学問のすゝめのすゝめ -未来を掴めなかった中年が説く未来の掴み方
かつてお札の肖像画だった福沢諭吉さんの著書のひとつに「学問のすゝめ」がある。「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」という書き出しを教えられた人も多いだろう。人は生まれながらに上下はない、アメリカの独立宣言やフランスやイギリスの天賦人権論といった、当時の新しい考え方だ。
でもこの本はただ平等を説いているのではない。人にはどうしても社会的な地位の差がある。どうして差ができるかというと、学問に取り組んだ者は上に、疎かにした者は下になると、非常に大雑把に言ってしまえばそういう本だ。この本は1872年から17編にわたって刊行された。だからちゃんと話すと長くなる。
この本は当時の日本人の10人に1人が読んだ。そして鎖国してチョンマゲを結っていた国を、あっという間に世界の大国にする力があった。まず、日本語は漢字を使うというディスアドバンテージがあるにも関わらず、当時60%の人が字を読めたのが驚きだ。もともと学問をしてたんだ。同じ頃ほかの国では20%程度の識字率だった。
日本人は真面目で勤勉、というのはヨーロッパの軍隊教育を学んだ明治政府が作り上げた啓蒙だ。江戸時代の人々は夕方には仕事を終えて遊びに繰り出して、長屋の門限が夜の10時ごろだったと考えられている。いま働いてる人で、仕事のあとに遊んで22時に帰れる人どれくらいいる? そのあと灯火で本を読んだり勉強してたみたいだけど。
ものすごーく大雑把に、統計上日本人が優れてるところがあるとしたら、文字が読めることくらいだと僕は思ってる。
話は代わって、前に「ライバーさんは時間を削って身を削って配信してるんだから、楽しむ側も自分にできる応援を考えようよ」って投稿をした。今度の投稿は、逆にライバーさんを見てて「どうなのこれ」って思うところの投稿だ。そう、ライバーさんは字が読めない。日本人の唯一の取り柄である字が読めない。
わからないでもない。自分もライバーをやるけど、小さい字でどんどん流れていくコメントを読むのは大変だ。そのコメントひとつひとつにリアクションしたり自分の考えを話してくと、その間にまたどんどんコメントが流れてくる。「投げ逃げ」のリスナーさんが来てスタンプを投げて(なぜ投げ逃げリスナーはスタンプをポンポン投げるのか)、コメント欄が流れてどこを読んでいたかわからなくなる。
それにしてもだ。リスナーさんも大好きなライバーさんのために、同じ枠の仲間たちのために、言葉を選んで推敲して、意見や冗談をコメントする。でも冗談ってタイミングでさ、コメントの文字を読めなかったり、ひらがなでも突っかかったりすると、もうそのギャグは死ぬわけ。コメントのポストと読まれる間に大きな時差ができると、何に対するツッコミなのかもわからないわけ。一生懸命考えた言葉がスベッたみたい、変な空気にしたのはリスナーが悪いの?
みたいなもじゃもじゃを何年も重ねていると、学問というものについて考えるようになる。例えば、小学校で習った漢字をよく読み飛ばしたり読み間違えるライバーさんが、大学に合格しましたと。それ素直に喜べるかっていうとぶっちゃけ喜べないのだ。小学校で習う漢字は中学受験の試験範囲だろうと。勉強ができなければ高校や大学に行かなくていいんだ、義務じゃないんだから。
大学によっては、定員割れして自分の名前さえ書ければ合格ってところがあるという都市伝説もある。大学生の学力があまりにも低くて、大学で義務教育のおさらいをするところは本当にかなりある。義務教育が受けられるか受けられないか、理解できたかできないかはそれぞれ事情がある。そんな人々をすくいあげるのは大切だ。でもそれ大学の役割ではない。大学は高等教育機関で研究機関だ。
福沢諭吉さんの言うとおり、学問に意味があるのかと聞かれれば、ある。例えば僕は卒業して、生活の中で微積分を使ったことがない。じゃあ教えなくてもいいかというとそうではない。ものすごーく大雑把に、数学は「理論的にものを考える練習」をしてる。微積分を学ぶ時に身につけた理論的思考が、普段の生活の中で例えば「これおかしいな、騙されてないかな」って判断する時に役立ったりする。
僕は前に「古文や漢文は要らないかもね」ってコメントしたことがある。これは大きな間違いだった。長いけど内田樹さんのツイートを引用する。
古典は絶対に必要です。「日本語のアーカイブ」への入り口だからです。古典も現代文も、同じ「肉」でできている言語です。だから、一読意味不明でも、読んでいるうちに意は通じる。母語である限り、繰り返し読んでいれば「意味がわかる」。身体的にわかる。そんなことは外国語では絶対に起こりません。
