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「日本の隅っこにあったもの(西表島船浮)」について

ホテルに帰ってきて鏡を見たらオデコと鼻の頭が赤くなっていて、その時初めて日焼けしている自分に気付いた。
真冬の2月でも南の太陽を侮ってはいけない。

前の週の金曜日はウチの町でも珍しく雪が積もるくらい寒かったので、その後の数日間で気温差20℃以上の場所を行き来してきたのだ。熱帯魚なら浮いている。

かなり前から2月中の有給を申請していて、どこか遠くに行こうと考えていた。まぁ相変わらず無計画なので行く場所も直前まで決まらず、「もう色々考えるのも面倒だし家でグダグダするしかないか」との思いが頭をよぎった。
が、色々検索するうちに石垣島へのツアーが少し安くなっているのを発見し、すぐに申し込んだのだ。全国旅行支援もあったし。
石垣島には10数回訪れているし、ここ数年で航空券も石垣島のホテルもあからさまに値段が上がっているので しばらく行くことは無いかと思っていたけど、とりあえず旅行先に迷ったら石垣島だ


とりあえず石垣島へ

東京から約1,900km。八重山諸島

石垣島までは羽田空港から飛行機で約2時間半。だが今回はお金をケチったので那覇経由の乗り継ぎで石垣島まで行く。
10数年前まで 今とは違い石垣空港は市街地にあり、全長1,500メートルの短い滑走路のせいで、羽田空港からの直行便はほとんど存在せず(デカい飛行機は離着陸できないため)、那覇空港経由で島までたどり着いていた。
ボーディングブリッジの無かった小ぢんまりとした旧石垣空港に 初めてタラップで降り立った時の「南の島に来た!」感は今でも覚えている。
そんな旅行先でワクワクする感覚はいつの間にか無くなってきたなあ。

今は無き 旧石垣空港(これは2011年)

とりあえず何をするか

辿り着いた石垣島の到着日は予想外の寒さで、夜はダウンジャケットを羽織って三崎町を歩く羽目に。地元の人も「今日は異常な寒さだよ」と話していた。この寒さの中 すれ違うTシャツ一枚で歩いている人は、現実を受け入れられない観光客なんだろうな。多分。

石垣島に来たら 毎回寄るアクセサリーショップと居酒屋があるのでそこに顔を出しに行く。約2年半ぶりに訪れたけど、変わらず元気そうでよかったよ。コロナのせいで営業は大変だったらしいけどね。
夜中に居酒屋でよく知らない銘柄の泡盛を飲みつつ、翌日以降の予定を思案していて思いついた一つが、西表島の端っこにまだ行けていないのでそこに行ってみようということ。
西表島に美しい秘境があることを思い出したのだ。

とりあえず西表島へ

2021年7月にユネスコ世界自然遺産に登録された西表島。島の9割ほどがジャングルに覆われ、主要道も南部の南風見田から北西部の白浜集落まで、海岸線を沿うように引かれた一本道だけである。その主要道は島を一周しているわけではない。
沖縄県の中では本島の次に大きな島だが、その亜熱帯の険しい地形の西表島のほとんどは人の手付かずで独自の生態系が今も存在する。
言い換えれば島内の交通の便は悪いし(路線バスは1日4本のみで流しのタクシーもない)、島のフェリーターミナルである上原港行きの便は外洋を通るため欠航することがほとんどだ。なので西表島観光を石垣島から日帰りでしようと思うとスケジュールが結構タイトになる。

西表島はデカいのだ
イリオモテヤマネコがが描かれた注意標識。山猫は眠らない

日本の片隅『船浮』へ

僕が西表島を何度か訪れているのにも関わらず、西端にある集落『船浮』に行くのを断念していたのはその交通の便の悪さにあった。
石垣島から大原港までフェリーで40分。大原港から路線バスで終点の白浜港まで1時間半。その白浜港からさらにフェリーに10分揺られて目的地の船浮に到着する。と書くと簡単だが、なんせ石垣島港⇄大原港、大原港⇄白浜港、白浜港⇄船浮港とそれぞれの接続が悪い(時間が合わない)。
下手すれば(というか確実に)何時間も何もない場所で過ごさなければならないのだ。レンタカーを借りたとしても結構大変です。
なんで船浮に限らず有意義に西表島観光をするのであれば、島内に宿泊するのがおすすめです。と今更ながら実感している。

