従ってしまった自分は、彼の素直な気持ちのことを裏切っていて。彼は良い人だからこそ、自分のことを裏切られることはないと信頼を置きすぎて。何一つ与えもしない自分を受け止めてくれると、勝手に彼に期待していた節がある。
今さら後悔しても仕方がないが、後悔しか生まない言葉を選び続けたのは自分で。なんか、全部のツケが回ってきたかのように思えて。結局、どうなりたかったのか。自分は好きになりたかったのか、好きになりたくなかったのか、主観で見たらよく分からない。
もしかすれば勝ち負けのような価値観を恋愛に挟み込んで、相手を負かしている時に喜びでも感じていたのかも知れない。負けたんだろう、対等になることさえも、怖かったかも知れない。
誰かが自分に対して嫉妬してくれている姿を見ていたら安心できたのは、立ち位置を気にしていたからだろうか。だから今、嫉妬の感情が芽生えた自分の姿さえ、彼には1ミリも見られたくないと思ってしまう。弱みを見せられるほど、彼には今でも本音は言えないから。
別にバレたところで、彼のような人は自分とは違い、嫌がらせのような事も何もしてこないだろう。それは分かっていて、それでも、やはり素直な感情になろうなんて気が起きない。
何度も訪れてきたチャンスを、あえて何度も踏み躙ってきたのに、何を後悔しているのだろうか。
やっぱりあれほどの良い人は、自分とは釣り合わないのだと思って。
嫉妬しない彼に、嫉妬する。