2021衆議院選挙 「自民苦戦・維新躍進予想」の理由
衆議院選挙が公示されて数日、選挙戦に突入している永田町界隈ですが、日に日に自民党の苦戦が色々なところで囁かれています。事前予想の中でも現有議席を確保できないのはわかっていましたが、更に苦しい展開になっているとの情報もあります。一方でどの調査でも維新の躍進が報じられています。これは何故でしょうか?
1:維新が躍進する?
正直、このニュースを見て驚きました。自民VS維新の小選挙区で維新がかなり優勢との情報です。大阪の小選挙区は維新か辻元氏か公明党が勝ち残り、自民は議席獲得0の可能性すら見えています。
大阪の自民はキャリアの浅い議員が多く、第二次安倍政権時の圧倒的な選挙に対する強さが追い風となって当選している議員が多く、追い風のない、なんなら逆風気味の選挙では、一気に苦戦模様になってしまうことかと思います。またこれは個人的な憶測にすぎませんが、公明が必勝を期する選挙区には維新は候補を立てていません。これは維新と公明は今回ガチの殴り合いはしていないということではないでしょうか?よって自民の大抵の候補には公明の推薦がついていますが、他の都道府県のように、あるいは今までのように自民と公明の二人三脚は大阪に置いては名ばかりのものになっている可能性もあり、これが維新を有利な情勢にしている可能性もあります。
何にせよ、全府単位で小選挙区で一議席も取れないとなると流石に前代未聞かと思います。何故このような現象が起こっているのでしょうか?少し考察してみたいと思います。
2:立憲民主党は健全な野党ではない
民主党政権崩壊から、自公政権が延々と続いています。私もそうですが、自公政権で全て良かったと思っている国民はそれほど多くないと思います。ただ野党に期待しようと思っても結局ゲンナリして、結局自民という選択肢しかないなと半ばあきらめムードの国民は多いのではないでしょうか?
立憲民主党が政権交代を訴える様子を見て、ゲンナリするのは、モリカケや桜など、どうでもいい問題にこだわったり、当初は公約の最初の方にウィシュマさん問題を入れようとしたり(あまりに各論すぎる話題を「政策」といってどうする的な批判が集中したのか、現公約からは外されていますが)、毎度おなじみのメンツばっかりとか色々あります。ただ好き嫌いを超越して、共産党とのここまでどっぷりの仲というのは政権を狙うなら致命傷だと思います。
#立憲共産党 というタグがTwitterでトレンドになりましたけど、本気で政権交代を狙って国民の過半の支持を得ようと思うなら、共産党とタッグ組んだ時点で、そっぽ向く国民がかなりの数いるという事実にすぐ気づくはずですが、それを知りながらこのどっぷりの仲ということは、そうまでしないと党勢維持が図れなかったということでしょう。確かに政党は議席数がないと何もできませんから、党略的にはまず「拡大」よりも「生存・微増」を選択するのは理解できますが、トヨタ労連から三行半を突きつけられたり、共産党に対する国民の訝しみをまともに背負うことになったため、非常に副作用の多い選択だったと思います。政権交代を叫ぶものの、実際に起こる可能性は極小だったので、批判もこの程度だったのでしょうが、割と政権交代もありうる状況であればもっと「共産党とタッグ組んでいるやつでいいんですか!!!」と自民党サイドはつつきまわしていたことでしょう。
とまあ、立憲民主党は共産党とくっつくことで大事な何かをなくしちまったわけです。比較的保守を好む国民からマスの支持を取り付けるのは共産党とくっついている限りはしんどいと思います。
3:自民党総裁選の追い風は無い
立憲民主党は「健全な野党」=「政権交代を担える野党」ではないという話を上で述べました。それならば、今までどおり、「消極的自民支持」が有権者の行動になるかと思っていたのですが、大阪では今回様相が違うようです。
戦前の予想では自民党は総裁選でのPRに成功し、岸田氏を選んだことで追い風にはならないものの、菅政権継続よりははるかにマシな、選挙戦になるだろうとの予想がありました。もし台風の目の的な存在になりうるとすれば小池新党は一発風穴を開ける可能性があったのですが、これは10月解散・10月31日投票日という日程の早送りが功を奏して雲散霧消してしまったので、選挙突入前には自民には「苦戦を強いられる感覚」はなかったかと思います。
ところが序盤の情勢では、「自民苦戦・立民候補と競り合う」展開が多いことがわかりました。特に都市圏で余裕のない候補が多そうです。岸田総理は「自公で過半数が勝敗ライン」と主張しているわけですが、
