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自衛隊に入るため痩せようとするデブの話 四十二日目
その男は一人鍋をした。
乾燥昆布から抽出した出汁を鍋いっぱいに入れ、そこへ手羽元とネギを投入し待つこと10分、出汁に鶏肉由来の黄金色がわずかに混ざり始めるころに手羽元を引き上げる。ネギはトロットロの状態が好きなので最後の最後まで放っておく。
そして引き上げた手羽元を、すだちを絞った醤油につけて食う。手で食う。ワイルドな食べ方が手羽元をよりおいしくする。手羽元はかなりの脂をまとっているが、すだちの効果が絶大でその男の食べるペースは少しも落ちなかった。
手羽元をむさぼり尽くしたあと、その男は一人鍋なのをいいことに手羽ガラを鍋に戻して出汁を足すと今度は鶏ももを投入、沸き立つまえにシメのラーメン用の麺を別の火口で茹でて準備を終え麦茶のグラスを傾ける。
鶏ももに火が通り、手羽元よりも一層濃い黄金色がスープにまだら模様を作ったら出来上がりである。きらめく黄金スープをどんぶりにとり、取り皿に残っていたすだち醤油を入れ味を見、塩が足りないと判断して食卓塩を注意深く振る。
鶏ガラベースの塩ラーメン的なスープが完成したところで麺を投入し鶏ももをトッピング。そして最後の最後まで放置しトロトロになったネギもすくいあげてシメのラーメンは完成である。
こんなことをつまびらかに書いてしまうような男が本当に痩せられるのだろうか?ともかくその男は風呂へと向かった。
その男の今日一日はこんなものであった。