見出し画像

「ロケ地に行ってみた!映画いとみち」について

地方の電車運賃ってなんか高い気がするんだけど、どうやって価格を決めているのだろうか? と気になって調べたのだけれどやたらと複雑で理解することを諦めた。
需要と供給の市場原理で決まると推測出来るけど、たまに地方で乗る電車やバスの運賃や本数の少なさに、せっかちな僕は辟易としてしまう。
最寄りである板柳駅から 職場の青森駅まで五能線と奥羽本線を乗り継いで1時間強。通うには結構大変だ。しかも冬には雪も多い地域だから更に大変になることはイメージ出来る。

先日、有給が取れたので美味い飯を食いに行こうと札幌に行ってきました(札幌、福岡、那覇あたりは羽田空港からの便数が多くチケットも安いのでプチ旅行にオススメです)。
色々巡るにあたり、地図を眺めていて改めて気が付いたのが函館と青森って距離が近いなということ。そりゃ函館青森間には北海道新幹線で一駅だし、フェリーも通っているしね。
じゃあ札幌から函館に行って、そこから青森に行こうと思い付きで動いてみました。青森県内の行ってみたい場所が蓄積されていた上、2021年の僕的No. 1映画の『いとみち』の舞台も見てみたい。

勢いとは情熱だ。函館のラッキーピエロで行きたい場所をピックアップし(チャイニーズチキンバーガー美味い!)、ルートを決めスケジュールを珍しく固めた上で翌日青函トンネルを抜け青森に上陸したのであった。

なので今回行ってみた『いとみち』のロケ地を記録として載せてみようと思ったり。

板柳町

画像1
やたらと長いホームはなんでなの
画像2
ここの駐輪場をジロジロ見てるのは自転車泥棒か俺だけ
画像3
どこまでも林檎推し

弘前駅からローカル線を乗り継いで約30分。ご存知JR五能線板柳駅ですね。主人公の相馬いとさんの自宅の最寄駅です。ここから弘前にある高校に通ったり青森市のメイドカフェに出勤したりしますが、電車を一本乗り過ごしただけで遅刻が確定してしまうだけに、こういう地域に住む人達は毎朝大変だ。
駅舎の隣にはいとさんも自転車を停める駐輪場が。無料な上、屋根が付いているあたり良心的ですね。というか雪が積もることを考慮しての屋根なのかな。いや、雪が積もったらチャリ乗らないよな。

タクシーが「ストウタクシー」なのに気づいたが、「須藤」がスドウでは無くストウであったり、「安田」がヤスダでは無くヤスタという濁点を排除するのは津軽の特徴なのだろうか?
駅構内にはあの(!)あぷりんも。今でも亡き主人を改札で待ち続ける…

画像4
駅前の道
画像5
板柳町役場近辺
画像5
同じような給水塔(?)がこの辺りにいくつかある
画像7
平日昼間の農道を歩いているのは林檎泥棒か俺だけ
画像6
ここは何なんでしょう?皿屋?
画像9
家主のコレクションかな

板柳駅からいとさんの自宅へ向かいます。劇中では駅から自転車で帰宅するシーンに印象的な場所があります。商店街の特徴のある街灯だったり給水塔だったり、(なんだかよく分からない)皿御殿だったり。
いとみちを撮られた方々が凄いと思ったのは、何でもない田舎の街並みが作品中にはとてつもなく「映え」て見えること。もちろん時間をかけてリサーチを行なった上、時間をかけてどうやったら綺麗に映像に残せるかを現場で試行錯誤しているのだろうけど、プロはやっぱ凄い。

通学路には林檎畑が広がり甘い香りのする赤や黄色の美しい果実がもうすぐ収穫を迎えるようだ。
しかし10月とは思えないほど気温が高い。平日昼間の田舎道を汗をかきながら歩いている見知らぬ男を近隣の人はどう思っただろうか。

ちなみに作品内では自転車に乗って板柳駅から上記の箇所を通って自宅に帰る様子がありますが、現実ではとんでもなく遠回りです。こんなルートで駅まで行くようであれば僕なら学校に行かなくなる

画像7
これは何なのか誰か教えて
画像8
相馬家前の道
画像9
1625!
画像13
いとちゃーん!

