森保一監督のサッカーがつまらない本当の理由とは

・つまらない理由

なぜ森保JAPANの試合がつまらないか? それは後半追い込み型のゲームプランなのに、相手が弱すぎて全力を出さずに先行逃げ切りを決めてしまっているからである。省エネサッカーで流してプレーしているので、選手から熱量を感じられないのも当然。選手たちがパッションを見せる前に試合が終わってしまっているのだから面白いはずがないのだ。

しかし、こういった塩試合を遠慮なく選択できるからこそ森保監督は、財政規模が中位レベルのサンフレッチェ広島を率いてJ1を3度も優勝に導くことができたとも言える。


・守備的メンタリティの強みと批判

『機を見ては“意図的に相手に主導権を渡す”という類の守備的メンタリティーと、その強かさ、敵に攻めさせる勇気、ある種の狡猾さ、また、それを可能とするノウハウがあれば、今大会のイングランドは間違いなく別の結果を残せていたに違いない』

『勝つための戦術、勝ち点を得るために最も効率的で、確率の高い戦い方、そして、負けないための策。これを執拗なまでに追求する姿勢、探究心。これがいわゆる「イタリア派」と言われる監督たちの最たる特徴だ』

これらは森保監督が影響を受けたというイタリアの名将ファビオ・カペッロの言葉だ。森保監督は日本人監督には珍しく、勝利のためには世間一般には守備的で退屈と評価されるような戦術を採用してくる。それゆえ相手チームの監督や選手から否定的なコメントを浴びることもあった。

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https://web.gekisaka.jp/news/detail/?120991-125520-fl

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https://web.gekisaka.jp/news/detail/?97364-97109-fl

これらのコメントが飛び出した2012、2013シーズンは、ご存知の通りサンフレッチェ広島がJ1連覇を達成している。


・全盛期のサンフレッチェ広島のゲームプラン

森保監督の後半追い込み型省エネサッカーが極まっていたのが2015年のセカンドステージ。17試合13勝3敗1分44得点14失点を好成績をマークした。特に下位クラブをボコボコにすることとで1試合平均2.58得点というハイアベレージを記録していた。昨シーズンのJ1最多得点クラブの川崎フロンターレが1試合平均1.67得点だったのと比較すると、その凄さが分かるだろう。

この頃の広島のゲームプランは、次のようなものだ。前半はとにかくショートパスを回して相手を走らせて体力を削る。アタッカー陣はピッチ幅広くポジショニングして、極力走らずに体力を温存。攻めてこないと敵が油断しているようなら突然攻撃のスイッチを入れて奇襲を仕掛ける。

相手がボールを奪いにハイプレスを仕掛けてきた場合は、リスクを回避して前線へロングボールを放り込む。ボールを奪われると自陣深くまで引いて5-4-1で守備ブロックを作り、人海戦術で守りを固めつつ、相手の攻め疲れを誘いながらロングカウンターの機会を狙う。

千葉、森崎和、柴崎、青山という4人のゲームメーカーを擁しドウグラスというキープ力のあるシャドーがいたにも関わらず、平均ポゼッション率が50パーセントちょうどだったくらいなのだから大概である。これは2012年以降のJ1優勝クラブで最少の数値だ。

そうして試合の主導権を放棄して膠着状態に持ち込みながら体力的優位を築き上げ、後半15分頃にスーパーサブ浅野拓磨を投入して猛攻を仕掛けるのだ。浅野が繰り返しDFラインの裏へ走り込んで中盤にスペースを作り、温存した体力をフルに使って中盤の選手たち走り回って守備を撹乱する。相手チームは体力を削られてスペースができ始めた途端にコレをやられるのだからたまらない。


・最も走らない最も走るチーム

2015年の広島は、総走行距離でブービー、スプリント数でワーストというJ1屈指の走らないチームだった。だが後半30分から試合終了までの時間帯に限ると総走行距離、スプリント数、そしてゴール数もリーグトップである。

疲れて走れなくなった相手を走り回ってタコ殴りにする。そして前半にリードした場合は、最後まで省エネモードのまま浅野のスピードを活かしたロングカウンターを狙いながら試合を殺し切る。これで敵から嫌われなかったら嘘だ。


・日本代表の追撃法

森保監督は日本代表でも同様のゲームプランを採用していると思われる。ここで問題となるのは、後半15分の段階で同点もしくはビハインドの状態で敵を追撃する攻撃パターンが何かということだ。おそらく親善試合で見られたアタッカー陣の連動したオフ・ザ・ボールの動きによるダイナミズム重視の攻撃だろう。

現在の日本代表にはマークを外す動きを苦手としている選手が多い。そのため昨年の親善試合では、選手たちがタイミングを合わせて上下動することで相手守備陣を撹乱し、フリーの選手を作って攻撃していた。ハマれば堅守で鳴るウルグアイ代表すらも粉砕するほどの破壊力があった。

けれども、このダイナミズム重視の攻撃戦術は、選手に多大な運動量を要求するため、交代枠が限られる公式戦で常時採用することが難しい。実際、今大会では一度も披露されていない。あくまでも時間限定のオフェンス戦術と考えるのが妥当だろう。

今日のイラン代表戦、後半15分までは塩試合を繰り返すと見て間違いない。試合が面白くなってくるのは、それまでにリードを奪えなかった場合だけだろう。その時が訪れるまで、生暖かい目で見守るのが良いのではないかと思う。

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