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サイケデリックスの作用機序(メタ分析から)

近年、サイケデリック物質(幻覚剤)がうつ病や依存症などの神経精神疾患の治療に有効である可能性が注目されています。しかし、その作用機序はまだ完全には解明されていません。この論文では、サイケデリック物質の効果を、主観的体験(現象学)、神経画像、分子薬理学の3つの階層的な分析レベルからシステマティックにレビューし、メタ分析を行っています。

主観的体験(現象学)

まず、現象学の分析では、LSDとシロシビンの主観的体験を比較しました。特に、中用量と高用量のLSDは、シロシビンよりも「幻覚的再構築(visionary restructuralisation)」のスコアが有意に高く、視覚的な幻覚の質と強度が強いことが示されました。また、中用量では「海洋的無限感(oceanic boundlessness)」のスコアもLSDが高く、相互接続性の感覚が強いことがわかりました。

神経画像

神経画像の分析では、サイケデリック物質が脳のネットワーク間の機能的接続性(FC)を強化し、ネットワーク内の接続性を低下させる傾向があることが明らかになりました。特に、LSDは視覚ネットワークと他のネットワーク間の接続性を強く増加させ、一方でアヤワスカやDMTは主に前頭頭頂ネットワーク(FPN)とデフォルトモードネットワーク(DMN)の間の接続性を増加させることがわかりました。

分子薬理学

薬理学の分析では、LSD、DMT、シロシビンの5-HT2A受容体に対する選択的親和性と機能的な活性を比較しました。その結果、LSDはDMTやシロシビンよりも5-HT2A受容体でのイノシトールリン酸(IP)形成を有意に増加させることがわかりました。これは、LSDが視覚的な幻覚を引き起こすメカニズムの一端を説明する可能性があります。

全体として、この研究は、サイケデリック物質の効果を多角的に分析し、その複雑な相互作用を明らかにするための重要な一歩です。今後の研究では、これらの異なる分析レベル間の非線形な関係をモデル化するためのツールの開発が期待されます。

Shinozuka, K., Jerotic, K., Mediano, P., Zhao, A. T., Preller, K. H., Carhart-Harris, R., & Kringelbach, M. L. (2024). Synergistic, multi-level understanding of psychedelics: three systematic reviews and meta-analyses of their pharmacology, neuroimaging and phenomenology. Translational Psychiatry, 14, 485. https://doi.org/10.1038/s41398-024-03187-1

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