海外ルーツの親からみた、日本の職場、子育て、学校のルール
やさしい日本語推進連絡会の先輩から紹介されて
「1%の隣人たち」を読んだ。
これは、兵庫県の豊岡市を舞台にした、外国人住民のお話だ。
1%というのは、住民に占める在留外国人の比率。
同じ兵庫県下でありながら、私が住んでいる区では2%を超えているので、「少ないな!」と思ったが、全国1738自治体の中央値は1.1%と書いてあった。大都市圏や中部が高く、10%を超えるエリアもあるようなので、神戸市は後者に近づいているパターンなのかもしれない。
私の勝手なイメージでは、
マイノリティ向けの対策ほど劣後する というのが官の原則だと思っていたので、1%しかない豊岡での取り組みが進んでいることが、ちょっと新鮮な驚きだった。
しかも、技能実習生を受け入れたことにより、「職場全体が明るくなった」「近隣の住民にも好かれている」というポジティブな評価が見られたり、言われなくてもわかる・言われなくても動くといった職人気質の古いコミュニケーションが改善されたりといった変化がもたらされているようで、前半はとても明るい気分で読み進めることができた。
それから、「技能」ってどんなことなのか、具体的なイメージが湧いていなかったんだが、福祉・介護、調理などのほか、スポーツ指導(コーチ)のようなケースもあると知って、仕事のバリエーションもいろいろあるんだなと思った。また、働く場所として日本を選んだ人だけでなく、結婚相手が日本にルーツを持っていたから来日して、結果的にこちらで出来る仕事をみつけるというパターンも少なくないといった現状も見えてきた。
もちろん、100%ハッピーなエピソードばかりではない。
日本の受け入れ態勢が、台湾や韓国に比べて劣ると感じている技能実習生もいるようだし、夢と希望を抱いてやってきた人が、借金を返さないどころが、逆に増やした状態で帰国する例も・・・。
仕事が大変なうえに、日常生活でも、文書や手紙を読んだり、その内容を理解して書類を作成したりするのが、ほんとうに大変そう(日本語が母語の私でも、お役所関係の書類はよくわからないことがあるもんなー)。
豊中市役所は、かなり頑張って対応しているみたいだが、まだまだマンパワーは不足しているみたいだ。
足りない部分を何で補うのか?
それが、友人との共同生活だと書いてあり、ちょっと羨ましく思った。
シェアルームをしている人が多いが、その中にひとりでも日本語が得意な人がいれば、ほかのメンバーを助けることができる。
また、職場のみんなで一緒に買い物に出かけたり、地域のお祭りに参加するなどして、情報や助けを得られやすい環境を整えていっているのだ。
これは、人口の多い都市圏より、むしろ「ちょっと田舎町」のほうが機能しやすい話のような気がする。
(私が住んでいる場所は、都会でもなく田舎でもなく、中途半端かも)
また、学校や職場でも、翻訳ツールやwi-fiがあれば、たいていのことを自力で調べて解決できそうだ。
ご近所さんから、「魚醤のにおいがきつい」とクレームがつくといったこともあるようだが、
若くて元気のいい若者たち
として、地域や職場に溶け込んでいる人が多いようだ。
幼稚園や小中学校でも、翻訳ツールを導入しながら、授業や保護者とのコミュニケーションを支援する例が増えているとのこと。
ただし、言葉を翻訳しただけでは理解できない、文化・風習の違いも残っている。
・日本では妊娠中の体重管理が厳しい。中国では「二人分食べなさい」とすすめられるし、ベトナムも「大きく生んで、大きく育てる」という考え方。
・赤ちゃんを母乳で育てる点では、フィリピン、中国、ベトナムなども共通だが「母乳のほうがよい」といったプレッシャーはない
・産後すぐにシャワーを浴びてはいけないなど、禁忌がある国がある。
・ネパールの赤ちゃんは寒がりなので、お風呂は毎日いれない。
・ベトナムでは、日本のように赤ちゃんに重ね着をさせない。
・「お茶を持たせるように」と指示があったが、何のお茶なのか不明💦
などなど、日本人なら質問する必要のないことに、いろいろ戸惑ってしまうので、とても大変そうだ。
学校教育については、日本の「平等主義」がピンとこないところもあるらしい。とにかく、同じ年齢の子ども同士で一緒に遊ぶことが重視され、どんなに勉強ができなくても、ある程度出席していれば学年が上がっていくというシステムは、果たして親切なのか、不親切なのか・・・。
平等といっても、経済的に豊かな家庭の子どもと、少し恵まれない家庭の子どもとでは、髪の毛を結ぶゴムさけ違う といった指摘もあった。
観光地での労働力として増えていった外国人と、うまく共生している豊岡市の動きは、「豊岡モデル」として注目されているようだ。
が、これが1%から3%、5%、10%と増えていっても、うまくいくかどうかは、わからない。また、そもそもの住民同士のコミュニケーションの在り方が、郊外とは違っている都市圏での好事例も知りたいところ。
「移民」で失敗した国もある!
と、モーレツに反対する人もいるようだが、これはたぶん、外国人受け入れだけの話ではない と私は感じている。
別のエントリにも書いたけど、異文化理解をベースにした、ごちゃまぜでも楽しく生きられる地域づくり のヒントを、多文化共生というサンプルから学んでいる イマココ! ではないだろうか。
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