桟橋もフェリーもとても綺麗


西表島西部にある『船浮集落』はいわゆる三次離島で、集落への陸路は無く、住民のほとんどが個人で小型船を所有しているという。住民らしき婆ちゃんが海上をボートでかっ飛ばしている姿はファンキーだ。

西表島周辺にはかつて炭鉱が存在し、島西部には船浮と同じような小規模な集落が何ヶ所かあったようだが昭和初期には全て廃村となってしまったようだ。

今回は大原からレンタカーで白浜港まで走り、そこから船浮に向かうことにした。
2月の平日にこんなところまで来る物好きは居ないだろうとの予想をよそに、10名ほどの観光客を乗せてフェリーは船浮湾を滑っていく。外人さんも何名か居る。どこでここの存在を知ったの?って思った。世界は広いようで狭い。

秘境船浮
カワイイ

波穏やかな船浮湾を経由して船浮に到着。船浮集落は住民50人程の小さな集落で まさに陸の孤島だが、立派な小中学校があったり インフラ整備の工事が行われていたりで、決して見捨てられた孤島では無い。民宿や飲食店も何店舗かあるので ここに泊まって、夜に星を眺めるのもロマンティックが止まらなそうだ。

静かな空気が流れる道を進む。海も空もマジ青い。
そして今日は暑い。Tシャツ一枚でちょうど良い。ジーパン履いていることを後悔する。2月なのにここだけ初夏だ。
集落の探索は後回しにして、まずは集落の反対側にある『イダの浜』に向かおう。

この道を行けばどうなるものか。 危ぶむなかれ、危ぶめば道はなし
森を抜けると

集落から外れた木々に囲まれた一本道を10分程 進むと見えてくるはずだ。

イダの浜。写真には写らない美しさがあるから
ゼリーにして食いたい色

木々の切れ間から青が見えた。
冷静沈着な僕でも見えた瞬間ちょっと声が出てしまったくらい美しい空間がそこにあった。

宮古島の与那覇前浜や波照間島のニシ浜と、沖縄の綺麗な海をたくさん見てきたけど ここに来るまでの困難さを含め インパクトはここがナンバーワンだ。湾内だからか漂流ゴミもほとんど見られない。足元をヤドカリが忙しなく歩く。

砂浜は珊瑚の白いカケラが埋め尽くす

ただイダの浜に来たからといって何かをするわけではない。木陰に座って 移り変わる海のコントラストと白い雲をぼんやり眺めていた。俺 手ぶらで来てるしさ。
寄せては返す波の音は控えめだ。

一緒の船で来た外人さん達は海パンに着替えてで海を泳いでいる。バタフライが激しい。「ここにはシャワーも水場も無いのに帰りどうすんのよ?ベタベタするよ」とか こんな所でも思ってしまう自分の小ささが少し嫌になる。

小1時間ほどウトウトしてただろうか。
そう、こんな所には1人で来ない方がいい。この海辺の美しさの感動をその場で共感できる人が居たらどんなに素晴らしいだろう。素晴らしいだろう。と思い始めたので帰路に着く。

実際にはこれ以前に別の場所で捕獲されてるらしいけど、そんなことを言うのは野暮ってもんだ
東郷平八郎も来たってさ
ここで幼少期を過ごしたら逞しくなりそうだ
海を眺めながら食べるソーキそば。たんげ、めぇ

集落に戻ってきて辺りを散策する。散策といっても小さな集落なので一周するのはあっという間だ。静かな場所。
船浮に人が定住し始めたのは1700年頃からで、それから300年以上 日本の片隅の小さな集落の文化と歴史を繋いできた住民の方々には敬服します。
ここにリゾートホテルを建てる計画が数年前にあったらしいけど、色々あってそれは白紙になったようだ。そりゃそうだわ。

なかなか気軽に訪れることが出来る場所ではないけど、石垣島に赴く機会があれば船浮に行ってみるのをお勧めします。1日がかりになるけどね。

「美しいものが、嫌いな人がいるのかしら?」ララァ

結論

日本の隅っこには とてもとてもキラキラした青がありました。

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