(中略)
古典を学ぶことができれば「母語のアーカイブ」の深淵に近づきます。そこには過去何千年か日本列島上でこれまで発語されたすべての音声、書かれたすべての文字列が「アーカイブ」されています。残念ながらこの「ボルヘス的図書館」には司書がいません。だから自分で「命綱」をどこかに縛り付けてから、沈潜するしかない。でも、驚くほど豊穣なアーカイブなんです。
(中略)
「母語のアーカイブを守るのはわれわれ全員の仕事だ」ということです。「難しい日本語なんか教えないで、語彙2000語くらいの『ベーシック日本語』だけ義務教育で教えて、それより難しい話は英語でやるということでいいんじゃないの」。
というようなことを考えているワルモノが国語教育に文学は不要とか考えているのでしょうが、あのですね、創造は基本母語でしか行えないのです。母語を持たない集団、あるいは母語の語彙が限られている集団は文化的創造はできないのです。
なるほど。僕は深く納得して反省すると同時に、とても楽しい気持ちになった。知らないことを知る、わからなかった考えがわかる、どうして古文や漢文をやるのかわかる。これが学問の喜びだ。
受験のために勉強するわけじゃない。いい学歴を履歴書に書くために受験するわけじゃない。いい会社で働くために生きてるわけじゃない。働くために生きてるわけじゃないわけ。逆なの。僕たちは人間として生きてるの。だから働く。働くために「考え方」や「知識」を身につける。これが本来の学問で、それを判定するのが試験なわけだ。
いまこの根底が崩れようとしている。国立大学を民営化しようとしてる。民間企業って次の期の数字を出すのが目標だ。でも国を動かすとか人を育てるとかいうことは、何年何十年のスパンの事業なんだ。だからそれに向けての戦略は違う。例えば3学期だけの成績を上げるなら、テストを簡単にすればいい。でもそれにはなんの意味もない。これは大げさな例えだけど、大雑把に国がそういうことをやろうとしてる。
補助金の削減もそうだ。すぐに産業に使えそうな分野にはお金を配るけど、例えば哲学科とかにはほとんどつかない。すごく視野が狭くて近視なの。でも哲学は世界や宇宙を解ろうとする人間の叡智の積み重ねなわけ。そんななかで教育を受ける。受験に関係ない美術とかどうでもいいと思うかもしれない。でも高校は予備校じゃない。15歳から18歳の青少年に必要な知性と思考と「感性」を育てなきゃいけない。
いまアイドルになりたい子がすごく多いでしょう。人間の表現の可能性は無限にあるのに、アイドルしか知らされてないからアイドルになりたい。あなたの才能が生きるのはもしかしたら現代美術かもしれない、暗黒舞踏かもしれない、アフリカンドラムかもしれない。
で、アイドルになったとしよう。有名グループでセンター張れれば卒業後も仕事に困らないよ。でも48グループや坂道グループの初期の大多数のメンバーは、義務教育もちゃんと受けてない「学習障害」で、何もできないまま30歳になって人生詰んでるわけだ。もうそこからは運でしかない。AVに出て子供できちゃったり、ビルから飛び降りるかもしれない。
そういう時に、考える力と視野の広さをつけるために勉強する。でだよ、僕は慶應義塾大学って世にいう一流大学を出た。僕も周りも頭がいいかっていうとそんなことはない。もちろん賢い人はいるよ。でも大多数は「受験」が上手かっただけなの。で、受験が終わったら覚えたことをすっかり忘れちゃう。当時はいまより学歴社会だったし、合格しちゃえばあとは楽勝の人生が保証されてて、遊び呆けてる人が多かった。
でで、彼らはそれがいまも続いてるの。世の中の価値観がどう変わっていったか気にせず、昭和の感覚でパワハラしてセクハラして、カラオケにいけばバブル時代のヒット曲を歌ってる。僕が最近の曲を歌うと「何がいいかわからん」「歌詞が悪い」。昭和に流行ってた歌は「頑張れよ」とか、「恋人が死んじゃって悲しい」とかIQ3くらいなの。恋人が死ぬ歌を聞けば誰でも悲しくなる。それを「感動」と勘違いする人も出てくる。だから作詞家としては登場人物を殺すのは狡いやり方、禁じ手なの。
入学しても卒業しても、死ぬまで勉強です。昭和みたいにパワハラやセクハラや歩きタバコをしちゃいけない、価値観は時代と共にどんどん変わっていく、社会も変わってくし学説も変わっていく。その変化に賛成だったら乗っていく。反対だったら考える。いま世界がどんどん戦争に近づいてる。それは間違いだと僕は思う。だからできることを考える。同世代でちゃんとしてる人は偏差値が高い人じゃない、考える努力を続けた人だ。
