占領を争う「くそったれ同士」の会話(単話)
トイレのドアが開いた!
ようやくだ!やっとだ!
待ちに待ったのだ!
苦しかった。
でも他のトイレに移動するには
私は我慢しすぎていた。
もう一歩も動けなかった・・・
ここでする!
ここで絶対にする!
そう決めたのだ。
そして私はやっと開いた一室に入場して
除菌をしまくった後、ズボンを下ろした。
そして座ってすぐのことだった。
一室しかない
このトイレに誰か入ってきた。
音でわかる。
私は気にせず
続きをかます。
「がっちゃ」とゆっくり一回だけ
私がすでに入室済みのこの個室を
開けようとした。
開くかどうか試みたのだな。
なるほど。わかる。
気持ちはわかる。
鍵の色が「赤い」から入室済みなのはわかる。
だが、「いちるの望み」で、
もしかしたら
中途半端に鍵がかかっているだけで
中には誰もいない状態かもしれないと言う
希望の「ガチャ」。
残念だが、
私はそんな「ガチャ」に反応する義務はない。
私は私の仕事をするだけだ。
ん?あれ?
出て行く様子がない。
音でわかる。
このウォッシュルームのドアを開けて
出て行く音がしていない。
ま、待つつもりだな!
持久戦に持ち込むつもりだ。
短期戦と見積もったのだろう。
私と同じだ。
先ほどまで私がそっち側だったのだ。
わかる。
気持ちは痛いほどわかる。
出来るだけ近くにいて
プレッシャーをかける作戦だ。
よし、それなら
こちらにも作戦がある。
長期戦に持ち込むつもりはない。
心は結構弱虫だから。
でも私はまだ任務を遂行していない。
いや完了していない。
まだ半分しか出していない。
顔のない人よ。
ベルリンの壁の向こう側の人よ。
その気持ちはわかるが、こっちも今入ったばかりだ!
自由になったばかりなのだ!
そうだ!いいことを思いついた!
一発どてかい屁でもかませば
諦めて出ていくかもしれない。
作戦決行だ!
作戦は失敗に終わった。
一向に敵はひるむことを知らない。
数々の修羅場をくぐり抜けたベテランに違いない。
経験値はほぼ私と同じといったところか?
「しーはーしーはー」
シーハーシーハー言い出したぞ!
さっきまでは咳ばらいだったのに
とうとう「シーハーシーハー」言い出した!
これはまずい!
くそ!
そんなにもか!
あーくそ!わかった!
まだ私も半分しかスッキリしてないけど、
一旦出てやろう。
今回は私の負けだ。
私はまたもう一度
必ずここに戻ってこよう!
このホワイト・ハウス
いやホワイト・ベンキに!
(トランプか)
そして私はいつもより多めに拭いて
拭いて拭きあげてから、
すぐには流さずにまずは服を着た。
服が擦れる音すらさせずに
リュックを背負い
完全に外に出られる状態にしてから
一気にレバーを上へと上げた。
どうだ!
聞こえるか!
そなたの勝った勝利の音だ!
嬉しいか?
私に勝って嬉しいか?
それどころではないか?
ないのだな?
よし!
ガッチャ!
向こう側に当たらないように
ゆっくりとドアを開けた。
なんと!
私そっくりのおっさんが
同じような格好で居るではないか?
リュック姿!
私たちは
全てを理解した。
会話もジェスチャーも会釈も何もいらなかった。
男はドアの中へと消えていった。
私はドアの外へと旅立った。
手は外で洗った。
そして30分後
まだ半分体の中に残っている私は
また再び戦場に戻ってきた!
あのホワイト・ハウスに!
今度はドアは開いていた。
なんだ、誰ももう戦う気はないのか。
腰抜け野郎ども。
ん?
フタが開いてるぞ。
ホワイトのフタが開いている・・・
さっき私は閉めて出た。
礼儀というやつだ。
ヤツは開けたまま去ったのか!
なんてヤツだ。
さて除菌、除菌。
な、なんと!
流れ切っていないではないか!
少し残っている!
置き土産だ!
ヤツの勝利の旗か?
「クソッタレ!」
私は叫んでしまった!小声で。
しかし、今のセリフは合っている。
合ってる
合ってる。
完全に合っている。
うん。
間違っていない。
糞を垂れたやつに
「クソッタレ」と言っているだけだ。
状況把握は完了し、任務は遂行された。
そんな
「クソッタレ」同士の戦いは
今日もどこかで繰り広げられている!
あなたの町で。
今日も負けた・・・・
次の負け戦をお楽しみに!
おしまい
追伸:
食事中だった人、
すいません m(__)m