2020年の「今」を体験する。劇団ノーミーツ「むこうのくに」観劇メモ
劇団ノーミーツ第2回長編公演『むこうのくに』を、自宅で息子と一緒に見ました。
劇団ノーミーツとは、コロナ禍でリアルなエンタメを自由に発信できなくなった今、役者やスタッフ達が1度も実際に会うことなく、リモートで作品を創り・届ける劇団です。
今年の4月6日に旗揚げしてから、5月23日には第1回となる長編公演『門外不出モラトリアム』を上演。そして、7月23日より『むこうのくに』を上演しています。
▶追加公演の千秋楽は8月2日20時から。公演開始時間前まで、チケット買えますよ!
『むこうのくに』を構成する「今」見ること
物語の舞台は、少し先の未来。世界は2つにわかれていました。
現実の世界と、世界最大のオンラインコミュニティ「ヘルベチカ」。
主人公の僕の、キータイピングの音からはじまります。
現実世界のつながりを絶たれた時代が終わろうとしていた。
多くの人は喜んで太陽の下へと駆け出したが、"むこうのくに"に残ることを選んだ人もいた。
そこは、画面を一枚隔てれば、生まれた場所や話す言葉、ヒトかどうかさえも関係ない、現実のしがらみが無効化された世界。
その夏、ぼくは相変わらず画面の前に居て、"むこうのくに"へアクセスしようとしていた。
行方をくらませた、"ともだち"を探すために——”
エンタメって、「当日に作品を見て終わり」ではありません。
チケットを買うところからスタートして、当日を待ち、何ならそのための洋服を買ったり身だしなみを整えつつ、その日を楽しく迎えるために、仕事やプライベートの予定を調整して臨みます。そして、作品を見て、友達とお茶したりご飯を食べながら感想を交換し合ったり、ネットでみんなの感想や考察を見る。
すごく気に入った作品ならパンフを買ったり、再び劇場へ行ったり、円盤を買ったりする。さらに、ときどき思い出しては、ああだこうだ脳内で考察して、再び円盤を見たりする。とにかく、しびれるエンタメは、ずーっと頭に残っています。
つまり、見に行こうと思ったところから、体験が始まり、作品が終わったあとも、続いていくのです。
『むこうのくに』も、劇団の立ち上げストーリー、誰もやったことのないリモート演劇を作るプロセス、作品を見る仕組み、ストーリー、キャスティング、視聴者参加型、その後の感想の流通(LINEのオープンチャットならネタバレOK)など、すべての要素が物語を楽しむ体験へ繋がっていました。
そして、『むこうのくに』による体験が頭から離れないのは、現在の社会情勢に寄るところが大きいでしょう。緊急事態宣言は解除されたけれど、いまだに予断を許さない状況は確かで、演劇の舞台と私達の生活が、暗黙の了解で同じ文脈を共有しているのです。
もうちょっと掘り下げて欲しいキャラクターやエピソードはあったけれど、共有しているコンテクストが、その隙間を埋めていたと思います。
半年後、1年後に、私達の生活が元に戻っているかもしれないし、もっと「むこうのくに」へ寄っているかもしれない。
見る側の環境で作品の色は変わる。だから「今」見ることは、この作品を構成する要素の1つなのだと思います。
8月2日20時からの回が、今回のラスト。下記から、チケットをチェックしてみてください!
パンフレットは、見たあとに読むのがオススメです。「ここまでリモートで作ったの?」と驚く、ガチリモート制作の裏話が最高ですよ!
インターネットの良さは、誰かの可能性を広げることだと思っています。
演劇はなかなか食えないと言われ、やりたいけれど諦めた人が大勢います。でも、リモート演劇だったら、1度は諦めた人が何かしらの形で関わることができるかもしれません。諦めない選択肢や、諦めたけど再度挑戦できる可能性も生み出しているところが、個人的にすごくいいなと感じました。
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ここから先は、ネタバレありの感想をまとめています。ラストには言及していませんが、オープンで書くことではないので、有料部分にしました。
よかったこと/物足りなかったこと、いろんなことを書いています。
解釈の正しさを議論したいわけではなく、「こんな感想だったんだ〜」と気になる方向けです。(返金申請可にしています)
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