林檎畑に囲まれた細い道を通って いとさんの家に着きました。岩木山が綺麗に見えますね。現在は空き家のようです。表札の柱も崩れていて、人が手を加えないと徐々に荒れていく現実が見て取れ寂しくなります。「いとみち」の興行収入が何十億円とあれば、ここもロケ地として保存出来たのかなと勝手な妄想を抱きました。

ご近所には同じような間取りの家が多く、家の奥は林檎畑になっているので、おそらく元はこの家も林檎農家の家だったと思われます。
映画も音楽も美術も良いものが必ずしもお金を生み出すわけではないとは分かっていますが、この建物は綺麗に残り続けてくれると嬉しいなあ。
もちろん敷地には入らず道から眺めていただけですが、作品内の出来事が目の前の家の中で起っていたと想像すると感慨深いものがあります。

ふと、軒先から津軽三味線を弾く音が聴こえてくるような気がした。なんて

画像10
この映画唯一の弱点はこのポスターデザイン
画像11
不法投棄されそうな茂みですね

いとさんが岩木川を歩くシーンがここですね。板柳駅から真っすぐ進んだ道の先にある幡龍橋の袂です。あのポスターのバックにもなっています。岩木山がやっぱり綺麗ですね。岩木山見れば大体のことは解決。空が広い。
いとさんのように川沿いを歩いてみましたが、夏でもない10月なのに蚊に刺されて地球の温暖化を肌で感じるのである。

青森市

画像16
伝説の木の下で告白すると…
画像17
青森駅から少し歩いただけで寂しくなります
画像18
夜店通りといってもエッチな店は存在しない

青森駅に来たのは約2年ぶりで、話には聞いていたがあのインプラントの看板だけがやたらと目立つ古い駅舎は壊されて、新しい駅舎が完成しつつあった。
新町通りや夜店通りはいとさんが津軽メイド珈琲まで迷いながら歩いた道ですね。パサージュ広場はメイド珈琲の復活を賭けてチラシ配りをした場所です。

原作のいとみちでは、地元の青森に活気を取り戻すための勉強がしたいと大学へ進学したいとさん。原作の発行が10年ほど前ですが、それから街は変わったのでしょうか。

浅虫温泉

画像12
象の鼻
画像20
2人が座った場所に僕も座る
画像13
湯の島って上陸できるの?

青森駅から青い森鉄道で20分。津軽メイド珈琲の人々が慰安旅行で訪れる浅虫温泉のサンセットビーチです。浅虫温泉駅から徒歩10分程で辿り着けます。海の水も綺麗なので夏には海水浴で賑わうのかな。
原作のいとみちでは、浅虫水族館に行ったり温泉に入ったりするのでそっちも行ってみたかったけど、帰りの電車の時間が迫るので海を見て黄昏てすぐに駅に戻る。
ここに何しにきたんだろう。

作品中に幸子といとが象の鼻の防波堤で語り合うシーンは、伏線が張られていて重要な場面ですね。

五所川原市

画像14
ELMのCMで見る駒井さんのリア充キャラに寂しさを覚える

五所川原にあるショッピングセンターELMにやってきました。エルムかエレムかわからなかったよ。遠い。
家出したいとを友人の早苗が迎えるシーンに使われています。ただのショッピングモールなのに感慨深い。

郊外の巨大ショッピングモールのELMは1997年に開業し、他の地方都市と同じようにかつて賑わいのあった駅前から客を奪った。まるき飛鳥、中三、丸友と五所川原駅近辺にあった3つのデパートはELMの開業に前後して閉店してしまったようだ。

今回、前から行ってみたかった五所川原駅近くの「立佞武多の館」にも立ち寄ったが、かつて商人の町と呼ばれた駅前の人の少なさは時代の流れといえど寂しいものである。

僕もそうだったが、世間一般では青森市の「ねぶた祭り」は知れど、その他青森各地で同系統の祭があることは知られていない。立佞武多もRINGOMUSUME経由で知った。あの4人には青森のことを色々と教えてもらっている
「立佞武多」は目の前で見ると凄い。まさに「ガンダム大地に立つ」。幼少時に何も知らずにこれが祭の日に街中を練り回るのを見たら座り小便必死だろう。こんな凄い文化があるだけに、なぜ街は寂れていくのだろという思いを抱いた。世の中単純じゃないね。