そこで出てくるのがタブーとされてる政治の話だ。ほとんどの国の若者は、未来を考えて政治の議論をする。TikTokみてSNSがバズってセックスしてればいいやって若者は、おおよそ日本くらいしかいない。日本の若者も、1970年代頃までは政治を語り合っていたと聞く。当時は学生運動が盛んで、大学に火炎瓶を持ち込んだり、教授陣と言い争ったりした。
僕が大学に入ったのは1990年。郊外の新設キャンパスだったのに寮がない理由を聞いたら、学生運動の巣窟になるからだと。20年経っても大学は学生運動を恐れて、人畜無害で無難な学生を育てようとしていた。だから学生運動以降の若者は政治を語らないし、そもそも知らない。タブーにされちゃったんだ。1990年はバブル時代の絶頂期で、知性や感性をないがしろにして、酒飲んで踊ってセックスしてればいいって価値観だった。いまもそうなのかも知れないね。
もともと日本人には、政治のことはお上に任せとけ、長い物には巻かれろ、という他力本願で周りに叩かれないように叩かれないように無難に生きる陰湿な特性があった。そのために、大学の学生運動恐怖症はますます「普通でみんなと同じ」人を量産し、そうでない人を叩く若者にしたてあげたと僕は思っている。
さらによく言われることは、日本の民主主義はよその国に与えられたものだから、その大切さをわかってない、ということ。多くの国では生活に苦しんで、国民が自分たちで自分たちのことを決める権利を手に入れた。日本人にとって民主主義は、よくわからないものを貰ったけどおっかねえから触らねえでおこうってものだ。南アフリカでは1991年まで人種差別があって、黒人の給料が白人の何十分の1だったり、黒人居住地域に強制移住させられたりそこから出さないようにした。1994年に黒人に参政権が与えられた時は、たった1票投票するために何キロもの行列ができた。
民主主義って、1票ってそれくらい重いの。例えば関西人は給料は関東人の何十分の一、生まれた土地を出ちゃいけないし、よその人と恋愛しちゃいけない、関西の政治や法律や処罰は関東人が暴力で行うって未来がきたら、大暴動が起きて何十年もかけて権利を勝ち取って、みんな関西人の総理大臣を世に出すために、何キロもならんでたった1票を投票するだろう。
1票じゃ何も変わらないよって思う人が多いかもしれない。変わるんだこれが。投票率と国民の幸福度は比例する。投票率86%のデンマークでは、7年連続で国民が世界1幸せだと計算されてる。日本の投票率は131位。たまたま先代のお金がちょっと残ってるんで幸福度は51位。あなたはTikTokみてSNSがバズってセックスしてれば幸せだろうか。バイト大変じゃない? めちゃくちゃ働いて稼いだお金も奨学金の返済に充てて。
世界には親が学費も飲み代もデート代も出すのが当たり前の国がたくさんある。大学を卒業しても何年か世界を旅するのが普通の国もたくさんある。親も定時で帰ってきて、好き勝手に友達とのんびり遊んでる。社会勉強のためにどっかの国で働いてみるってことはよくある。キッザニアで何十万も給料もらえる感じだろうか。
この日本も、国や自治体を動かすのに莫大なお金が回ってる。こないだの衆院選で、あなたが1票投票したら国のお金の使い方が220万円ぶん変わったのに。国のお金って税金だよ。投票行かなかった人は、誰だか知らない人に220万ポンと渡して、これで武器買っていいよ、政治家が飲み会やって、とても口では言えない遊びをしてもいいよ、なんなら犯罪に使ってもいいよって言ってるわけだ。
誰に投票すればいいかわかんないって人も多いかもしれない。ポスターで顔見て初めて名前知って、ハイーって言われても困るよね。人は人をだんだん覚えて知ってく。こいつは仲間になれそうか、友達になれそうか。政治家についても、こいつに任せれば自分を220万円ぶん楽して楽しく生きれるようにしてくれそうかわかってくる。ニュースを見れば、悪いことをしたやつもわかってくる。そいつじゃない、でもそいつより勝つかも知れない人の名前を書く。
で、選挙に行くとちょっと満足感がある。例えば、みんなでファッション誌を開いて、付き合うならどの人?せーので指さすのと似たような楽しさがある。で、大勢がそれに参加すれば、知らないうちにバイトが楽になってるし、気づいたらモテモテウハウハになってる。最後はちょっと盛った。誰に入れたら美味しいかを話し合うのが政治の議論なんです。
ここからは僕の考え方です。
