3月9日のにっき
1日予定がなかったので買い物に行こうと浦和行きのバスに乗った。
このバスの道のりで好きなのが浦和駅近くにある「イワキメガネ」の前を通る瞬間。
イワキメガネが好きというか、劇団イキウメが好きで、イワキメガネが限りなくイキウメに見えるから好きというか。
イワキメ めっちゃイキウメ。
イで始まってメで終わるものだし、ウがないけどワなんて禿げたウだし。
それに加えて看板のフォントが限りなくイキウメ。ゴシック体みたいに太い字、銀色の金属そのものみたいな素材も良い。
始めてイワキメガネをイキウメに空見したのは気乗りしない飲み会に向かっている時だった。どちらかというとげんなりしてて、少しでも気分が上がるものを探していたらイワキメガネに出会った。それから浦和へのバスに乗る時はイワキメガネの看板を見るのが決まりになって最近はイワキメガネの前を通る時に「今日もいい一日になりますように」と心の中で手を合わせて参拝をするようになってる。
今日もいつものように心の中で五円玉を握りしめ、バスに乗っていた。お賽銭って何円玉でも同じって伊勢神宮も言ってるし、外で参拝する時は一円玉って決めてるけれど、心の中では五円玉握りしめちゃう自分の軸のブレ加減が愛おしい。
愛おしい五円玉を握りしめていつも通りイワキメガネの前まで来た、、が、
神社がなかった。
イワキメガネの看板がなくなっていた。心の中で五円玉が地面に落ちる。心の中は床がぶにぶにしてるので小銭が落ちた音が鳴らない。周囲から注目を浴びることはない。
なくなっていたというか、イワキメガネが外装工事中で、リニューアルに向けて看板が新しいものに取り替えられている最中だった。
店の前に工事の人が2人いて、その足元に新しい看板が見えた。サイズは前の5分の1ぐらい、フォントは同じあの太字のやつだけど小さくなった1文字1文字がオシャレな間隔で配置されていて、以前の人の血が通っていないような無骨さがない。
私は飲み会どころじゃなくなって、バスの降車ボタンを押して、浦和駅の一駅前で降り、イワキメガネまで走った。
やはり私の神社がない。
見違えてスリムになったイワキメガネの看板が工事の人の足元に置いてある。イキウメじゃない新しいイワキメガネが落ちている。
私のパワースポットが
「看板変わっちゃったんですね、」
工事の人に話しかけてしまった。普段は絶対そんなことしないのに、この時は心がガバガバだった。
工事の人は特に嫌な顔せず返事をしてくれた。
「そうなんですよ」
「あの、私も看板付けるの一緒にしていいですか? ここ、思い出の場所なんです」
「一緒に、ですか?」
「はい。このイワキメガネも自分で取り付けたら、これまで通り愛せるかもって。参拝できそうな気がするんです」
「参拝?」
「はい。看板取り付け一緒にさせてください」
「危険なので駄目ですね」
「え? じゃあ触らせてくれませんか?」
「触る?」
「はい。バスで見る度にあの看板触ったなって思うじゃないですか。そうしたらなんか神社に見えてくるかもしれないから。参拝できそうな気がするんです」
「参拝?」
「はい。触らせてください」
「イワキメガネの関係者ですか?」
「赤の他人です」
「じゃあ駄目ですね」
スタバに行って、注文に手こずって共感性羞恥を撒き散らしてイワキメガネを忘れることにしたけど、全然別物で嫌な思い出になった。
飲み会は行かなかった。とても行ける精神状態ではなかった。
今日の出来事はお風呂入ってる時に突然思い出して、うわあ!!!って叫んじゃうと思う。
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