回転寿司ラヴ
回転寿司にラヴなのは私ではなくて、レーン越しのお向かいにあるテーブル席におられたマダムお二人のこと。ちなみに、私は「おばさん」という単語を必要に応じて「マダム」と読んだり表記したりすることにしている。
先日、思い立ってお昼に回転寿司に行った時のこと。開店時間ちょうどだがすでに数名の客がいるんだからやっぱり人気なんだと伺えた。タッチパネルが使えたり、席まで専用レーンで寿司の皿が運ばれてきたり、かなり快適ではないか。久しぶりの回転寿司だったので、浦島太郎になっていたのは仕方がないことにする。
寿司自体も、全体的に思ったよりも美味しかった。いくつか期待を越えないネタはあったものの、コスパは抜群だしたまに豪遊するには良い場所だと思う。今度は好きなネタを食べたいだけ繰り返し頼んでみようかな、なんて考えるのもまたおかしくおいしい。
さて、本題のマダム二人組だが、どうやらこちらの回転寿司の常連かつ熱心なファンであるらしかった。賑やかに注文したら、「じゃあ、おつかれ〜」「あ〜、おいし〜」と飲み物を飲んでいる様子が聞こえた。これはビールのやつだろ。昼間から回転寿司で乾杯…ありだな。と思っていた。しかし、「お茶おいしーわー」とのこと。お茶で盛り上がれるって、どれだけ楽しみにいて来られたんだろうかお二人は。
そして、寿司を召し上がる。「おいしいー」「美味しいねー」「美味しいわ〜」「これお茶碗一杯食べたい」「丼でいけるわ」美味しいが止まらない。
サイドメニューも召し上がる。「唐揚げ美味しい」「やっぱうまいわ、頼んでよかったね」「バターアイスだって」「これすごい美味しいの、絶対食べてほしい」
店員さんがやってきてインカムで飛ばす。「デザートのバターアイスが、バターアイスじゃないんじゃないかって言う…普通のアイスじゃないかってことらしいんですけど…」
そしてマダムは語る。「この前豆乳担々ラーメン頼んだら、うどんだったのよ」怒ってるわけではなくて、ただ言いたいだけらしい。
店員さんが戻ってくる。「大変失礼致しましたー、こちらがバターアイスですー。すみませんでしたー ー」マダムたちは余裕たっぷり笑って受け取っていた。おそらく凡ミスだろうが、アイスの味まで見抜くとは。同じ麺でも妥協を許さない一途な姿勢。恐るべし、マダムの回転寿司リピート率。
こんなやり取りが聞こえて来る中、私は10皿のお寿司を頂いてマダムより先に退出した。しかしまあ、あれだけ美味しい美味しい、と聞き続けたのは、意外にもなかなかに気分が良かった。今度外食する時には近くにマダム達はいないだろうから、美味しいものは自分でちゃんと「美味しいなぁ」と思って、より美味しく頂きたいと思う。