東洋経済の記事にもある通り、そんなイージーなハードルが岸田政権の真価を問う基準になるはずもなく、事実上は「自民単独過半数割れ=40以上の議席減=負け戦」というところがボーダーになるんではないかと思っています。
これは「河野にNO、消去法で岸田」という自民議員の選択がことの他ウケが国民に悪かったのではないかというのが私の予想です。国民はコロナで疲弊しており、現状のシステムと菅政権と行政がコロナの感染拡大に敗北していくさまをみて、アフターコロナには変革をもたらす人に、または国民に語りかけられる人に総理になってもらいたかったという思いが強かったと思います。自民党党員の投票結果というのは、一部偏った層もいてますが、基本的には保守よりの国民が多いこの国では、マジョリティの意見を反映した統計的データだったと思うのですが、これとは反する人選をしたおかげで、一部の無党派よりの自民支持者・消極的自民支持者の票を失っているのが実態であるかとおもいます。また政権交代まで起こす力はないものの、#立憲共産党 の戦略も選挙戦術としてはそれなりに効いているために、この相乗効果で自民は苦戦ぎみになっているかと思います。
改革の旗手としては河野氏は打ってつけだったことでしょう。高市氏も初の女性総理大臣ということであれば、河野氏とは違った点から、目新しさは十分あり、選挙においては党へ十分に貢献できたことと思います。岸田氏がこれといってマイナス点はないんですが(というか判断できるだけの活動を内閣としてしていない)、「現状維持的」イメージが強く、安倍・菅内閣に対する飽き飽き感をそのまま引き取った感じですごく、割りを食っている印象があります。あとは人によっては「官僚に丸め込まれるイメージ」も持っていることでしょう。強いリーダー像を求めているときには、タイミングが悪い人かもしれません。しかしイメージ戦略も含めて戦うのが選挙戦だとすれば、岸田氏がトップというのはあまり国民のウケがよろしくないのはさもありなんという感じかもしれません。
4:自民でも民主でもなければ第3極に向かう有権者
恐らく私のフィーリングでは河野氏や高市氏が総理総裁なら、自民党は現有議席に近い議席を獲得できたんではないかと思います。なぜなら、政策もさることながら「新しい風」が吹くイメージがあり、このコロナの最中に起きた閉塞感を打破する役目を担ってほしいと国民に思わせる発信力があると思うからです。(ちなみに毎度同じメンツの立憲民主党さんと「共産」の看板は死んでも降ろさない共産党にはこういうイメージを持つ人はあまりいないでしょう。)それでは河野氏や高市氏にあって、岸田氏にないものとはなんなんでしょうか?
コロナというのは色々な日本の「持病」を明らかにしました。給料があがらず、物価が据え置になっているせいで対外的な購買力が落ちており、木材が入って来ず、ウッドショックという現象がおきました。デジタル化が進んでいないために途方もない時間とリソース使わなければ国民に給付金を支給することができませんでした。有事の際に活用するデータベースがなく、バケツリレーのような形でFAXを通じて情報を収集するような現状も明るみになりました。緊急時に医師に対しては「お願いベース」でしか動員をかけれないこともわかりました。その度に国民は深くため息をつくほかなかったのです。挙げ句の果てに偶然とはいえ、感染爆発と重なる形でオリンピックを強行し、政権が一つ飛ぶ結果となりました。働く・子育て中の現役世代は「パンとサーカス的に」オリンピックを見ることよりも日常の暮らしが平常に戻る希望があることが大事だったのです。
起こったことは仕方が無いにしても、嫌というほど日本が立ち遅れている・危機管理ができない現実を見せられては、新しい風を期待するのが人情です。なんなら多少はリスクある人選でも、です。個人的な感想では小泉純一郎氏ぐらいの異物感があっても、風穴を開けてくれる期待感を持たせてくれるキャラの方が時流にマッチしていたのではないかと思います。逆に言えば岸田氏にこれを求めるのは厳しい。落語でいうところの「ニン」が違うのです。岸田氏に新しい風をもたらす「ファーストペンギン」の像を見るのは難しい、それが私の考えです。そしてこの選挙自民が苦戦するの見て、その感覚は多くの国民とそれほど違わないのではないかと思っています。
かくしてファーストペンギンを自民党に見いだせなかった国民の漂流がはじまります。漂流の結果、結局自民党に回帰する人もいることでしょう。ただ、民主党と違い立憲民主党は共産党と悪魔合体したせいで、漂流先とはなってないのがこの選挙戦の序盤の情勢です。では迷える国民=その他大勢のペンギンはどこに流れ着くのでしょうか?
