スカジャン絵柄の考察
スカジャンと聞いて多くの人は、ヤンキーアイテム(ワルのイメージ)としてのスカジャンをイメージすると思います。
その理由はテレビドラマ等の影響が大きく、
70、80年代にUSカルチャー、ファッションが流行した時期のドラマでは
ヤンチャな若者が着る常用アイテムとしてスカジャンのイメージが強く、
その後ダウンタウンの浜ちゃんのような有名人の存在も大きいと思います。
戦後、進駐軍を相手に日本の「おみあげ」として販売されていたスカジャンは、
軍服に米兵の個人名、部隊名、好きなデザインを刺繍で入れたオーダーメイド品「刺繍入りジャンパー」として始まり、「スーベニアジャケット=おみあげ用ジャケット=日本に行ってきました。おみあげ」として日本地図、都市名や富士山、虎、龍、鷲などが刺繍されたものが販売されました。
しかし、スカジャン定番の絵柄として日本にいない虎や、実存しない龍が描かれることは多いのは、なぜでしょうか?
龍の発祥は中国です。
ただ虎や龍が力強くて、カッコいいという点もありますが、それだけではありません。
よく描かれるスカジャンの龍のデザインに、龍と合わせて
蜷局(とぐろ)を巻いたような雲が描かれている事があります。
このデザインは単なる「空にいる龍」と「空にある雲」が描かれているわけではなく、
「雨龍」という、「雨を降らす龍」が描かれています。
※(あまりゅう、あまりょう、うりゅう)と呼ぶ
龍には階級が存在しており、
1.「龍」
2.「蛟(みずち)」
3.「應(おう)・蜃」
4.「蚪(と)」
5.「璃(ち)・蟠(ばん)」
の順で五段階に分類され、その中で雨龍は、一番下の「璃(ち)・蟠(ばん)」に属しており、
5番目の「璃(ち)・蟠(ばん)」の龍の特徴は、
いわゆる角がなく、指が3本で、
ランクが上の「龍」になると、
角が生え、指が5本になるようです。
※ちなみにドラゴンボールの神龍(シェンロン)の指の数は4本でした。
一番下の「璃(ち)・蟠(ばん)」の龍が描かれたのか理由としては、
龍のランクとは関係なく、
雨乞いの儀式など元来、水に関する信仰が強い日本では、
水の神として龍神が祀られており、地名や家紋などにもその信仰残るほどに「水を大事にしていた」という事と関係があると予想されます。
余談ですが、龍は架空の生き物とされますが、長い年月を生きた鯉は死後に璃龍になるといわれ、竜鯉(りょうり)と呼ばれるようです。
竜鯉とは鯉の滝昇りのことで登竜門の語源、鯉幟(こいのぼり)の語源でもあるようです。
ここからはあくまで推測ですが、
敗戦後スカジャンは、1000年続く絹織物の街、群馬県桐生で製造されておりました。
その人達がスカジャンのデザインの絵型を取るにあたり、参考とした虎や龍のそもそものデザインモチーフが存在したと思います。
1から虎や龍を書き起こしたのですはなく、
模写した元の図案や資料が存在していたという事です。
そのデザインモチーフはおそらくですが、
戦後の物資難の中にあって、どの家庭にも普及していた
陶磁器、絵皿にあったと思います。
いわゆる現代のわたしたちがイメージする伊万里焼、有田焼などの高級磁器ではなく、
江戸時代後期~明治時代、志田(肥前)などで制作された、庶民が日常で使う料理の器、
とりわけ大皿にそのルーツを辿ることができるのではないかと考えました。
その絵皿には
竹林の虎、松、富士、鳥居など
スカジャンでよく見かける様々な動物、景色、人物が描写されていたからです。
この考えに至ったのはある著名な方とお話をさせていただいたことがキッカケでした。
次回はそのあたりの経緯を語りたいと思います。
スカジャンは、敗戦後、米兵お土産として「スーベニアジャケット」「刺繍入りジャンパー」として発売されました。
その当時の写真などは残っており、一般的な見解として語られていますが、その制作のさらに裏にあるデザインについて想像、考察する事で、また「日本人が発明した唯一の洋服」スカジャンの魅力を引き出すことができればと思います。
つづく。
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