世の中に絶対はないけど、いまの憲法になってこいつだけは絶対いかんって人が1人いた。安倍晋三ですね。安倍晋三は暗殺された。暗殺も絶対にいけません。あたりまえだ。特に安倍晋三は、やらかしたあれこれを法律で裁いて、まあそれで死刑になるだろうからそういう死に方をさせるべきだった。法律が機能してる国ならね。
安倍晋三は国民が政治に興味がないのをいいことに、人の金でできる考えつく悪いことをぜんぶやった。とても考えつかない悪いこともぜんぶやった。やっただろう証拠を見せろと言われると、真っ黒に塗りつぶした紙をペロッと出した。そして報道を統制した。メディアのトップに取り入って会食会をして、悪事を叩かれないようにした。民主党政権の時代に日本の報道の自由度は世界12位だった。安倍時代に70位にまで落ちた。じゃあネットは正しいかというと、ネットが悪意やデマに溢れてることはわかるよね。考えるヒントをくれるのは、学問です。
で、誰でもなんかやらかすと検察が動いて裁判になる。この検察のトップも安倍の一味で、やらかすたびにこいつに揉み消させてたんだけど、定年になっちゃったのね。で、検察の定年を伸ばすことまでやった。安倍が暗殺された時、日本のお父さん的存在だったから悲しいって若者がたくさんいてびっくりした。逆なの。悪いことをしても揉み消して、叩かれても居座り続けて長期政権になっただけなの。日本という国を根底から壊した人です。なんとかそこから立ち直らなくちゃいけないフェーズです。
もうひとつ。国に借金があるからみんな苦しい生活に耐えてくれ、は嘘です。破綻はしません。お金を発行する権利がある国は、お金がなかったら発行すればいい。ただ、無闇に発行するとお金の価値がなくなっちゃうから調整してるの。ギリシャが財政破綻した。これはギリシャはユーロっていうヨーロッパ共通の通貨を使ってて、その中のひとつの国が勝手にお金を発行する権利がなかったからなの。これも学校で勉強してるはず。
例えば消費税をなくせって提案すると「財源が」って言うくせに、軍事費が膨大になっても「財源が」って誰も言わないのは「お金に困ってないから」。出回ってないお金は議員と官僚と、自民党に献金してる大企業のお偉いさんの懐にある。企業の税率はいま異常に低い。大企業のお偉いさんたちは、莫大なお金を持ってるのに給料をあげようとしない。それを正して給料もちゃんと払わせて、普通の人がお金に困らないようにしなきゃいけない。バイト楽になるよ。しなくていいかも知れない。
消費税はいらないと思ってる。税金の集め方は、国の事情によっていろいろ組み合わせてる。でもお金持ちや贅沢品からはたくさん、生活に困ってる人や必需品からはちょっと取るのが基本。消費税は大金持ちからもホームレスからも同じだけ取る。よそにも消費税を取る国がたくさんある。ほとんどは公平に役立つ福祉に使われてる。日本にはもともと消費税ってなかった。1989年に「福祉に使います」って嘘ついて3%の消費税を取って、以来税率は上がり続けてる。
いまの日本は大金持ちに美味しい仕組みになってる。普通の人が選挙行かないから。海外は日本以上の物価高だけど、それ以上に給料も上がってるから苦しくないの。
それから戦争をしたがる政治家、差別を煽る政治家はやめましょうね。自分の国の無実の人が死んでいくのも、よその国の無実の人を殺しにいくのもやめましょう。なんで戦争をしたい政治家がいるかって、それで儲かる人と仲良しなんだ。武器を作る人はもちろん、戦争で幅広い分野にお金が回る。日本が第二次大戦後に急成長した理由のひとつは、朝鮮半島で戦争があったからなの。戦争に売るものをいっぱい作って日本は復興した部分がある。朝鮮特需っていう。でも無実の人を殺したらあかん。
差別をしたがる政治家も同じですね。ネットに◯◯人がこんな酷いことをした、みたいな書き込みがあったりする。それは酷いことをした人がたまたま◯◯人だっただけで、◯◯人がみんな酷いわけがない。これも誰か敵を捏造して戦争したい人とも関わってくるし、人間って誰かを憎んでしまう悲しい生き物なんだと思う。で、同じ敵を憎んでいる人同士「あいつらは酷い」って言いあってると、快感になってしまう。でで、どんどんエスカレートしちゃう。
よく、平和な考え方をする人を「お花畑」って揶揄するでしょう。僕は戦場に行きたいかお花畑に行きたいかっていったら、戦場で死ぬかもよりお花畑でのんびりお花を見ていたい。世界中の人がそうだといいなと思ってる。
いろいろ話が飛んだけど、人がみんなハッピーになったらよくない? そのために勉強や学問や知的好奇心がある。選挙にも行こうぜ。大人になってからの勉強は楽しいし、投票も楽しいよ。