その一つの解が大阪では「日本維新の会」なるかもしれません。吉村という若くてハンサムな熱血漢のイメージをもつリーダーにファーストペンギンの像を見出し大阪の有権者たちは流れつこうとしています。
維新の人気は大阪圏にいていないとなかなかわからないかもしれません。もともとは自民党から分派した政党で橋下氏が知事・市長の時は知名度の高さもあって全国的にニュースで取り上げられました。その後を継承した吉村氏は最初全国的な知名度がなかったもののコロナ対応で知名度が全国的に広がりました。
維新の政策・吉村知事の政策/発言は決して完璧ではありません。むしろ穴も多い。丸山穂高のような議員も所属しているなど不祥事もある。都構想は結局2度も敗北し、コロナ対応に置いては第4波の時に医療崩壊を起こして多数の入院を要する患者が自宅待機となり、亡くられる方もおられました。減点法でいけば、かなり減点要素もあります。しかしこのような減点要素が多くあっても、大阪府民は維新支持に傾いています。これは一つには大阪では自民以外の選択肢になるくらいまで維新が成長していることを指します。また大阪自民への愛想が尽きたという側面もあります。
大阪の自民は府議・市議がこぞって都構想をつぶしたように守旧派以外の何物でもなく、昭和から平成半ばまで延々「ダメダメ大阪」を作ってきた張本人たちなので、自民党のなかでも特にダメな人たちなのですが、「自民」の看板の下で延命してきました。ところが維新の成長により、ついに消極的自民支持を選択しなくてよくなった結果、命脈が断たれようとしています。
逆に言うと地域政党の維新が地域の枠を超えて第三極に、その延長線上には健全な野党筆頭になる可能性がでてきたということなります。これは今後の新しい政党編成に一石を投じるのではないかと思います。兵庫も現在知事は維新であり、関西は維新が勢力を拡大するでしょう。
①共産党と距離の置いた、保守勢力であること
②改革を謳うこと
③実際にやってくれそうなファーストペンギン的シンボルがいること
④自民の代表が改革派ではないこと
この4点が揃えば、自民に対抗できる政治勢力が形成できるというのが今回の維新が善戦している理由ではないでしょうか?
この国はしばらくの間、「過去との対決」が求められます。少子高齢化・カーボンニュートラル・中台問題・スタグフレーションとの決別等の問題と戦い、新しい成長モデルをえがかなければなりません。その時に官僚となかよしの、ハト派の調整型のリーダーでは物足りないのは当然といえば当然でしょう。
一気に岸田内閣が倒れることはありませんが、自民の議席が単独過半数割れになると、責任論が浮上しかねません。参議院選挙まで考慮にいれると岸田内閣は迷走の可能性もあります。いろいろとある選択肢の中には次回の衆議院選挙の結果次第では維新との連立もありうるかもしれません。改革派のリーダーを選ばない限り、国民の支持は第3極に向かい、自民党は徐々に党勢をそがれることでしょう。今はその特異点から新しい政界の編成に向かう最中にあると思います。
と長々と今回の衆院議員選挙について述べて参りました。今の段階では予想に過ぎないですが、自民苦戦は日に日に強くなっている気がします。選挙速報は波乱含みになると思いますし、何より自民が単独で過半数を割ったときにどういう「戦後処理」が待っているのか、見守りたいと思います。