フリーランスでインハウスエディター!?異なる立場の人たちが1つにまとまる「問題VS私たち」の考え方
インハウスエディターアドベントカレンダー7日目の記事です。
こんにちは、はじめまして。
マーケティング領域を専門に活動している、ライターのマチコマキといいます。フリーランスですが、企業のインハウスエディターをやっています。
フリーなのに、インハウス(社内)!?
いきなりの矛盾な展開に、「インハウスとはなんぞ…」と問いたくなるところですが、企業との関係性やそれを生み出す環境があれば、言葉の意味は超えられる…。そんな実感をたくさん得た1年でした。
では、どのような関わりかたであれば、フリーでもインハウスエディターの仕事ができるのでしょうか。
フリーランス×インハウスエディターを実現する「問題VS私たち」とは?
フリーランスで、企業のインハウスエディター業務を行うには「問題VS私たち」の姿勢がとても大切です。
「問題VS私たち」とは、お客様の問題に対してお客様と一緒に向き合うこと。「お客様」に向き合ったり、「依頼や発注」に答えるのではなく、お客様が抱えるそもそもの問題に一緒に向き合い、解決策を探り、実行することなのです。
フリーランスと事業会社の付き合い方は様々ですが、そこにはどうしても上下関係が発生しがちです。その背景の1つに「タスクをやること」が前提にあるからだと、私は考えます。
ライターの場合は、タスクとして原稿を依頼され、執筆して納品すると、仕事は完了です。「原稿を書いて納品する」に目が向きやすい構図です。
もちろん、仕事のクオリティを高めることで、「お客様の満足度」をあげることもできます。それも仕事をする上で大切ですが、もしお客様からの依頼やタスクが、お客様の本当の問題を解決する最適解でなかったらどうでしょう?お金も時間も、お互いにもったいないですよね。
たとえば、オウンドメディア。
コンテンツマーケティングの重要な施策ですが、「続けられない」「思ってたよりコストがかかる」「効果がわからない」などの問題もあります。
ですから、「オウンドメディアを立ち上げたい」と相談を受けたときは、すぐに制作に入るより、「なぜオウンドメディアなのか?」「そもそもの問題は何で、オウンドメディアが最適解か?」を確認しあいます。すると、出来上がりやその後の運用での「これじゃなかった…」が防げますし、オウンドメディア以外の施策が考えられるかもしれません。
「これをお願い」ではなく、「こんな状況があるんだけど、どうしたらいいかな?」から一緒に考えていく。
これが、「問題VS私たち」の構図です。
企業とフリーランスの間で「問題VS私たち」を成立させるためには、心理的安全性とお互いの信頼が不可欠です。さらに企業には、自分たちの問題や課題を外の人間に対して明らかにする姿勢が求められますし、フリーランスは自分ができる業務を起点に、幅広い知識や技術を持って関わらなければなりません。
「原稿を書く」とき以上に、会社のビジョンや事業への共感が求められるインハウスエディター
実は「問題VS私たち」とは、私がインハウスエディターとして関わっている企業・株式会社ソニックガーデンの行動指針となる価値観のひとつです。
ここで、私が同社のインハウスエディターになった背景をお話させてください。
ソニックガーデンは、ソフトウェアの開発会社です。「納品のない受託開発」と呼ぶ、独自のビジネスモデルを展開しています。
納品のない受託開発とは、「要件を決め納品ありきでソフトウェアを開発するのではなく、ビジネスのフェーズに合わせてソフトウェアを開発・改善し続けていく」モデルです。案件に関わる営業やPMは存在せず、1人のプログラマがお客様との打ち合わせから開発までを担当します。(広告・マーケ業界で例えると、アナグラムさんの組織に近い気がしてます)
社員の9割近くがプログラマで、マーケティングや広報、バックオフィス業務などは、兼任&外注やパートナーと協業する同社。私は2016年から、「お客様開発事例」の取材・執筆を担当してきました。
2021年に設立10周年を迎えたソニックガーデンは、全社員フルリモートの働き方(2016年に実現)、管理職でも独立でもない、プログラマが一生プログラマとして働いていける仕組み作り、管理なしの組織など、多様性のある新しい働き方の文脈で注目されるように。
そこで、「会社のカルチャーや考え方をもっと社会へ発信していこう」の意識が社内で高まり、私もお客様開発事例の取材・執筆だけでなく、会社全体の情報発信に関わることになったのです(その他にも、ノンプログラマの社員が増え、発信に力を入れられるフェーズになったなどもあります)。
インハウスエディターのお話をいただいたとき、私自身が「取材して原稿を書く」仕事から、もっと幅広い領域に関わりたいと考えていましたし、何よりソニックガーデンのビジョンやカルチャーは私も理想とするところ(書く仕事はおばあちゃんになっても続けていたい)。
どんな立場であっても求められることですが、スキルは大前提として、ビジネスの理解や会社のビジョンへの共感なしにインハウスエディターはできません。共感だけでなく、自分が実際に手を動かしてその実現に貢献できるか?も大切です。従来のタスク業務も、「これをやることで、会社(クライアント)の何が達成するのか?」の理解は必要ですが、その深度がより深くなるのだと考えます。
