レセプト債

アーツ証券株式会社に対する検査結果に基づく勧告について(平成28年1月)

1.勧告の内容
 証券取引等監視委員会がアーツ証券株式会社(東京都中央区、法人番号3010001084162、資本金5億円、第一種金融商品取引業、第二種金融商品取引業、投資助言・代理業)を検査した結果、下記のとおり、当該金融商品取引業者に係る問題が認められたので、本日、証券取引等監視委員会は、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項に基づき、行政処分を行うよう勧告した。

2.事実関係
(1) 株式会社オプティファクターに関連する債券について
 株式会社オプティファクター(以下「オプティ社」という。)は、債券発行を目的とするとして、平成16年3月にオプティ・メディックス・リミテッド(以下「OPM社」という。)を英領ヴァージン諸島に、同17年7月に株式会社メディカル・リレーションズ・リミテッド(以下「MRL社」という。)を東京に、同22年12月にメディカル・トレンド・リミテッド(以下「MTL社」といい、この3社を「発行会社3社」という。)を英領ヴァージン諸島に、それぞれ設立し、発行会社3社の運営を行っている。
 発行会社3社は、診療報酬債権等を買い取り、それを「裏付資産」とするとして、OPM社においては平成16年6月から「OPTI-MEDEX Note」との、MRL社においては同19年11月から「メディカル・リレーションズ発行私募社債」との、MTL社においては同23年2月から「Medical Trend Note」との各名称の社債(以下、発行会社3社が発行する社債をそれぞれ「OPM債」、「MRL債」及び「MTL債」といい、これらを総称して「本件3社債」という。)を発行し、資金を調達している。
 本件3社債の発行残高は、平成27年10月末現在、合計で約227億円(投資者数は約2470者)となっている。
 アーツ証券株式会社(以下「当社」という。)は、平成16年6月からOPM債、同23年2月からMTL債の販売を一般投資家等の顧客に対して行うとともに、発行会社3社からの委託により、竹松証券株式会社、田原証券株式会社及び六和証券株式会社に対し、OPM債及びMTL債の販売について、上光証券株式会社、共和証券株式会社及びおきなわ証券株式会社に対し、MRL債の販売について、それぞれ紹介・助言・支援等を行っている(以下、当社が上記支援等を行っている上記6社を「関連販売証券会社」という。)。
 これにより、当社は、発行会社3社から、当社による販売額に応じた販売手数料等を受領するとともに、関連販売証券会社による販売額に応じ、上記支援等に係る業務委託手数料を受領している。
 当社による販売残高は、平成27年10月末現在、OPM債が約38億円、MTL債が約29億円、合計で約67億円(投資者数は約490者)となっている。
 こうした中、オプティ社及び発行会社3社は、平成25年3月以降、その財務状況を確認したところ、「決算書に実態が不明又は実在性の確認できない資産や売上が多額に計上」され、「実在性のあることが確認できた資産の合計額」は「債券の発行残高に比べて明らかに僅少であることが判明」した等として、同27年11月6日、東京地方裁判所に破産手続開始の申立てを行い、MRL社については同日、オプティ社、OPM社及びMTL社については同月13日に、破産手続開始決定を受けた。
 証券取引等監視委員会において、本件3社債の実態を検証したところ、(a)発行会社3社のいずれにおいても、社債発行の初期より、買い取った診療報酬債権等の残高は社債発行残高に比して著しく僅少であったこと、(b)OPM社については平成17年12月期から、MRL社については同23年4月期から、MTL社については同24年3月期から、社債発行によって調達した資金が、診療報酬債権等の買取り以外に、オプティ社及びその関連会社(以下「関連会社」という。)の資金等に流用され(オプティ社及び関連会社を経由したものも含め、発行会社3社間の資金の移動も行われた。)、毀損されていったこと、(c)その結果、本件3社債の新規発行を行わなければ、既発行の本件3社債の償還及び利払いを継続的に行うことが困難な状況に至ったことが認められた。
 当社のA代表取締役(以下「A社長」という。)は、遅くとも平成25年10月頃までに、オプティ社のB代表取締役(以下「B社長」という。)から発行会社3社の財務状況に関する相談を受けるなどし、発行会社3社のいずれにおいても、買い取った診療報酬債権等の残高は社債発行残高に比して著しく僅少であること、社債発行によって調達した資金が、診療報酬債権等の買取り以外に、オプティ社及び関連会社の資金等に流用され、毀損されていること、「決算書に実態が不明又は実在性の確認できない資産」が「多額に計上」され、「実在性のあることが確認できた資産の合計額」は「債券の発行残高に比べて明らかに僅少」となっていること等を認識した。

(以下、上記リンク参照)