あの日、あの時、パルコ前で待ち合わせをした。
浦和で、友人と待ち合わせをした。
浦和といえば、馴染みがない人には浦和レッズくらいしかイメージがないと思うが、埼玉県人にとっては必ず行ったことがあると言っても過言ではないだろう。
そんな約束の地に、私は学生以来、おそらく15年ぶりに足を踏み入れた。
駅の西口には、昔のような活気はないものの、大きく居座り続ける伊勢丹。
そして、なんと言っても駅の東口の視界いっぱいに広がるパルコ。
あの時から、何も変わっていない気がした。とにかく、懐かしかった。
ふと、涙が出ていた。嬉し涙なのか、悲し涙なのか。
この気持ちは何なのだろう。
そういえば、あの時。
埼玉の高校に通っていた私は、付き合ってた人と浦和で待ち合わせをすることが多かった。
今日はあの日、あの時と同じ、パルコ前で待ち合わせをしていた。
好きな人を待っている時間、それは何にも変え難い緊張感と高揚感だ。
私は待ち合わせの時間よりも幾分早く、約束の場所に着いていることが多かった。
だから、誰かを待っている瞬間を、私は誰よりも経験していると思う。
その代償として、失った時に真っ先に脳裏に過ぎるのが、待ち合わせの記憶だ。
私が目に浮かべている涙はきっと、哀愁から来ているのだろう。
私は、すっかり大人になってしまった。待ち合わせをするだけで、緊張感や高揚感を味わえることはなくなった。
もう一度あの感覚を味わいたい。
そんな私だって、過去の幻影を追い求めたくなることもある。
だけど、簡単に取り出せないように、心の引き出しの奥にしまっておくことにする。
目の前にタイムマシンがあったって、使うのは他の人に譲ることにしよう。
なぜなら、私が生きているのは今なのだ。
これから浦和のパルコ前で会う人が、現実なのだ。
なんてね。待ち合わせをしているときに、ノスタルジーに浸ってしまった。
今日の待ち合わせも、あの日、あの時の思い出になるのだろう。
だからこそ、今日、この瞬間は大切にしていきたいと、そう強く思った。