100円セールのお土産の行方

高校時代、電車通学をしていた。学校から駅までは歩いて20分ほどかかる。1人で歩くには長い距離、でも友達と喋りながらには短い距離。
2年生の途中で部活を辞めて帰宅部になった私は、帰宅部仲間と一緒に放課後を過ごし、駅までの短い道のりを帰った。駅前にはミスドがあった。教室で喋り尽くしたはずが、歩いていると不思議と話題は湧き出てくる。そんなときには「100円セールしてるし、ミスド寄る?」が合言葉だ。当時、定期的に100円セールをしていたミスド、「せっかくセールをしているし家族へのお土産を買って帰ってあげよう」という言葉を免罪符に、お持ち帰り用のドーナツ数個と店内飲食用のドーナツ1個を買って、また店内でお喋りの続きを始める。今思えばドーナツ1個でよくそんなに粘れたものだ。帰宅すると「ミスド寄ってたから電車1本遅れた」と言って家族に誇らしげに持ち帰りの箱を見せる。みんなで朝ごはんに食べようと言いながら、夕食の後のデザートに自分で食べてしまい、結局毎回お土産と言いながら自分用の買い物になっているのだが。
今は駅前のミスドは閉店し、ドラッグストアになってしまった。青春を刻んだ店がなくなってしまい、寂しい。それに100円セールもなくなった。これではお土産にと立ち寄る口実がなくなってしまうではないか。
いや逆に、セールがなくても自分の好きなときにいつでもお土産を買えるようになったということか。今はちゃんと自分用だけでなく夫用、子ども用にとドーナツを買うようになったのは成長の証か。駅前のミスドはなくなっても、ミスドを見ると、高校時代のなんでもない毎日を思い出す。ショッピングセンターで子どもの手をつなぎながら高校生の自分を思い出すなんて、なんと贅沢な経験だろう。

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