弘前市

画像23
土手町をぶらぶら歩くこと。略してドブ
画像15
シャッターを閉じてるお店が多い
画像16
1階があの中道だと帰ってきてから気付いた

弘前を廻るには時間が必要だ。色々と行ってみたいスポットが多くて全然時間が足りなかったので、また来ようと思う。その時はRINGOMUSUMEのライブも弘前であるといいなあ。

いい加減歩き疲れたがまだ歩きます。土手町にある津軽メイド珈琲のセットが組まれた小川ビル(表札もないけど多分ここ)。色々と検索してこの場所だと確証を得た。土手町もシャッターが閉まったままのお店が多いですね。
原作では津軽メイド珈琲の2号店を土手町にオープンさせる流れだったので、実質この場所が「津軽メイド珈琲弘前店』である。そこで働く早苗とハツエは元気にメイドをやっているのだろうか。
段々と現実と創作がゴッチャになってきた。

明治屋グランドビルは智美といとが休憩するシーンで使われた階段がある場所ですが、上の階はオフィスらしくそこまで辿り着けませんでした。
こういうスナックビルには、スナック好きな人達に昔よく連れて行かれましたが、こんなところに大金払ってなにが楽しいのか理解出来なかったな。今でもよく分からん。風俗とか夜の店が楽しいと思える人にならなくて良かったよ、俺。

画像17
シャレ乙な建物
画像18
人の家の壁を写真にとる男

土手町から少し歩いて弘前れんが倉庫美術館にやってきました。いとの通う学校の課外授業でやってきた場所です。中に入ろうかと思ったが入場料1,300円に気が引けて外観見学のみ。しかし弘前市内は綺麗な場所が多いね。

そしてれんが倉庫から南に少し歩くと、人見知りのいとが早苗に勇気を出して話しかけるレンガ塀の通りに辿り着きます。このレンガ塀って昔からあるものなのかな。なんかの工場の名残だろうか。しかし電車に間に合わないからってここから弘前駅まで走るのは無理があるぞ。

2人片耳づつのイヤホンで音楽を聴くって青春じゃん。学生時代を思い出すよ。と思ったがそんなことは一度もしたことは無い。記憶を捏造し始めたらもう終いだ。

ここで「エデンの少女」を聴こうと思っていたがすっかり忘れてたわ…

画像19
いとちゃーん
画像20
くつ!
画像21
智美さんのイラストかな
画像22
小道具にも手を抜かない
画像23
意外にリーズナブル
画像24
こんなメイド喫茶に行ってみたい

弘前公園近くの弘前市立観光館にやってきた。9月下旬まで「映画いとみち展」を開催するはずだったが、片付けるのが面倒なのか、まだ見ることが出来ました。
いや、画面に映らない小道具まできちんと作られていて凄いです。

いとっちの靴のサイズは24センチ。メイド珈琲のメニューは良心的価格なことも知る。でもこんな美男美女だけしか居ないメイドカフェなど現実には存在しない…

倉本聰だったかが、ドラマ『北の国から』を撮影するにあたり「大きな嘘はいいけど、小さな嘘はつくな」というこだわりがあったそう。
映画いとみちは「魂は細部に宿る」を体現していると感じたのであった。

画像25
映画に弘前はあまり出てこないのはここだけの秘密だ

弘前駅に降り立つと今もいとみちのデカいポスターが。


「いとみち」は映画館で3回観たんだよね。同じ映画を複数回自主的に見に行くなんて人生初めてのことだし、その後原作の小説も全て読んだ。勢いではるか遠くのロケ地巡りまでしてしまうんだから人を動かすキッカケっていつ出会うか分からない。

青森県は素晴らしい歴史と文化を持っている都市だと思う。多々旅行している県外民が言うのだから間違いない。
誰かが言っていたけど青森県は素晴らしいものを持っているのに外に対するアピールが下手だと。派手さはないけど訪れた人はその素晴らしさ知っている。おぉ映画「いとみち」と一緒ではないか。

今度はもっと余裕を持って青森に行こう。
今回はロケ地巡りも含め、縄文遺跡巡りをしたり、行ってみたかった飯屋に行ったりと詰め込みすぎた。緻密に予定なんて立てるもんじゃないな。

いいなと思ったら応援しよう!