「問題VS私たち」の作りかた。オンラインでも、コミュニケーション量は増やせる
では、どのようにして「問題 VS 私たち」の形を作るのか。
それは、問題とその背景を理解することから始まります。理解の方法は様々だと思いますが、私は毎日のコミュニケーション量を増やしたことで、問題の把握と次にとるべきアクションの準備ができました。
具体的な仕組みは、次の通りです。
これまでも広報や発信まわりを兼務していた社員の方と、編集チームを結成。
編集チームで週2回の定例ミーティングを行い、業務以外の雑談と相談(ザッソウ)もする。
仮想オフィス(Remotty)を使い、同じオフィスにいる環境を作る。気になることがあれば、チャットやオンライン通話ですぐにコミュニケーションを取る。
Remottyにログインしていると、対面オフィスで起きる「あっちのテーブルで○○さんたちがイベントの打ち合わせしてるな〜」「ちょっと質問していいかな?」のような体験ができます。
このようにして、社内の動きを把握したり、情報を収集することで、たとえば「お客様事例」は、「どのお客様に依頼しようか」の上流のところから一緒に設計できるようになりました(これまでは、このクライアントを取材したいのフェーズからでした)。誰にでも話かけやすいカルチャーにも、とても助けられています。
フリー×インハウスエディターが持つ「第三者目線」のメリット
「でも、それってフリーのインハウスエディターである必要性どうなの?」
こんな疑問は浮かびますよね。
確かに私の動きは、同じ会社の別チームが他のチームと協力してプロジェクトを進めているにすぎない感じも受けます。
しかし、外部の人間だからこそ持っているメリットがあるのです。
それは、第三者の目線で関われること。
例えばソニックガーデンには、ユニークな仕組みがあります。でも社員の人たちにとっては「当たり前」で、わざわざ外へ発信するものではないのでは?という感覚のようなのです。もったいない!
(これは今仕込み中なので、お楽しみにしていてください!)
「いやいや、発信していきましょうよ!」と背中を押し、中の情報と外の世界をつなぐことが、外部からインハウスエディターとして関わる利点であり、特徴だと思います。
ソニックガーデン社内のコンテンツ制作・情報発信の体制は、下記のとおりです。私は、お客様や社外との接点が多いコンテンツに関わることが多く、自社メディアの運営では、他の外部ライターやデザイナーと一緒に動いています。
編集チームが立ち上がってからは、明確に「これをお知らせしてほしい」の情報が社内からあがってきたり、「これを伝えたい」という社内からの働きかけも増えたように感じます。
また、定例時のザッソウから「いつの時期にこれを発信するといいよね。準備しておこう」や「それ発信しましょう」もできました。
目線を外へ向けつつ、社内でワンチームとなって「問題」と向き合う。これが、今の私のインハウスエディターとしての関わり方です。
情報全体の流れを追い、次の発信の一手をスピーディに実行する
具体的な取り組みは、こんなことをやってきた&やっています。
とくに、ソニックガーデンがはじめて大々的に行った開発合宿「ソニックガーデンキャンプ」「ソニックガーデンジム」の情報発信は、ツイートへの反応が大きく、応募のきっかけやフォロワー数の増加につながり、成果を出せたと感じています。
プレスリリースと同時にTwitterで発信し、10日ほど経ったタイミングで、イベント担当者とふりかえりを行いました。そして、お問合せや応募者からの声を反映した発信内容を作成し、発信。情報を出しっぱなしにせず、次につなげる流れを作れました。
▼初回のツイート
▼2回目のツイート
本件に関しては、イベント担当者との情報共有を行っていたからこそ、積極的な発信ができました。この動きは「この情報をSNSで発信する」というタスクの依頼だけでは、できなかったと考えます。また、社員の方や関係者の皆さんにもリツイートいただき、情報が広がりました。
他にも、来年度新卒入社でインターン参加している学生さんと、ライティングスキルを高める取り組みをしています。私自身が、ふだんどのようにライティングをしているか、その前後のアクションまで言語化する機会にもなり、とても楽しい仕事です。
インハウスエディター楽しいよ!
以上、フリーランスでインハウスエディターの仕事をする仕組みと、具体的なアウトプットをご紹介しました。
企業が自ら情報発信をしていく上で、インハウスエディターは重要な存在になると思います。まだ手探りなポジションではありますが、フリーランスが外部から関わり、インハウスエディターの形を作っていく方法もアリ!なのではないでしょうか。新しい仕事を作るのは、楽しいですね。
また、リモートワークが当たり前の選択となる中、社内だけではなく、社内⇔社外パートナーとのコミュニケーションも、工夫が必要になる頃かと思います。「問題VS私たち」の関わり方が、参考になると嬉しいです。
それでは皆さま、メリークリスマス&良いお年を〜。
「ソニックガーデンおもしろい会社だな」と思ったエブリワンは、ぜひ設立10周年記念で作られた社史をどうぞ。SocialChangeで定期的に更新中です。
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