日帰り太郎 EX7 大佐倉 通勤圏の謎の駅
東京を中心に、南関東全体に向けて放射状に伸びる首都圏の主要私鉄の一つ、京成線。上野と成田を結ぶこの電車、編成数が示すとおり利用者数はすこぶる多く、特に特急電車の停車駅は都心への通勤1時間圏内となるため、大規模な宅地開発が行われベッドタウンとしてかなりの賑わいを見せています。
…そう、この大佐倉駅を除いては。
特急電車行っちゃった。まあ、それなりに電車来るはずだからいいか。
京成線で利用者数が最も少ない駅で、雑木林があるばかりの駅前は京成線の中でも明らかに異質な風景、地方の無人駅に近いそれです。こんな駅に、特急を止めなければいけない理由とは何なのか?ムイムイがコドモの頃には、「大佐倉の地には「ヌシ」が住んでいて、この大佐倉駅を供物として作ることが京成線を作らせてもらうための条件だった」という怪しげな伝説が語られていました。
この地に潜むものは、何なのか。伝説の真実を確かめにいきましょう。
訪問記念スタンプ置いてある。観光地っぽいな。近くに城跡があるみたいなんで行ってみよう。
改札外に出ました。ここは大佐倉駅前です。商店は営業していません。
踏切を渡りました。駅前が狭すぎるので、こちらから写真を取らないと全景が見えませんでした。
鬱蒼と茂る林。すこし先で視界が開けています…駅前だけが森になっているようです。右手に階段と立て札があります。
サンドウラサンドウ…??お寺か神社があるようです。
階段を上から見下ろした写真です。見た目はきれいですが、角度は異常に急、倒木なども放置されており、手すりの状態もよくわかりません。確かに危険だしこの状況なら結界張っちゃってもいい気がするのだけど…謎。
階段の上には荒れ地が広がっています。
奥に進むと、古めかしい建物が現れました。辺りに人の気配はありません。
ここは神社の敷地内のようです。森の湿った空気が漂っています。
ここは麻賀多神社です。印旛沼周辺にのみ多数存在、しかし全国にはここしか存在しないという、非常に古くからある式内社です。
こちらが表参道です。階段には随分と土がかぶり、こちらもあまり人通りの気配を感じません。先へ進みます。
かっこいいキノコが生えています。
ここは麻賀多神社の入り口です。神社の名に残る通り、かつて麻の名産地であったという土地柄を反映してか。雑木林には棕櫚の姿も混ざり、どこか南国の密林めいたムードも漂っています。
先へ進みます。
ここには何もありません。
ここには何もありません。
ルートを確認するために地図アプリを見ていたところ、一つの事実が明らかになりました。
…どうやらここは、単になにもない場所ではなく、「あえてこの状態のまま残されている場所」であるらしいということ。そしてこのささやかな裏山全体が、千葉県にその名を残す大名、千葉市の本拠地「本佐倉城址」であるらしいということが。大佐倉駅はどうやら、観光駅だったようです。
この青い看板の先が、「セッテイ山」と呼ばれるエリアのようです。名前しか分からないため、それが何を意味しているのかは不明です。
舗装された急坂を登ると、ほどなく車止めが現れました。農業用車両も入れるのはここまでなのでしょう。
ここがセッテイ山なのか、この先がセッテイ山なのか。何も分かりません。この先に何らかの遺跡なり看板があるという事でしょうか…ちょっと前に進むのを躊躇する雰囲気です。
入り口の見た目の印象に反し、林道は光が差込み思ったよりも明るい空間です。
動物や吸血生物に襲われる可能性を考慮し、慎重に進みます。
道の状態がどんどん悪くなってきました。明らかに誰も立ち入っていません。
どうやらこの惨状は2020年の大型台風の影響のようです。この状態で正常に観光/教育施設として機能している可能性は低いため、この先に進むのは安全のため取りやめます。
結局、セッテイ山とは何だったのでしょうか。何をセッテイするのでしょう?それとも、セッテイがたくさん生えていたのでしょうか。詳しい人ならなにか知ってると思うので、興味のある人は調べてみてください。僕はこの正体不明な奇妙な気分をもうしばらく味わっていたいので、詳しくは調べませんが。
城址エリアを抜けた先は、印旛沼周辺でどこでも見かける田園風景。
彼岸花の咲く10月頃ですが、林のなかはまだセミの声が響いています。
ミケキャッツ1号が現れた!ミケキャッツ1号はようすをうかがっている。
どうやら、大佐倉駅側から来るルートは全て裏口側に相当するようです。こちらから回ってきていると、このような掲示物も大々的に用意されていたようです。
ここがどういう場所かの目星はついてきたし、先程のセッテイ山の激しいアップダウンや悪路の状況を見てきたので、本佐倉城址のメインエリアは足を踏み入れないことにします。しんどいし…
ここは通行止めになってる箇所だけど、2m近い崖に準ずる斜面を「段差」の一言で片付ける姿勢はなかなか尖っていると思う。モトクロス感。
本佐倉城のビジターセンターがあるらしいので、向かってみましょう。
ミケキャッツ2号が現れた!ミケキャッツ2号はようすをうかがっている。
本佐倉城のビジターセンターです。施設はコロナ対策として閉鎖されています。まあ、開けたところで対して人は来なさそうにも見えるのですが…
それでもお手洗いくらいは使わせてくれるようだ。ありがたや…
それにしても「日本100名城!」って麗々しく謳ったスタンプ置き場が便所のすみっこって、こんな悲しいレイアウトある!?
