チェコのガラスボタン工房へ
旅先でついつい探してしまうもの。それは「手作りのもの」。
できれば、どこの国で作ったのかわからない、観光客のお土産品をつかまされたくない。その土地の人がつくって、その土地の人が使うために作られたものを見たい。体験したい。手に入れたい。それが旅人の欲望というものではありませんか。
Made in チェコの手作り品。
その代表的なもののひとつが『ガラスボタン』だ。
聞けば、チェコのガラスボタンは、『リンゴの木のある土地』という名前の都市で手作りされているらしい。
ん?なんだか聞き捨てならないほど、いい素敵な響きだなぁ...。もうちょっと詳しく聞かせてもらえます?
でもそのまえに、ガラスボタンって、どういうもの?見たことないなぁっていう方に、ちらりとお見せしましょう。
……これ、実は制作途中のものなんですけどね。しかも引きの写真すぎてよく見えないって?まぁまぁ。落ち着いてくださいよ。
じゃあ、ともにチェコのガラスボタンに出会う旅に出かけましょう。『リンゴの木のある土地』へと。
『リンゴの木のある土地』=ヤブロネツ・ナド・ニソウへ
リンゴの木のなる土地= チェコ語で「ヤブロネツ・ナド・ニソウ」。ちょっと長い名前だが、ここはプラハからバスで1時間ほどの小さな都市。
ドイツとポーランドとチェコの国境の近くにある。
プラハからピューっと直通バスでくる手段もあれば、リベレツの駅からがたんごとんとトラムにゆったり揺られてくるのも手。
ヤブロネツに降り立ったのは肌寒くも暖かい10月だった。
ヤブロネツ・ナド・ニソウには、コスチュームジュエリーやガラスの生産や輸出に関わる会社が現在も大小含め数十社残っている。ガラス材、ビーズやボタン、実用やアートガラスや照明器具までと、世界でも類を見ないほどに幅広い生産に関わる地域だ。
今回、ガラスボタンの輸出に携わるアドルフさんの紹介で、100年以上ガラスボタンの制作を続けている工房を訪れました。アドルフさんは御歳70歳。足腰しゃっきりで、わ、若々し〜!!
ガラスボタン工房は70代の双子に支えられている
そしてこちらの工房の職人さん、なんと現在73才の双子さん(!)。
談笑しながらも、ガラス棒を溶かし、ひとつひとつ確実に金具をつけて型を取っていく。
職人さんとエージェントのアドルフさん、70代のみなさんがそろってワハハと笑いながら作業している。明るくて近い関係性がこの文化をずっと守ってきたのだろうなぁ。
鉄の型の種類は果てしなくあり、中には300年以上前のものもある。
型をぬいた状態のものから、周囲の余分な部分も手作業で落とす。
そして整形までされたものがこちら。現在はアクセサリー用に、あえてボタン用の金具をつけないものの需要もあるそう。
もう、これだけでも十分うつくしい…よぉ…。
ガラスボタンの繊細な絵付け
ガラスの型取り工房からさらに数分のドライブを経て、今度は絵付けの工房へ。こちらは女性の職人2名の工房。ベテランの手作業は本当に無駄がなくて、細かい。
誰かの作業場、工房ってどうしてこんなに萌えるのでしょうか。使う道具はその人のこだわりとか、歴史が詰まっているからなのかな。マグカップまでかわいいな。
この日は、学生のインターンさんもきてました。
アドルフさんはここでも賑やかにおしゃべりしています。仕事の話をしているのか、ご近所の話でもしているのか。こういう会話を本当は聞いてみたいよね。
美しきガラスボタン台帳はもはや美術館
ガラスボタンの図案・作例は果てしなく存在し、台帳に留めて保管されています。絵付け工房にもたくさんありました。
そしてまた数分のドライブを経て、アドルフさんの事務所へ。
ガラスボタンの台帳をいろいろ引っ張り出して発掘していると…本当に本当に、果てしない美しさ。ずっとみ続けてしまいます。
透明なガラスを型取りしてそれに絵付けをするからこそ、幅広く繊細な表現ができるんだなぁ…とため息…
ガラス自体に色があるものもあれば、絵付けも、金・銀以外の色を裏面に着色することによってガラス越しにふんわり色が透けて見えるものもある。これはガラスボタンならではの立体感だなぁ。
本当に果てしなく種類がある。ひとつひとつ、誰かの手で作られてきて、いろんな人の手に渡ったのだなぁとしみじみする。地元の人にとっては本当に当たり前にあったもので、おもちゃのように遊んでいたのだとNHKの【世界はほしいモノにあふれてる】でアンティークショップの人が言っていた。
「そこら中にあるモノだから、使ったら捨てちゃう人も多かったの。でも私は取っておいたの。宝物だったから」
ちなみにトンボの絵柄はアメリカの方に人気があるそうで、他にもたくさん種類がある。
キラキラ、エネルギーに溢れるものをみてると、ニヤニヤが止まりません。
実は、ヤブロネツに到着したときに、バスに携帯電話を置いてくるというアホすぎる失敗を犯し、アドルフさんには本当にご迷惑をおかけしたのです...。え、なんでこんなにアホなの...?
