赤毛のアン
人生のうちで一冊だけ本を選ぶとしたら、迷いなく「赤毛のアン」を選ぶ。
小学校の高学年の頃、母が新潮文庫の100冊セットを買ってくれた。その時のメジャーな本から難しいものまで色々あり、星新一さんや赤川次郎さんの「女社長に乾杯!」、河童さんの俯瞰した部屋のスケッチなどに出会ったのもこの時だ。
でも何よりも好きになったのは「赤毛のアン」。
シリーズで続きがあると知ってからはお小遣いをはたいてい少しづつ買い揃え、数えきれないほど読んで本はボロボロ。捨てられるわけもなく、ルリユール?で装丁し直し本棚に鎮座している。
あの頃の私は、小説の中に出て来る植物を書き出したりして、将来アンのような庭を作りたいなどと想像したりしていたように思う。舞台となったプリンスエドワード島にも機会があればぜひ行ってみたい。
最近はずいぶんご無沙汰しているが、とても好きなシーンがある。
アンが赤毛の事で癇癪を起こしてしまいその謝罪の帰り道、横を歩くマリラの手に自分手を滑り込ませ、手を繋いで帰る所だ。
未婚で子供がいないマリラが、手に伝わる温かさに今まで感じたことの無かった母性にちょっと困ってしまうシーン。子供の頃は何か分からずただ読んでいたけれど、自分も母親になり、もう手を繋ぐような時期は遥か昔になった今頃、心に刺さった。
マリラが感じた気持ちが、やっと理解できたように思う。
小さかった子供達の手が懐かしくてたまらない。
手を繋いで横断歩道を渡る親子を見てちょっと感傷的になった14回目完了。