BATTLE3 にがいねっこ
岩手は宮古の魚菜市場に行きました。
ここ、おいしくてふしぎなものが多くて大好き。
みんな魚屋に夢中。八百屋にもなにかローカルなものがあるんじゃない?
あった。
ム「なんですか?この…『ところ』って…」
店「…根っこ、です。」
?
店「地元の人しか食べられないかも。すごい苦いよ」
店「薬になるよ。」
ム「……挑戦します!調理法しらべて食べてみます」
店「ニッコリ~」
買いました。
えーと…『トコロ』…なんだこれ いきなり毒って出てきたぞ。
オニドコロ。生薬名、萆薢。延喜式にも記載のある歴史ある食品で、所沢の語源。サポニンとかシュウ酸を大量に含む毒草で、一部地方では食す。苦いけどクズも残さず全部食べきらずにはいられないくせになる味とも、そんなことねーぞ食べれないよこんなの!とも書いてある。毒抜き不十分だと溶血作用でやられる…
あっ 野食ハンターの茸本朗さんがギブアップしてる食材だぞ、これ。
やれんのか!?
この途方にくれる感覚、生のワラスボを自宅で調理して食べたとき以来だ。
とりあえず、これはひげ根を取って皮をむいた状態なのでしょうか。
何もわからん。
とにかく恐怖しかない調理がはじまる。
トコロの毒に当たるわけにはいかない。自分も困るし、売ってる当地の人にもめいわくがかかりそうだ。
極限アクぬき作戦のために、割って、木灰で煮て、水に晒してを安全側に倒してがっつりやっていきます。
…両断したときの柔らかいんだけどミチっと詰まった手触り。あまり前例がない。
まだ沸騰もしていない段階から、謎のあぶくと謎のなんかが出てきた。
モチュモチュモチュモチュ…アクをすくってみたら、水の表面が剥がれました。コラーゲンたっぷりのラーメンみたいな謎の膜が水面に張っている。
水替えだ!
持っててよかった、木を燃やした灰。
魔女の鍋なんだよな。
煮えました。よかったね。
水に晒して、数日間…
さあ、食うぞ。
…あれ?意外と食べられる…?確かに苦いけど…食えるぞ!
ちょっと煮すぎたかな?味が抜けた感がある。
二本めで強烈に苦いのに当たったが、あとのは「そういう風味の食品もある」の範囲に収まっている、気がする。(もしかしたら、この苦さは「慣れやすい苦さ」なのかもしれない。)
質感としては、繊維の多い痩せたさつまいもって感じ。いかにも漢方薬らしい方向性の苦みの奥に、ほんのりとしたうす甘い味がある。
仮に毒抜きが相当できていたとしても薬喰いの類なので、一度に大量に食べることはせず1パック分を3日くらいに分けて食べたが、珍味としては十分アリな範囲に収まった気がする。
なんとなく手が伸びて、みんな食べきってしまった。
いいものを食べました。
この世のふしぎなぞ秘密が、また一つ解き明かされたぞ。