愛し愛される物語『3 Will Be Free』~MiwとShinの場合~
初めましての方も、引き続き読んでくださっている方も、ありがとうございます。
最近ようやく『SOTUS』『SOTUS S』を見て「やはりタイBLの金字塔は違うな」と感服した雑食ライター・アリタケです。
ティウデー最高かっ!!
というわけで、前回の最後にちろっと書きましたが、今回触れていくのは『3 Will Be Free』。Joss、Mild、Tayトリプル主演の逃避行ものです。
前情報ほとんどない状態で、勝手にBLだと思って見始めたんです。しかし、実際はそんな単純なものではなかった。
Neo、Miw、Shinというまったくタイプの違う3人が偶然居合わせ、さまざまな組織から逃げる日々を描いたロードムービーであり、ハードボイルドなマフィアものであり、ちょっぴりセクシーもありの大人なドラマ。ピストルばんばんぶっ放されるし、命の危機が迫りまくります。
そこに、Neo、Miw、Shinの三角関係も加わり、それぞれの親子・兄弟関係も絡み、ゲイもトランスジェンダーもパンセクシュアルも登場すると、とにかく情報がいっぱい。うかうかしてると置いていかれそうなくらい、展開もスピーディーです。
でも、このドラマの本質はドンパチでもなければ、さまざまなセクシュアリティの提示でもないと感じたんです。
『3 Will Be Free』は誰もが誰かを愛し、誰かに愛される物語。
その愛情は、恋愛もあれば友愛もあり、家族愛もある。さらにいえば、そのどれにも当てはまらずとも、確実にそこにある“愛情”を感じさせてくれるドラマなのです。
※ここからはドラマの内容にがんがん触れていくので、「これから見ようと思ってます!」という方はご注意ください。
『3 Will Be Free』の主な登場人物は、全員誰かしらを心から愛していて、誰かから愛されているんですよね。
冷徹な人間に見えたShinの父でさえ、最後には息子への愛情から引き金を引くことを躊躇し、命を落としてようやくShinからの愛情を受け取ることができたのです。
それぞれが、単純に「好き」「嫌い」では判断できない愛情を抱えているこのドラマの中でも、特に複雑に絡み合っているのがNeo、Miw、Shinの関係。
先ほど三角関係と書きましたが、いわゆる三角関係の構図とは違うんですよね。3人の中にあるのは、好いた腫れたの浮ついた感情ではなく、“一緒にいる”という形の愛情。
ただひたすらにロマンチックな5話で、NeoとShinの出会いが描かれます。
ポラ撮影シーンは、間違いなくタイドラマ史上に残る名シーン。
レールを敷かれた人生を歩んでいる自分とはまったく違う生き方をしているNeoに、Shinは想いを寄せるのです。たった一度しか会ったことがない相手との写真を、大事に財布に入れておくほど。
1話の時点で、Neoへの愛情は溢れています。
3話のラブホテルでのシーンでは、シャワーを浴びた半裸のNeoにドギマギ。隠しきれてないよ!!
愛しているが故に、Neoにウソをつかれていたことには激昂。
ここで重要なのは、Shinが怒っている理由。義母との不倫ではなく、Neoのウソが許せていないのです。それはきっとNeoにも信じてほしいし、特別な存在でいたいから。
Miwにこう言われてしまうのも納得です。
その後もNeoの特別でいたい気持ちが、「好き」が溢れてしまって、Shinとシンクロしてこちらまで苦しくなってしまうほど。
前半のShinはNeoしか見えていません。だから、Miwに嫉妬してしまった。
一方のMiwは、偶然居合わせてしまったばっかりに巻き込まれてしまったため、序盤は特にNeoに対して当たりが強い。
それはそうですよね。ほとんど知らない男2人と唐突に逃げることになって、情も何もないわけですから。
しかし、時間を共にする中で、Miwが本来持っていたのであろう面倒見のよさが垣間見えてきます。
最愛の母が父に殺されていたことを知ってしまったShinに対して、言葉をかけるのはNeoではなくMiwなんですよね。修羅場を経験してきたMiwだから、肝の据わった言葉に説得力がある。
とはいえ、愛情と呼べるほどNeoやShinに対して、心を開いているわけでもなさそうです。
ShinとMiwの愛情が形を変えていったのは、6話以降。
夜の海でのケンカを経て、3人は一夜をともにするわけですが、この後から3人の関係性は明らかに変わっていきます。
重要なのは体のつながりではなく、3人の意識が一致したこと。このMiwの言葉が、すべてを表しているのではないかと感じるのです。
この後、MiwはNeoやShinに対して抱く愛情に、素直になっていきます。
最初は2人の前では強がり、2人がいないところで本音を吐露していました。話が進むにつれてNeoに気持ちを伝え、Shinにも打ち明け、気持ちに正直になっていく過程がMiwの変化を感じさせます。
Neoに対する愛情とShinに対する愛情はきっと明確に違うけど、それが恋とか友情とかでは定義できないほど、Miwの中では大きなものになっていくんですね。
安全を保障されるであろうLuangとの生活を蹴ってまで、2人との生活を選ぶわけですから。
Shinにも変化が生まれてきます。
嫉妬の対象でしかなかったMiwを仲間だと認めていることが、言葉の中にちらりと見えるようになるんですよね。
そして、自分は自由を手放してまで、2人の自由を望むようになります。
いい男になったね、Shin(号泣)。
そして、MiwとShinの間にも、揺るぎ合い愛情が築かれていきます。Neoという1人の男を想う同士として、家族の愛情をうまく受け取ることのできなかった子どもたちとして。
8話のこのシーン。Neoがいなくなってから2人の間で生まれた感情が、繊細に描写されていて、すごく胸に来ました。
手を取る愛情を見せたShinと、手を離す愛情を見せたMiw。どちらも間違っていなくて、どちらもやさしい。
最初はお互いに無関心に近かった2人が、感情を吐露してぶつかり合い、Neoという人間を介してつながり合う。その過程がきちんと描かれていて、だから2人の別れのハグが胸に来る。
MiwとShinの関係こそ、言葉に表しにくいもので、もちろん恋愛ではないけど友愛とも違う気がするけど、お互いを想い合う固いつながりがある。その形は、ある意味もっともシンプルな愛情にも感じられます。
そして、MiwとShinのこの関係は、Neoが導いたものかもしれない。
序盤から2人の関係を気にしていたNeoの言葉が、それぞれの愛情の形につながっていったのかと思うと、Neoはどこまでもやさしくて罪な人です。
さて、次回はそんなNeoのやさしさと3人の愛情の形に振れたいと思います。
最後に1つだけ。
8話、兄が殺されたことを知り放心状態となってしまったNeoに、MiwとShinが声をかけるシーン。
Shinが自分の人生を嘆く部分、基本的にShinのソロカットで進みます。ただ、「いつも誰かの愛を求めてて」の部分だけ、NeoとMiwが映るのです。
原文と字幕のタイミングは考慮していませんが、3人が共有していた想いだったから、NeoとMiwの表情が映し出されたのだと思えて仕方がない。
だから、ともに命の危機を乗り越えることで、互いの愛情を感じ、3人だけにしかわからない愛情が形成されていったのだと思えるのです。
このシーンのラスト、MiwがNeoの肩をポンポン、NeoがShinの手をポンポンするところが可愛らしくて、互いに気遣う愛が感じられて好き。
終盤に近づくにつれて、3人の関係が愛おしくなり、ただただ笑っていてほしいと願ってやまなかったです。
では、続きはNeo編で。
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。