![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/166839226/rectangle_large_type_2_315c82dad81dc2b520c4590cd08537fb.png?width=1200)
損しない為の「原状回復費用」の解説
どうも、不動産関連の仕事をしている「住まいのコンパス」です。
前回の記事では、契約後にトラブルに合わない為の「【賃貸物件で契約前に確認しておくこと】トラブルに合わない為のチェックリスト」について解説しました。
その記事の中でも出てきた「原状回復費用」について、とても奥が深いので解説していきたいと思います。
実際、国民生活センターに寄せられる賃貸住宅の相談件数は非常に多く、特に退去時の原状回復費用に関するトラブルが4割も占めるそうです。
賃貸住宅に関する消費生活相談は毎年3万件以上寄せられていますが、そのうち、原状回復に関する相談件数は毎年1万3,000~4,000件程度となっており、賃貸住宅に関する相談のうち約4割を占めています。
また、原状回復に関する消費生活相談を月別にみると、12月から1月頃は相談が最も少なく、2月から4月にかけて相談が増え、5月以降には減少するという傾向がみられます。
実際、退去時になって「知らない費用を請求された」「こんな高額になるなんて知らなかった」などのトラブルを頻繁に聞きます。
しかし、契約前にどんなことに気をつければトラブルを防げるのかわからないという方も多いと思います。
そこで今回は不動産関連の仕事をしており、日々不動産に関する情報に触れている私が、失敗しない為の「原状回復費用」の解説をいたしま
この記事を読むことで、
・原状回復費用について理解できる
・退去時に高額な費用を請求されなくなる
・入居前、入居時にできる予防策
などを把握できると思いますので、ぜひ最後まで読んでいただけると幸いです。
それではさっそく原状回復費用について解説していきます。これから契約を結ぶ人は契約前に、既に入居している方は契約書を見て、これから解説するポイントを確認してください。
1. 原状回復費用とは何か?
「原状回復」とは、賃貸物件を退去する際に、入居時と同じ状態に戻すことを指します。「原状回復費用」とはそれらの修繕にかかる費用のことです。
〈具体的事例〉
床、壁のキズの修復、汚れた壁紙をはり替えたりすることが該当します。
よくトラブルになるのはタバコのヤニで壁紙が変色したり、加湿器などを使いカビが発生したなどがあります。
2.原状回復費用の負担区分について
〈概要〉
原状回復費用については非常にトラブルも多いため、国土交通省から「原状回復ガイドライン」が公表されています。このガイドラインは原状回復について、貸主、借主それぞれが負担するべき費用や考え方について細かく解説されています。ただし、あくまでガイドラインであり、法律ではないため、一定の条件のもとガイドラインと別の条件で契約を締結することも可能なことは忘れずに覚えてください。
そのため、契約前に契約内容を確認し、ガイドラインの内容とどこが違うかを確認することが大切です。まずは不動産会社の担当者に聞いてみるのが良いですが、最終的には自分でも理解することが大切です。この記事では原状回復費用について理解できるよう解説しますので、ご安心ください。
〈ガイドライン上の貸主、借主の負担区分を理解する〉
まずはじめにガイドライン上の貸主、借主の負担区分を理解することが大切です。そこを理解しないと契約書の内容がガイドラインに沿っているのか、沿っていないのかが、分からない為です。
それではさっそくガイドラインを見てみましょう。
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/torikumi/honbun2.pdf
「原状回復ガイドライン」のP17〜21を見ていただくと具体例が分かると思います。
ちなみにガイドラインの表のグレーで編みかけされている箇所(A (+B)とB)はガイドラインでも借主負担が考えられると示されている事例です。
例えば「カーペットに飲み物等をこぼしたことによるシミ、カビ」は借主負担が考えられると示されています。
一方で「家具の設置による床、カーペットのへこみ、設置跡」は貸主負担が考えられると示されています。
ポイントとして、費用の負担区分は「自然な劣化=貸主負担」・「故意・過失による損傷=借主負担」と覚えておくのがよいです。
3.費用の計算方法について
費用の負担区分(誰が負担するか)がある程度理解できた後は、費用の計算方法を理解する必要があります。
基本的には法人税法上の減価償却の考え方を適用するようガイドラインでも示されています。
具体的には、壁紙の耐用年数が6年の場合、6年以上使用した場合は修繕費の請求は基本的に発生しない、3年使用した場合は3年÷6年=50%は負担することになります。
