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八戸えんぶり1年目の楽しみ方

事あるごとに「えんぶり」の話をしていたら「えんぶりの人」として認識され始めたようで「えんぶりに行ってみたいんですがおすすめを教えてください」みたいな相談を受けることも増えてまいりました。
そこで「八戸えんぶり1年目の楽しみ方」として、公式スケジュールをメインに回る楽しみ方についてまとめます。


1.はじめに:八戸えんぶりの魅力

えんぶりは、毎年2月17日から20日の4日間開催される豊年満作を祈る八戸地方の代表的な民族芸能の一つで、国の重要無形民俗文化財に指定されています。

VISIT HACHINOHE

えんぶりについての基本は、上記の引用元「VISIT HACHINOHE」のページに詳しいのでそちらをご参照ください。

私が考える、えんぶりの魅力は音楽(囃子・唄)、舞、装束ですが、それらの「芸能としての完成度の高さ」
そして、その完成度の高い芸能がものすごいボリューム感で迫ってくるところ。

毎年八戸えんぶりには30組前後のえんぶり組が参加しますが、各組10前後またはそれ以上の演目があり、層の厚い組だと囃子手、唄い手、舞い手も複数いて一度見ただけではその組の全貌が把握できないほどの豊かさ。

1組あたり40分〜1時間ほどの公演であることが多いので1組見るだけでも満足度が高いのに、1日に5〜6組、場合によってはそれ以上の公演を見ることができる。

ちなみに、えんぶりは「八戸えんぶり」以外にも2月初旬から様々な街や集落単位でも行われているため、この記事内で「えんぶり」と呼ぶ場合は芸能そのものを指し、2/17〜2/20に八戸市内で行われるものは「八戸えんぶり」と表記いたします。


2.八戸市街地のマップと交通手段について

まずは公式スケジュールを読み込み、各会場の位置関係を把握する。
東京など遠方から訪れる場合、新幹線の停まる「八戸駅」から八戸えんぶりのメイン会場までは電車orバスでの移動となり、本数もそこまで多くないため予め時刻表を確認しておくのが良い。
高速バスを利用する場合は、便によっては「八戸中心街」に停車するものもあるので、そちらの方が便利な場合もある。

目安としては…
●八戸駅→本八戸駅:電車で10分ほど
●本八戸駅→八戸中心街:徒歩10分ほど
●八戸駅→八戸中心街:バスで30分ほど
※初日(2/17)の奉納が行われる「長者山新羅神社」は「八戸中心街」から徒歩20分ほど

雪が積もる年は雪靴が必須となるが、神社までは急な坂道もあるので雪対策+歩きやすい靴がないとわりとつらいです。

八戸えんぶり期間中には「八食センター」という八戸の食が詰まった夢の施設でのえんぶり公演も毎日あり個人的にオススメ。
お土産や八戸グルメもあわせて堪能できるため満足度高し。

※公式スケジュール内だとバスが必須になるのは、八食センターと根城くらいなので、その2つを諦めるなら市街地を徒歩のみで移動できます。
根城の隣には博物館があり、毎年だいたい「えんぶり展」が開催されているので、根城公演+博物館というのも捨てがたい(涙)

過去のものですが、デーリー東北のマップがわかりやすい

<リンク集>
令和7年八戸えんぶり行事日程
八戸駅~中心街(市営バス・南部バス)
バス停位置図
八食100円バス (PDF)
八食200円以下(イカ)バス (PDF)
JR東日本時刻表
八戸市博物館企画展「えんぶり展」


3.自分なりのスケジュールを立ててみよう

会場の位置関係と移動手段を頭に入れたら、次は自分なりのスケジュールを立ててみるのが良いかもしれません。
何も考えずに当日思いつきで見るんじゃい!!という方はそれもよし。

以下、私が初めて八戸えんぶりに行った際のスケジュール案を参考までに…

えんぶりには「ながえんぶり」と「どうさいえんぶり」があり、「ながえんぶり」が古い型を残していると言われている。
「ながえんぶり」の組自体が少ないので、私はまず「ながえんぶり」を見ることを優先事項とした。
また、レコードなどで聴いていた「中居林えんぶり組」を絶対に見たいという目的があったので、その2つを軸に当日の予定を組んでいった。
予定はスプレッドシートを作成して管理。
当日まではその予定表を見て妄想を膨らませてニヤニヤする日々…
ガチガチに予定を組めば朝から夜まで休む間なくえんぶりに浸ることも可能。

えんぶりへのいざない(儀式手帖)


各スケジュールについて一言ずつコメントしておきます…

●2/17のみ 7:00〜奉納 長者山新羅神社
遠方組は前乗りしないと間に合わないが見れるなら見た方が良い。
全えんぶり組が神社に奉納するところを見ることができる。

●2/17のみ 10:00〜えんぶり行列 長者まつりんぐ広場~ 八戸市中心街
奉納が終わったえんぶり組からまつりんぐ広場に移動していき、10時にまつりんぐ広場から行列が出発する。ここも見所です。

●2/17のみ 10:40〜一斉摺り 八戸市中心街
この40分間にすべてのえんぶり組が一斉に摺る。壮観です。
当日直前に一斉摺りの配置図がツイートされるので、見たい組がある場合はその位置まで移動!
大通り(行列の先頭の組が配置するあたり)はとても混み合うので、特に目当ての組がないのであれば裏通りで待機するのもあり。

●2/17のみ 12:15〜御前えんぶり 八戸市庁本館前市民広場
会場は夜のかがり火えんぶりと同じ場所。
外なので寒いです。防寒しっかり!
ひとつの組を40分ほどがっつり見れるのでなかなか贅沢です。

