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どぶさん #2 半額ハンター!の巻

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■■■前回のどぶさん■■■

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1
(…今日の売上、しめて12000ドングリ…)
「うん、まあまあ…かな」人気のない店内に、大ねずみのため息一つ。
焼きそば屋さんの仕事は、営業時間が過ぎても終わりません。
キュイイイ…ガロガロガロ…
電動シャッターの閉じる音が夕暮れムイムイ村に響きます。
(晩ごはん……どうするかな)

2
明日を思うと軽食を食べに街に出る気も起こりません。
バスをぼんやり見送るどぶさん。
「わざわざ食べに、出るのもなぁ…」
ミミズマートの明かりがムイムイ村を照らしています。
エブリデイ、地底プライス。
3のつく日はミミズデー。
(適当に、ミミズマートで安い惣菜でも買って…)
どぶさんが店内に入るやいなや、とんでもない大音量のあいさつが響き渡りました。「イラッシャイマセェ!!


「オハヨーどぶさん!おつかれ~」
「やあ 今日も心臓に悪いね」
挨拶の主は、ミミズマートのパートさん。犬のどうぶつ人間、シバでした。
どうやら「縄張りに入ったものには吠えて驚かさなくちゃいけない」という犬のたましいに従っているだけで、別に機嫌が悪いわけではないみたい。
「今日は売れのこりほとんどないよ!ワゴンにまとめてある~」
この時間にどぶさんが来るのは、いつものことなのでしょう。
「出遅れたか…おや?」


♪おいしくたべて ゆめをみる
『ユメノシマ製めん 3食やきそば』3割引!
「これ・・・カヤさんとこの麺か」
どぶさんの心のなかに、カヤさんとハツカさんが営む製麺所の光景が浮かびました。夢の島製麺所は、どぶさんがいつもお世話になっている焼きそばの仕入先です。
「めずらしーよね。いつもはソッコー売り切れんのに。狙い目だよ」
「いいめんなのに廃棄はもったいないよ…これを貰おう」
どぶさんが買い物かごに焼きそばの麺を放り込んでいきます。
「見切り品のやきそば、店で売っちゃうの?」
「これはうち用!店にはマメに打ちたての麺を入れてもらってるよ」
シバの冗談に憤慨するどぶさん。
「テキトーに理由つけてカヤさんの顔見たいだけじゃないの」
「!?」
どぶさんはチュー…といいながら赤くなり丸くなってしまいました。
「あの…なんか ちゃかしてすみません ホント」
どうやらシバは、どぶさんが秘密にしている事に触れてしまったようです。
どぶさん以外の全員が知ってる事を、秘密と呼ぶのかは分かりませんけど。
「とにかくこれ…おかんじょう…」
この話を終わりにしたいどぶさんをシバはさえぎります。
「あ、数秒待たない? 3,2,1…」


「半額タイム開始!秘技 円月シール貼り!」
流れるような値引きシール張替え。シバの店員奥義が炸裂しました。
「わざわざ高い値段で買うことないでしょ いい事したなぁ」
「また店長にしかられるぞ」シバ、やりたい放題。
・・・
「しかし…ひとりで食うには多いな…」
どぶさんの手には、思ったより大量の半額焼きそば。
しかし、どぶさんには何か考えがあるようです。
「よりみちして帰るか」
暗い夜道を歩くどぶさんの視界に、なにか動くものが映りました。
「あれは…タコだ フラダンスの練習をしているな」


「タコ坊ン もう周りまっ暗だぞ」
「ア どぶさん」
「だいぶさまになってきたな」
「マジか~どっかで発表会したいなー」
どぶさんはタコ坊ンとイカぼうやを背負い、夜道を進みます。
「いけー どぶロボ!!」(重い!!)
三人が向かった先は…一件の古い家。
『ともだちハウス マヨヒガ』
どうやら、ムイムイやモイモイ、メイメイ達が育った家は
いまは「どうぶつ友の会」の施設として使われているようです。
「ブリバリブー!」ブザを鳴らしたどぶさん。
「どうも、どぶ川です」
「アレ?どぶさん?」
おジイやおバアもとうの昔に亡くなり、無人となった旧ムイムイハウスを切り盛りしていたのは、屋敷つきの座敷わらし「ハコベ」でした。