どこにおいたかは明らかだったけれど、もう携帯は戻ってこないと思って凹んでいたら、アドルフさんは、「君はこれで人生が変わったね。これでもう日本に帰らずにチェコにいなきゃいけない。チェコで結婚してチェコに暮らさなきゃいけないということだね!ワハハ!」と笑い飛ばしてくれた。いやもう明るいアドルフさんに、本当に、もうヤブロネツに住もうかなと錯覚するくらい気持ちが救われたのですが、その後奇跡的に携帯は無事に戻ってきて、私も日本に帰ってきてしまったのでした。(笑)
とにかくビーズ!ガラス!ジュエリーが欲しい
手芸や工芸が好きな人もそうじゃない人も、ヤブロネツにきたならばとにかくガラス!ビーズ!ジュエリー!
まずはインフォメーションセンターで周辺のお店のMAPをゲット。
ガラスビーズ&コスチュームジュエリー関連のお見せだけでかなりの数!
1日じゃまわりきれないからあたりをつけていくしかないですね。
お店には、美しきビーズ達が夢のようにじゃらんじゃらんと。ビーズのみならず、出来上がっているアクセサリーもたくさん。これぞMade in チェコ!のハンドメイド品たち。旅で手に入れたいものって、これこれ。
この子は、どうやらお店の店員さんの手作りだという…。愛らしすぎるじゃないですか…。
はい、私はといえば、「仕入れなの?」っていうくらい大量に購入しました。
House of Beads and Jewellery
Nádražní 731
月ー金 9:00-17:00 土 9:00-13:00
膨大なコレクションを抱える「ガラスと宝飾品の博物館」
インフォメーションセンターからほど近くにある、チェコの中で唯一、ガラスと宝飾品に特化した博物館もいくべきところ。チェコガラス七百年の歴史をカバーしつつ、現代的なガラス作品まで展示した、世界中でも最大級の宝飾品コレクションを誇り、めちゃくちゃ見応えがあります。
ガラスボタンももちろん大量に展示。とにかく数がすごすぎる…!!
ガラスボタンの形・模様をつくる鉄の型の展示も。焼印みたいだ。(はんこ作家の私は萌えて鼻血が出そうです)
ヤブロネツの大きな産業である、コスチュームジュエリーのコーナーでは、ガラスに止まらず、金属、木材、プラスチックなど流行や時代の流れに応じた変化も辿れて面白い。
アートグラス・オブジェのコーナーもあり、とにかく多方面に楽しい。じっくり見ると、平気で3時間くらい経ってしまうほどに、膨大なコレクション。
Muzeum skla a bižuterie v Jablonci nad Nisou
U Muzea 398/4, 466 01 Jablonec nad Nisou
火ー日曜 9:00-17:00(7・8月のみ 月も営業)
入場料 大人80コルナ (=約400円)
とにかく「型」に萌えてしまう私。
ヤブロネツ・ナド・ニソウへの行き方
ヤブロネツを訪れるときは、なるべく土日を避けたほうがよいかと。なぜなら、ビーズ店などのお店が週末は閉まっていたり、営業時間が限られている場合が多いからです。(*ただし、ガラスと宝飾品の博物館は月曜休)
お店も夕方には閉まってしまうところが多いので、早い時間からいくことをおすすめします。なんと、7時から営業しているお店もあるみたい。
プラハ[Černý Most]駅から直行バスで「Jablonec n.Nisou,,aut.nádr.」へ。
チェコの便利な乗り換え案内アプリ「IDOS.cz」でバスの予約もできちゃいます。行き先を入力して出てきた画面の右上をクリックして、Add/edit passengersで名前を入力して「Purchase tickets」へ進むと、予約ができます。
リベレツ宿泊もおすすめ [GRAND HOTEL IMPERIAL]
ヤブロネツ・ナド・ニソウ自体は小さな都市ではありますが、あまりに充実しているので好きな人にとっては丸一日いても時間が足りない!と感じるかもしれません。そういう方は近隣のリベレツへの宿泊をお勧めします。
私が泊まったのは[GRAND HOTEL IMPERIAL]。
もうロビーに入った瞬間素敵。このホテルはそれぞれの部屋が異なる建築家・コンセプトで作られている。私の部屋のコンセプトは「RAW」と書いてあった。生とか原という意味。だからコルクなのかな?
秘密基地みたいな空間が楽しい…!穴が空いてるところは指を入れて開くようなクローゼットになっている。
シャンプーコンディショナーボディソープなどのアメニティも完備で、バスソルトまであって感激。ジャグジーにもなるし。あとトイレに立派なウォッシュレットがついていて驚いた。チェコで見たの初めてだったかも…。
朝食も充実しすぎていてテンションが爆上がり。いろんな種類をちょっとずつ食べたい…という私の欲望を余さず満たしてくれました。
今回いくつか泊まったホテルの中から比べても、モダンで、日本人に快適な要素ばかりのホテルで好きでした。ホテルのすぐ前から出るトラムに乗ればヤブロネツまでまっすぐいけちゃうのも魅力の一つです。
なんとサイトの予約フォーム、途中から日本語へ切り替えも可能でした。(正直チェコではちょっと珍しいくらい)至れり尽くせりなホテルです。フロントの方も親切でした。
PYTLOUN GRAND HOTEL IMPERIAL
1. máje 757/29
460 07 Liberec III-Jeřáb
リベレツの街についてはまた別の記事で書きます。
お土産を買いに、という理由だけでもヤブロネツに来る価値は十分にある。
※情報・通貨換算はすべて2019年10月時点のものです。
今回の渡航費・一部宿泊費はチェコ政府観光局に負担していただいております。