日帰り太郎EX12 安房小湊 石の水族館の巻
遠くにいきたいけれど、あちこちに行き過ぎて、「ほぼ未踏の場所」が近所になくなってきた。しかし、外に出て歩かないで仕事場とインターネットばかりというものも気が塞ぐ。(個人サイト文化がない2020年代現在、オンラインですら同じ場所を往復しては「新しい風景や切り口がない…」となりやすくなった。インターネットが普及するにつれて狭くなったように感じるのもふしぎなものだ)
旅は、物理的にルーティンを遮断し、知らない環境に対応しつつ驚いてる時間が一番楽しい。日帰りで道に迷いたいときは…千葉なら、近いからいいんじゃないかな。おお、愛しのわがちばよ。
というわけで、今日は外房内房をこの「休日おでかけパス」で回ります。まずは上総一ノ宮駅でゆるりと下車し…ってあれ?精算?よく見たらこの辺フリーエリア圏外なの?いきなり終わったわ。完全な無駄遣い、お前はいつもそうだ。つくづく、深夜特急じゃなくて阿房列車だね。
節約のため、フリーきっぷ圏内を回ってじっくり掘っていくか?しかし今日は既に外房の気分なのだ。いつもは特急で強引に帰るために夜通過することになりがちな外房を味わいたい。どうする。駅前を見渡す。ムム…
とりあえず、メシを食べながら決めよう。下りのつぎの電車まで30分以上あるから、店を出たときに下りの電車がもう出ちゃってたら帰ろう。
ンム…
特に役に立たないtipsが嬉しい看板。
ワァ…
イェイイェイイェイイェイ海ウォウウォウウォウウォウウォウウォウイェイイェーイ!!!!
ようやく海が見えてきた。のんびりと車窓を眺めて…いない。ひたすらスマホで検索をしている。スマホが充電できる場所を…そう、スマホ本体も充電池もチャージするのを忘れていたのだ。この路線にグリーン車があったら、コンセントのあてもあったのだが…2両編成のローカル線に、そんなものがあろうはずもなく。(最近になって総武線のグリーン車はコンセント標準装備が増えました。福祉)
本質的な部分では日帰り旅にスマホはそもそも必要ないのだが、自分の場合は「noteやtwitterになにか書くための素材を撮りにいっている」側面もあるので、やっぱりある程度バッテリーはあったほうがいい。
アプリで調べたところ、コンビニの貸し充電器もほとんどレンタル中の空になっている物が多いようだ。どこでも返却可能のシステム上、おそらく都心寄りの部分に移動してしまっているのだろう。
貸しバッテリーの在庫があって、あまり降りたことがない駅を目指そう。
方針が定まってきた。
何をしたいか分からなくて動けずに煮詰まっているときは、こうやって強引に状況のなかに分け入けば「できること」と「したいこと」のラグランジュポイントが定まって、集中が高まり迷いが減るのだ。
というわけで、今わたしは、安房小湊駅にいる。
うむ。うむよし…ついでに宿の相場感も見ておこう。こふん部で千葉に何人かで泊まりにいくやつを先日やったらけっこう楽しかったので、なんとなくこういったものもチェックしているのだ。
Gダライアス的なやつがいた。
あれだ!あのコンビニだ!ちくしょう、充電器は本当にあるんだろうな…?
あったよ!充電器!
CHARGESPOTは一度試してみたかったのよね。
そこそこ料金は割高ではあるんだけど、充電器を買っちゃうともっと高くつくし、リチウム電池は処分をするのも若干面倒が伴うのでできれば手持ちを増やしたくない。可搬性が高いのもいい。
使いかたを覚えたので、都市圏では予備バッテリーは今後複数持って歩く必要はなくなるだろう。万一のそなえがあるのはいい。
これでもう、問題はない。さっそく…記念撮影だ!
すこし視点を引くとロケーションのマヌケさが露呈する。
流木だーっ!
海だーっ!