この案内所周辺には、妙にいろいろな生き物が集まっている。捕食性の両生類爬虫類が多い所を見ると、夜はここだけ明かりがついていて昆虫食の生物達のパラダイスになっているのかも知れません。
轢かれたカメの甲羅も道端に落ちています。印旛沼周辺は、サイクリングロードや農道でヘビやカメによく遭遇します。タイムロスにもなりますので、踏まないよう気をつけましょう。
そういう生き物の影が濃いエリアなので、マムシ看板も太めのもよう付きボデーにサンカクヘッドと、なんとなく描いた怖毒蛇ではなく「リアルマムシ感を大事にしたい」というアーティストの意気込みを感じます。かわいいなかにも本気のマムシ対策欲が光る名品です。
しすい おすい
思ったより酒々井駅が近いようなので酒々井まで歩いて帰ろうと思ったら、怪しい看板を見つけました。カンカンムロ横穴群?遺跡の気配。
…へ?これが遺跡?
何度見返しても、地図をじっくり見ても、該当する場所はここしかなさそうなのです。強いて言えばギリギリ公園とも言えなくもない、けれど…周囲を見回したところ、立て札のようなものを奥に見つけました。
ここ、入っていい土地なのかしら…
どうやら、この斜面こそがカンカンムロ横穴群という遺跡のようです。「厳島の隠れ里」「椀貸し伝説によって知られていた」…聞いたこともない謎の伝説がたくさん生えてきました。肝心の横穴らしいものもぱっと見ではみあたらないし、狐につままれたような気分でカンカンムロを離れます。
ひまわりと電波塔。
ぼろぼろに錆びた機関車の標識。いつからあるのでしょうか。
かっこいいトンネルがあります。
ふしぎな気分になりますね。トンネルには多数の怪談を生み出すような独特の霊気があります。
振り返ると、そこにはとてもかっこいい構図がありました。
あっという間に酒々井駅についてしまいました。酒の好きな老父に酒を飲ませてやる孝行息子の絵が飾られています。この配色、ピカードが船長のStar Trek: The Next Generationですね。拘りの強そうなトレッキーの息子です。
ちびっこ天国が滅びた今となっては「飯沼本家」の新酒祭りくらいしか来る機会のない街でしたが、非常に充実した冒険になったと言えるでしょう。
ウサギもよく空気を読んだ配置でお話しに興じています。
林立する謎のモニュメント。
よくわからないがパワーのある駅前です。まだほかにも遺跡あるんだ!
なかば廃墟めいたムード漂うちびっこ天国の残された建物も今回は見に行ってみませんし、後日調べたところでは非常によさげな定食屋も駅前にあるようです。
学生の心温めるがっつり茶色の人情空間…あらためてもう一回歩きに来ようかな、酒々井。
しすい うすい
足元にはイラストが描かれたタイルがあるようです。かすれて読めません。
はっきり内容が見れるタイルもありました。稲荷って書いてとうかって読むんだ。聞いたことがない昔話です。
…あっ!?さっきの「カンカンムロ」!?椀貸し伝説…俺が知らないだけでみんな知っている話なのか!?どんな話なんだ!?
大佐倉の謎を解き明かす旅、なぜか酒々井の謎が深まって終わりました。
ちなみに、「なぜ大佐倉に特急が止まるのか」問題はびっくりするほど単純な理由でした。朝夕の通勤通学ラッシュの間、京成佐倉駅から先の成田方面、そもそも特急電車しか走ってないんで特急が全駅止まるんだってさ。
もう今回の旅は終わりだよ。スーパー寄って帰るわ。
腹減ったし、ついでにお昼食べて帰るか…
…おっ?
オッオオオー!これは…魯肉飯の店!?
…コインランドリーじゃん。どういうこと?
こ、これかァ~~!!ちっちゃ!!
どうやら、毎日違う店が入る据え置き型のフードワゴンみたいな店みたい。おもしろーい。近所にもこういうの出来ないかな。(トイレの絵が緊張感に満ちている。もう二人はギリギリなのだ!)
小さい一人席テーブルがあったのでその場でご飯。お値段はまあまあだけど、清く正しい魯肉飯の他にもビーフンやら葱油餅やらの台湾小吃のパック売りもあり、台湾のすてきなりんごサイダー「打西菓蘋」まで売ってくれているという、これがちょっとした大穴場だったのでした。鶏排売り切れてたのは残念だな…ここも再訪したいなあ。すぐそばにスーパータイヨーもあるし、ちょっと静かだけど暮らしやすそうでいい街だわ。すっかり酒々井の話になっちゃったね。
それじゃ、今回のお話はこれでおしまい。
酒・和・花!!