イカぼうやの頭を撫でながら、ハコベはどぶさんにお礼を言いました。
「わざわざ送ってきてくれたの?当番の日でもないのにすまないねえ」
「いや…やきそばが安かったから…皆、ご飯まだなら」
「助カル!今日は遊ぶのでいそがしくて、まだ何もやってない」
マヨヒガは、晩ごはんを食べに来たり、親がいなくてここに住んでいるどうぶつ人間達が集まる場所のようです。きっとどぶさんは、時々このマヨヒガを手伝いに来ているのでしょう。なにしろ、世話役になってしまったハコベも、お姉さん役とはいえ、こども妖怪なのですから。
「座敷わらしはそれでいい」
どぶさんは、食事の支度をしながら答えます。
「ムイムイ君とモイモイ君はいないんだ。
せっかく今日はニセムイムイ君も来てくれてるのに…」
どぶさんの視線の先では、金属とフニャフニャの中間材質で出来た、強いて言えばムイムイ族と言えなくもない妙なロボット…ムイボット2600があばれていました。
「ムイムイ・コロス!ムイムイ・コロス!」
剣呑なロボットもいたものです。
「ムイムイ達?あいつらめっちゃ後散らかすもん。
ロボもマネするし、忙しい日は来ないほうがいいよ」
ネコマタの言葉に、なんだか自分も叱られてる気がしてしゅんとするニセムイムイです。
「そういうものか…」
納得したような、そうでもないような、何も考えていなさそうな顔でどぶさんはキャベツを刻んでいきました。
トントン・スットン・スットントン…
キャベ、キャベ、キャベ、キャベ…

※スタンプ帳に「ともだちスタンプ」を集めることで
どうぶつ人間は自分の使いたい魔法を覚えることができるのだ。

8
「うーん カッケエなあ」
「そうか?」
ソースの焦げる香ばしい匂いが、マヨヒガにたちこめます。
「ムイ兄みたいにスタンプ帳もらったら、
やきそば作りの魔法を作ろうかな…」
「タコ坊ン、やりたいこと一杯あんだろ。
 やきそば作りは俺が教えてやるよ。
コツはあるがむずかしい料理じゃない。
きっとうまくいく。」
ついつい、お兄さんぶってしまうどぶさんです。
きっと、照れくさかったのでしょう。
「それじゃあ代わりにフラダンス教えたげる」
「えっ フラ…」

「「「ごちそうさまでした!」」」


座敷わらしのハコベがどぶさんのやきそばをタッパに詰めています。
「残りは明日のごはん?」
「んにゃ、弁当。誰か知らないけどにぎやかなの苦手な子もいるみたいでね。どぶさん、おもてに置いてきてあげて」
「ハイ…」
パッチン虫に案内され、どぶさんがどぶどぶどぶ…と外に歩いていくと、そこにはキャンプ用の折りたたみテーブルが一つ置かれていました。上には、空のタッパがひとつ。
「ミレバ バショ スグニ ワカルデス」
「なるほど。アレか…おや、前のタッパが洗ってあるな。悪い奴じゃ、なさそうだ」
やきそば屋さんをやっているどぶさんには、なにか独自の『人を見る基準』のようなものがあるようです。単に、洗い物が面倒なだけかも。
「悪い奴でも、やきそばくらい食べてもいいだろ」
ネコマタの言葉に苦笑するどぶさん。
「腹が減ってはいたずらもできぬ…か」
ジャングルジム代わりにされたり、しっぽを蝶結びされたり、
さんざんなどぶさんです。

10
明日も仕事なので、早々に家に引き上げることにしたどぶさん。
タコ坊ンは泊まっていってほしかったようですが、しょうがありませんね。
次の出張キッチンDOBUの日が待ち遠しい、そんなタコ坊ンです。
帰り際、どぶさんは自分のやきそばを、ちらり…とひとにらみ。
「誰かは知らないが…あたたかいうちに食べてね」
どぶさんは、タッパを洗って返してくれた知らない誰かのために、自分の使い捨てカイロを一個置いておいてあげるのでした。
ムイムイ村の暗い夜道に、どぶさんの背中はゆっくり消えていきました。
どぶ、どぶ、どぶ、どぶ…(つづく)


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