(注:今回ムイムイ人形の出番はありません。マグネットがパーツに使用されているので、砂浜で取り出すと掃除が地獄になるからです。鋼鉄ジーグの悲劇…)
海はいいなあ。
どぶ板一つにも旅情を感じる。この海浜っぽさのある植生…このトゲトゲ感のあるロゼッタ、葉っぱの感じからしてハマボウフウかしら?たまーに八百屋に野菜として入ってくるやつ。
急に冷静になった。どうしようこのあと。
館山方向に内房線までぐるり一周してもいいんだけど、記憶では館山の外房線・内房線の接続はあまりよくなく、乗り通そうとすると1~2時間の待ち時間が館山で発生したことがある。
観光案内所があったので、無料配布にしてはみょうに立派だがどこかあやしいオーラただようガイドブックを一冊もらってきた。
…印刷インクが劣化してて、本同士や折込地図が癒着しかかってる。
いつからあるんだこれ。
内容は…これ、個人宅?村で一番でかい木とか、小学生が作る壁新聞みたいな視点からの素晴らしく地味な情報が掲載されている。いままで見たなかで一番ローカルな観光ガイドかも。
歩きに来たんだから、歩こう。
帰りのことも考えて、4km先の安房天津駅を目的地とします。
俺は今日はおうちで埼玉政財界人チャリティ歌謡祭を見たいんだ。
晩飯までには帰るぞ。
水鳥がたくさん。
一番多いのは…
あれ?鴨かもしれん。
ほとんど海水だと思うんだけど、こういうところで餌とって塩を体外に出せるのかしら。鴨のことをなにも知らない。
誕生寺や鯛の浦遊覧船のあたりですな。こっちは歩いた事あるので、逆方向を目指していきます。実入トンネル水族館…?
これのことかな?たまたま通行止め2日前にここを訪れたようです。
ここも塞がってたら、いよいよ行き当たりばったりの日になるとこだった。
たぶんこの経路上なので、どんどん進んでいきましょう。
知らない日本一がどんどんでてくる。
トンネルマニアが愛する地、千葉県。車しか通れないトンネルもたくさんあるけれど、幸いここは立派な人道があるようです。そして入り口に輝く「すいぞくかん」の文字…
ここが「とんねるすいぞくかん」ね。侘びているわ。
壁の入り口に説明書きがあった。
トンネルは適度に傷んでおり、古いフレスコ画めいた味わいがある。
トンネルの設備や補修のためのチョーク描きのメモたちが、より良い雰囲気をかもしだしているよ。
おもったよりも見応えがあるな。ところどころ、ふしぎ感が漂っている。
終わってしまった・・・もっと見ていたかった。
全体ではさらに見応えがあるし、このトンネルを時間をかけて歩いていくときの感じが写真では全く伝わらない。きみも現地にいってみよう。いいぞ。
思ったより帰りが時間かかるかも。ルート検索したら次の特急に乗るため戻るよう指示されたけど、たぶん進んでも同じ特急に乗れるんじゃないかと思うからどうにかなるだろう(結論からいうとどうにかなりませんでした)
この看板出してるお土産店兼定食屋が、丸々としたトロアジやらトロサバやらのいい干物が多かったし、定食もいいのをそろえていてかなりよかった。冬しか出していないというウツボの大干物もあり、とてもよかったので機会があったらまた買い物したい感じだ。車で来るのがベストかもしれないな。
道端のおじぞうさま。
波が穏やかで美しい。写真を取るとすべてが絵画になってしまう。
来てよかったな。
移動していると、帰ることを考えないといけないのがいつも少し悲しい。
でも、移動しつづけてそれが日常になっちゃうと、こんどはとたんに部屋にこもるのが魅力になっちゃうんだろうな。変化を求めることは状況に恵まれていないと味わうことも求めることもできないぜいたくな趣味だとつくづく感じる。ほっておくと沈みがちになる心が、美しい風景となにか珍なるものとの出会いで賦活されて…
だいぶ珍。
え?なにこれ?
鉄道模型店?レストラン?個人の家?北斗星…むむ 店っぽい…?
検索した感じ、軽食もできそうなので入ってみる。
ウワーッ!!鉄道マニアの店だ!!!
