会社内に飲み屋があるという地獄

 以前、派遣社員として出入りしてた会社は、敷地内に飲み屋があるという摩訶不思議で異様なものだった。
初めは『へぇ~...面白いなぁ~』って思ってたが、一度酒席に出てからは『嫌だな』と逆転した。

工場地帯真っ只中にあったので、周辺には飲み屋がない。
仕事が終われば繁華街へと出かけねばならなかった。
そこへお偉いさんがどう考えたのかは知らぬ。
福利厚生の一環で、繁華街へ移動する手間が省けます、敷地内に設けましょう、飲みにケーションをはかりましょう、腹を割って話し合ってブレイクスルーしましょうとなったらしい。
京セラなんかがやってたことをここでもしてるということだ。
それは京セラだから通用したことであって、ここは京セラじゃない。
京セラがいわゆる大企業になって行く過程で通用したり、結束を固めたり、当時の時代背景や社風などとあいまって、社員たちにも受け入れられたことだ。
遠く離れた地で、違う会社で、そっくりそのまま通用するとも思えないのだ。
真似してどうする。
昭和世代の『飲めば何とかなる』という根拠のない理由と酒で評価されるのが大嫌いだ。
『飲めない』とか『弱い』ということを尊重しない国柄ではこういうのは非常に肩身が狭い。
仕事が終わって一区切りしたいのに、引っ張り込まれて延々と話し込まれるのは辛い。
ましてや自分は正社員じゃない。
強制はしないけどなんて言うけど、ほぼ強制だ。
言ってはなんだが、飲み屋でひねり出されたアイデアなんざロクなものはない。
実際に本当にロクなものはなかった。
8時間という枠があるからこそ、我慢も集中も出来て話し込めて打ち込めるのにエンドレスとはなんだ。
しかも、酔っぱらいの面倒まで見させられる。
罵詈雑言を浴びせられて、心ボキボキに折られて出勤した翌日には上司たちはケロッと忘れてる。
酔っ払った者勝ちの構図には納得が行かないし、相手によっては殺意さえ芽生える。
金と時間の無駄でしかない。
ましてや、こっちは酒が嫌で、弱すぎるが故に会社を辞めたくちなのだ。
アルコールハラスメントも甚だしい。
飲み代を上司がおごってくれるとかそんな気が利いたこともないのだから、三十六計逃げるに如かずである。
契約期間満了に伴う送別会をしてくれるというオファーも断ったくらいだ。
断わり続けて、どうしてもというから最初はOKしたけど、急遽家族の一人が病気で倒れたので看病したいという嘘までついて断って幕引きを図ったことがある。
主役不在でも飲み会したければどうぞと逃げたのだ。
日本に限らず形を変えて世界にはそういうことがあるんだろうけど、自分には不要なことだった。
腹を割って話せるチャンスなのかもしれぬが、酒を飲まなきゃ割れない腹なら所詮はその程度でしかないと思う。
それに、そういう酒が弱くても少ない量でも美味かったためしがなかった。







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