●えんぶり公演 八戸市公会堂
●お庭えんぶり 更上閣
上記2つの公演は私は未体験ですが、室内での有料公演です。
寒いのが苦手な人には良いかも。
お庭えんぶりは人気ですぐにチケットが売り切れるようなので、行きたい場合は発売日すぐに取った方が良い。

●かがり火えんぶり 八戸市庁本館前市民広場
かがり火が焚かれて雰囲気は出ますが超寒い。
無料公演で3組がっつり見れるのでかなり混み合います。
座って見たい場合は早めに行って席を確保しないと座れない可能性が高い。

●史跡根城えんぶり 史跡根城の広場
観覧は無料ですが、根城への入場料が必要。
市街地の公演ほどはお客さんは多くないけれどカメラマンが多いのでゆっくり見れるかは謎。
自分が行った時は風が強く、スピーカーが簡易的なものであまり音が良くなかったので音源派にはあまりオススメしない。(写真撮る人にはいいのかも)

●えんぶり一般公開 八戸市庁本館前市民広場
かがり火えんぶりと同じ場所で昼の部です。
庁舎前広場の公演はとにかくひとつの組をじっくり見れるので、好きな組を見つけたい人は庁舎前公演をコンプリートするのが良いと思う。
組ごとに全然違うので本当に面白い。

⚫︎マチニワ
今年はまたスケジュール発表されてないかも?ですが、市街地にあるマチニワという施設でも連日えんぶり公演があります。
室内での無料公演なので混み合いますが、場所も便利で行きやすいです。


4.えんぶりとは門付けの芸能である

これだけは言っておきたい!
えんぶりとは門付けの芸能である。
街を歩けばえんぶりに当たる。なんてラッキーな!

公式スケジュールだけを追っていてもどこかで門付けに出会うことにはなるでしょう。それくらい街中のあちこちに常時えんぶりがいる。
最高。すべてのえんぶりに感謝…という気持ちになること間違いなし。

そこで個人的にオススメなのが「ご祝儀」です。
去年のえんぶりの記事でご祝儀についても長文書くつもりだったのですが結局いまだ書けていなくて、なのでここでは書く!

えんぶりを見に行く皆さん!是非ポチ袋に1000円でいいので入れて、それを何セットか用意して街に出るのです!
そして門付けでえんぶりに出会ったらそれを渡すのです!!
めっちゃ喜ばれます。運が良ければお礼のシャンシャン(太夫がジャンギを鳴らしてお祓いみたいなやつ)をやってくれたりお礼のお札(おれいのおふだ)が貰えたりすることもある。

だがそんなお礼などはおまけなのです。
えんぶりにご祝儀を渡すと本当に幸せが舞い込むのです。
というか、えんぶりの祝福芸を見ていると本当にいいことがありそうだな〜というプラセボ効果とかなのかとにかく幸せな気持ちになれます。
その気持ちの具現化としてご祝儀を渡すことで、祝福の連鎖が起きます。
怪しい勧誘みたいになってきてスピっててやばいですが(笑)
実際にえんぶりを見て、その気持ちわかる!!と思ったら是非ご祝儀を渡してみてください。

ご祝儀チャンスはいくつかあって、門付けで渡す以外に、公演中は「恵比寿舞」が狙い目です。
ほとんどの組では、恵比寿様が鯛を釣るときに1回目は失敗して2回目で釣りあげます。
そして、客席側に鯛をセットする役の人が出てくるので、その人にご祝儀を渡すと鯛と一緒に釣り糸に結んで釣りあげてもらうことができます!

最初にえんぶりの魅力は「芸能としての完成度の高さ」と書きましたが、これは門付けの芸能であることと無関係ではないと私は考えています。

連日朝から晩まで重い装束や楽器を背負って何公演も行うえんぶり組のみなさんの応援にもなるし、芸能を支えられるというのはファンとしても嬉しいものです。


5.さいごに:祝福芸の魅力

最後に。
この文章も以前、儀式手帖に寄稿した「えんぶりへのいざない」からの引用となります。
よかったらリンク先から通販もできます(はーと)

えんぶりには数種類の演目があるが、はじまりと終わりは太夫の摺りとなる。
太夫が演じるのは、稲作にまつわる一連の物語で、とても勇壮でかっこいい。
太夫の摺りは、えんぶりを象徴するもので厳かな雰囲気が感じられるが、その合間に「祝福芸」と呼ばれる賑やかな演目が入る。
主なものは、松の舞、よろこび舞、大黒舞、恵比寿舞など。そして組によっては玉すだれや万歳などの演目が入ることもある。
祝福芸は子供が演じることも多く、太夫の摺りとは趣きの違った余興的で楽しいものである。
この太夫の摺りと祝福芸のコントラストが、えんぶりの大きな魅力のひとつであると私は感じている。
塩っぱい食べ物と甘い食べ物を交互に食べると無限に食べ続けたくなるように、いつまでも飽きることなく永遠にえんぶりを見ていたくなる。

太夫の摺りの最後に「畦留め」といわれる田んぼから水が漏れないよう呪文を唱えるセクションがあるのだが、大黒舞や恵比寿舞にも見ていると本当に良いことが起こりそうなありがたさがあり、どちらの舞にも呪術的な要素を感じる。
それは、舞や囃子の「型」だけにとどまらず、芸能本来の精神性が今も伝承されていることの証左でなかろうかと私は考える。
えんぶりは今も生きている貴重な民俗芸能であり、すべての芸能ファンに見て欲しいと願う一番の理由であります。

えんぶりへのいざない(儀式手帖)

それでは、2月の八戸でお会いしましょう〜!

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