怖い話……を面白く。
私は、霊については否定的である。
現在の科学では証明出来ない事はあるとは思っているけれども、それが霊の仕業だとは思ってない。
「怖い話」が怖く無いわけでは無い。
お化け屋敷なんか入りたくも無いし、夜の病院とかトンネルも嫌だ。
でも、私が怖い話を見たり聴いたりすると、つい余計なツッコミを入れてしまって、怖い話が面白い話とか珍妙な話になってしまう。
例えば、殺された誰かが恨みを持って成仏できずにその場に留まってる…みたいな怖い話の場合。
殺した相手を恨んで、化けて出るとか、その人に対して攻撃的な事をするとか、それならまだわかる。
でも、怖い話の被害者は、大抵不特定多数だ。
死んだ人とは縁もゆかりも無い場合がほとんど。
それなのに、何故か攻撃される。
なんなの?死んだらバーサーカーになるの?
そんな感じで、ついつい「怖い話」にツッコミを入れてしまう。
純粋に「怖い話」を楽しめない。
これは、確実に母親の所為だ。
私の母は、いわゆる霊を呼び寄せる体質(霊媒体質)である。
今まで、自称「見える人」、しかも複数の人から「あんたはヤバい」と言われた経験を持つ。
「見える人」曰く、通り道というか、なんとかしてくれそうみたいな雰囲気があるのか、霊が寄ってくるらしい。
そんな母は、幼い頃から数多くの心霊体験をしている。
母が子供の頃に、あるマンションに引っ越しした。引っ越し後間も無く、夜中に金縛りで目が覚めたらしい。
「苦しい!」と思ったら、お経が聞こえてきた。
最初はなんとか聞こえる程度だったが、徐々に大きくなっていき、部屋にあった仏壇の扉がスーッと開いた。
すると、大きな鐘の音が遠くからゴォーンと聞こえて来て、再びその鐘の音も段々と大きくなっていく。
あまりの怖さに、母の脳は自身を守ろうとしたのか…その時、母は
「こんなコンサート嫌だ!」
と、出ない声で叫んだらしい。
すると、徐々に音が小さくなっていき、仏壇の扉がスーッと閉まり、金縛りも解けていった。
想像したら、実にシュールだ。
こんな感じで、母は数多く経験した心霊現象を、私や妹に何度も言い聞かせた。
途中までは怖い話なんだけれども、どうしても最後の方では笑える話になっている。
ちなみに、母は、全く笑わせる気なんて無い。
むしろ「何で笑うのよ!怖かったんやで!」と怒る。
車で山道を走っている時、一本道なのに何故か徐々に道なき道になっていった話とか
なんとなく手だけが浮いてるように見えた時の話とか
受験勉強中にうたた寝してたら、小さいオッサンに「おい、起きろよ」と起こされた話とか
母が体験した怖い話は、上げたらキリが無い。
でも、全部どこか面白い。
母は、笑わせる気が無いのに、なんか面白い。
自称「除霊が出来る」…という方に相談に行った時も、「あんたは修行したら見えるようになるし、とんでもない除霊師になれる」と言われたらしいが
「そんなの見たく無い!」
と言って、相談する前に帰ってきちゃったとか。
一方、息子の私は、その毛の類の経験は無い。
不思議体験といえば、先日書いた雪山の一件くらいだ。
運がいいのか、そんなもんなのか、恐怖体験は一切ない。
むしろ『タイミングの神に見守られてると思えるくらい、タイミングいいわー』と思える程である。
私はどなたかの霊による守護を受けているのか、タイミングの神に愛されているのか、ただの偶然なのか。
もし私が守護を受けているんだとしたら、母は全く受けてなさそうである(笑)