ちょうど駅員さんの服装のマスターが椅子の修理をされていた。
これ、0系とか過去の新幹線の本物の椅子なんだ。メンテが大変らしい。
後ろのNゲージ展示が四国のニセ新幹線を思い出す…
メンテナンスのかいあって、新幹線イスのリクライニングがいまでもちゃんと動いてる。この座席横の灰皿だいぶ懐かしい。新幹線の座席で普通にみんなタバコを吸っていた時代、いまからは想像できない世界。
そういえば、北斗星の寝台を使ったドミトリーホステルも泊まったっけね。北斗星現役のときには一度も乗れなかったけれど、運行終了してから微妙に縁がある。
いろんな雑貨がどんどんでてくる。
鳥取の田舎にいくのに時々寝台列車に乗ってたから、寝台車は特別な郷愁をそそられる所がある。子供だけで移動したこともあったような気もする。
二階建ての寝台でたまたま向かいになったおばちゃんのお話を聞かせてもらったことがある。寝台列車の旅は好きだ。
もうちょっとサンライズ出雲やサンライズ瀬戸のきっぷが取りやすかったら、もっと乗りたいんだけどな。
「計画運休」とか細かいお遊びも効いている。
駅員さんのマスターと優しい奥さまに用意していただいたたこ焼きを食べながら新幹線の座席(ちゃんとリクライニングする!入店時は椅子のメンテナンスをされておられた…まめだ)に深々腰掛けて観光パンフレットの地図を読んでいる。現実感がない。狸に化かされているのか?
マスターに「18きっぷでの旅行がこの冬できなかったから、千葉県内でも回って見ようと思ったら面白いお店を見かけまして…」と話しかけてみた。やはりここはマニアさん御用達のお店らしくこの季節は18きっぶ、もう少しするとサンキューちばフリーパスなる切符でここを訪れる人が多いらしい。
偶然から今年不足していた鉄道の旅情を満喫した。
あと、なんかここのタコ焼きがうまい。焼き加減がすごくちょうどいい。
食事メニューもけっこうよさそうなの揃ってたし、ここでご飯にするのも楽しそうだったな。
1月という季節のせいか、なんだか日が落ちてきた気がする。
帰りの時間が気になるし、気温も下がってきた。
コーヒーが効いてきた。いかん…
尿意が…
荒れ地に転々と枯れ草が。よくみると穂が…あれ?これ、とうもろこしか。
意外とこのまま置いておいても動物に食べられないものなんだな。
黒いビニールにつつまれた標識。
横断歩道が消えたような跡があるから、用済みになった標識なのか。
道の痛み具合からするとだいぶ経っていそうだが、それにしてはビニールが真新しい。道路の修理と同時に白線を引き直すので、標識の準備だけ先んじたのかもしれないな。
お土産物屋に寄った時お手洗いを借りておけばよかった。
この景色に集中できない…
フレッシュたばこや。
厚い雲と夕焼けで独特の色彩世界が展開されている。
先を急ごうかと思ったが、妙に車がたくさん泊まってる港があったのでもしかしたら公衆トイレがないかと斜面を降りて港に降り立ってみた。
美しい景色…そして釣り人達。賑わっている。
しかし、お手洗いがないぞ。この人達、どうしてるんだろう…
あっ!しまった!みんな車があるからコンビニまでさっと出れるのか!
ヒィー 死む…もう旅どころじゃない!
お、変わった街灯。
撮っとる場合かァーッ!
お、この家々の隙間から夕暮れの港が見渡せる景色…
撮っとる場合かァーッ!!
山を背後に控えた小学校。絵になるなあ。
道を間違えたりもしたけれど、もうすぐ駅です。
このめちゃくちゃ低い屋根の建物なんなんだろう?
モニュメントめいたベンチが駅前に。マリンスポーツを楽しむ魚人間と…
ただじっと体育座りしている魚人間。く、暗い
駅についた。最終確認項目、お手洗いは駅の中か外か…
この構造は…中だな!
間に合った。人類の、勝利…。
港に降りようとして段差から飛び降りたときちょっとだけ衝撃で漏れかけたが、心が漏れてなければ大丈夫なんだ。心が強いんだ
…埼玉政財界人チャリティ歌謡祭、30分くらい見逃しそうだな。
なんか全体にメシうまそうだし、大きい神社もあったり、また機会があったら来てもいいなあ。なんならこのあたりに泊まってもいいかもしれない。民宿、まだ一度も泊まったことないしな。
こちらはプロの案内図です。
…このあと、借りたバッテリーを返せる場所を探したり、suikaとフリーきっぷの差額分の清算処理をしなければいけないのを忘れてたため、さらに家につくのは遅くなってしまったのだった。理論値乗り継ぎ、所詮理論値か…
さあ、鴨川エナジーでも飲みながら、馬車道のシェフが料理のボードを持ってゆらゆら上下にゆれているところでも見ようか。(おわり)