ええねん②
(ええねん①の続きだよん)
またある日は ウルフルズ の『ええねん』が取り上げられた。
『ええねん』といえば、「〇〇でもええねん♩〇〇でもええねん♩」と、ダメな自分をも温かく包み込んでくれるような関西弁の歌詞とトータス松本の快活な歌声が印象的な自己肯定感爆上げソングだ。
その日はたしか12月に入った頃だったと思う。
すでに推薦入試などで悔しい思いをしている生徒もいれば、センター試験に向けて追い込みをかける生徒もいた。すでに進路が決まっており、受験モードの中で肩身の狭い思いをしている生徒もいた。
一言で言えば、教室内は常にピリピリしていた。
教師はそんな私たちを見かねて、少しでも元気を出してもらいたいと思ったのかもしれない。
それぞれの境遇で複雑な想いを抱える生徒を、トータス松本のようにまとめて包み込みたかったのかもしれない。
「全員で順番に、自分が ええねん と思うことを言っていこう。」と言った。
クラスメイトは戸惑いながらも、それぞれの ええねん を発表していった。
「笑ってたらええねん。」
「うまくいかんでもええねん。」
「泣いてもええねん。」
当初の戸惑いも薄れ、それまでピリピリしていた教室の空気が徐々に明るくなっていくのが感じ取れた。
そしてついにきた私の番だ。
私も2月に大学受験を控えていた。
模試の結果に一喜一憂するのも、毎日の自習室通いも、英単語帳を見ながら通学していると「二宮金次郎ですねw」と後輩にイジられるのも、何もかもうんざりだった。
そして言ってやった。
「勉強なんか、せんでも、ええねん!」
みんなが笑ってくれると思った。
期待を胸に周囲を見渡した。
誰も笑っていなかった。
完全にやっちまっていた。
教師は「チャウチャウ、ソウイウコトジャナイ(^_^;)」と言いたげな顔をしていた。
クラスメイトからの「いや勉強は流石にせなあかんやろ(^_^;)」の視線が刺さって痛かった。
何もかもを包み込む「ええねん♩」でも庇いきれないものがあると知った18の冬だった。
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