「原状回復ガイドライン」のP22〜24の表の一番右側の「経過年数の考慮」という箇所を見ていただくと具体例が分かると思います。
ガイドラインの中で「経過年数を考慮しない」という箇所があります。これは万が一借主側の理由で損傷、汚損があった際に修繕費の負担を借主が全額することを意味します。
4.トラブルを避けるための対策(入居時)
ここまでお読み頂ければある程度、原状回復について理解が深まったと思います。
ここらからはそれらの知識を活かして、実際にトラブルを防ぐ方法について解説します。
・契約前に契約内容を確認する
原状回復に関する契約書の内容が、ガイドライン通りか(ガイドラインP17〜21)、特約で本来貸主負担の費用も借主負担にされているか確認してください。
契約書を見ても分からない場合は、不動産会社の担当者にガイドラインと異なる内容がないか確認してみましょう。
実際、どこまで交渉できるかはその物件の人気具合によりますが(他の人でも入居する人気の物件であれば交渉をしてこない他の人に貸せば良いと考える)、納得がいかない内容がある場合は、交渉してみるのも良いでしょう。
今は数も少なくなっていますが、エリアによっては、「敷引き、保証金」など返還されない敷金のような取り扱いをする物件もあります。そのような費用がないかも契約時に確認しましょう。原状回復費用とは少し異なりますが、覚えておくと良いでしょう。
・入居時に室内の写真を撮る、損傷箇所があればすぐに報告する
まずは、家具を搬入する前に室内の写真や動画を撮り記録として残しておきましょう。
あわせて、入居時点で既に傷、汚れ等がないかすぐに確認しましょう。不具合を見つけた場合はすぐに不動産会社に連絡をして、入居時点で既に存在した傷、汚れであることを伝えましょう。
後日、トラブルにならないよう、不具合箇所を記録書面で残して、貸主と自分の記名、押印、日付を記載するとより安心です。
書面の雛形は不動産会社に相談すればもらえると思いますが、万が一用意がない場合はガイドラインのP4,5の「入退去時の物件状況及び原状回復確認リスト」を活用すると良いでしょう。
5.トラブルを避けるための対策(退去時)
・自分で清掃を行う
退去前に壁や床、キッチン、浴室、トイレなどをできるだけ綺麗な状態にしておきましょう。汚れやカビを除去しておくことで、後日トラブルを防ぎやすくなります。
・退去時の室内確認に立ち会う
退去時には管理会社と一緒に室内の状態を確認する退去時立ち会いが行われます。忙しいからと管理会社に任せる人も多いですが、必ず一緒に立ち会いをして、不当な修繕費用を請求されないようにしましょう。
修繕費用が発生する箇所があればその場で確認して、書面など記録に残しましょう。
ガイドラインP4,5の「入退去時の物件状況及び原状回復確認リスト」を活用して、退去時の記録もしっかりと記録することで後日のトラブルを防ぐことに繋がります。
6.トラブルにあった場合の相談先
これまで読んだことを試してもトラブルにあってしまった場合は、下記相談先に頼るのも考えてください。
・消費生活センター(消費者庁)
https://www.kokusen.go.jp/map/index.html
→手軽に電話で相談できますので、まず最初の相談先として活用してみてください。
・裁判外紛争解決手続(ADR)
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201507/2.html
→民事上のトラブルについて、裁判によらず公正中立な第三者が当事者間に入り、話し合いを通じて解決を図る手続です(『政府広報オンライン」より)
・弁護士への相談
→それなりに費用もかかる為、最終的な相談先と考えるのが良いと思います。
7.まとめ
これまでの内容を簡単にまとめると下記の通りです。入居前にこれらの内容を確認することで、トラブルにあう確率を減らすことができますので、ぜひ試してみてください。
▶原状回復費用とは何か?
原状回復費用とは、賃貸物件の退去時に入居時の状態へ戻すために必要な修繕費用を指します。具体的には、壁や床のキズ修復、汚れた壁紙のはり替えなどが含まれます。トラブル例として、タバコのヤニによる壁紙の変色やカビの発生などが挙げられます。
▶費用負担の考え方
費用負担は、国土交通省の「原状回復ガイドライン」に基づき、「自然な劣化は貸主負担」「故意・過失による損傷は借主負担」が原則です。ただし、契約内容によって異なる場合があるため、契約前に確認が必要です。
▶トラブルを避けるための対策
・入居時: 室内の写真や動画を記録し、損傷箇所はすぐに不動産会社へ報告。
・退去時: 清掃を徹底し、立ち会いで修繕箇所を確認して記録を残す。
▶困った場合の相談先
消費生活センターやADR(裁判外紛争解決手続)を活用し、必要に応じて弁護士に相談することが有効です。