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サイケデリックスの心理的効果 - 青年期と成人期の比較研究
メンタルヘルスの問題は世界的な課題となっており、その半数以上が青年期に発症することが知られています。近年、向精神薬の治療効果に注目が集まっていますが、特に重要な発達段階である青年期(16-24歳)における効果については、これまでほとんど研究されていませんでした。
本研究では、オンライン調査を通じて435人の青年(平均20.4歳)と654人の成人(平均36.5歳)を追跡し、自然な環境での向精神薬使用による心理的効果を比較検討しました。参加者は使用前1週間、使用後2週間と4週間の時点で評価を受け、心理的ウェルビーイングを主要評価項目として、うつ症状や不安、自尊心など複数の指標が測定されました。
研究の結果、青年グループでは向精神薬使用後に心理的ウェルビーイングが有意に改善し、Warwick-Edinburgh Mental Wellbeing Scaleで平均3.3ポイントの臨床的に意味のある改善が確認されました。この改善効果は成人グループと同程度でした。
しかし、急性期の主観的効果では重要な年齢差が見られました。青年は成人と比較してより強い自我消失体験を報告し、不安やパラノイアなどのチャレンジングな体験も顕著でした。この傾向は、青年が高用量を使用する傾向があることと関連していました。
また、Hallucinogen Persisting Perception Disorder (HPPD)関連の視覚残遺症状の報告が青年で約2倍(73.5% vs 34.2%)高かったものの、苦痛を伴うケースは両グループとも1%未満でした。
特に注目すべき発見として、自我消失体験の役割が年齢によって異なることが明らかになりました。成人では自我消失体験がウェルビーイング改善と正の相関を示したのに対し、青年ではこの関連が見られず、むしろ負の相関の傾向が観察されました。
これらの知見は、青年期における向精神薬使用にも治療的可能性があることを示唆する一方で、この年齢層特有のリスクと配慮事項があることを明らかにしています。特に、自我消失体験の異なる影響は、脳の発達段階との関連を示唆しており、臨床応用に向けては用量設定や環境設定に特別な注意が必要であることを示しています。
本研究には観察研究としての限界があるものの、青年期における向精神薬使用の効果とリスクについて重要な初期的エビデンスを提供し、今後の臨床研究の方向性に貴重な示唆を与えています。
Izmi N, Carhart-Harris RL, Kettner H. Psychological effects of psychedelics in adolescents. Front Child Adolesc Psychiatry. 2024;3:1364617. doi: 10.3389/frcha.2024.1364617