20世紀最後のボンボン 第三部 メンロパーク篇 第五章 初めての飲み友達 フローラ・アン
20世紀最後のボンボン
第三部 メンロパーク 篇
第五章 初めての飲み友達 フローラ・アン
その人は私より40歳年上のとても優雅なご婦人でした。
娘さんはエリザベス・テイラーにそっくりでしたが、
フローラ・アンはエジンバラの貴族のように気高い感じが
ありました。いつも長いロングドレスを着て、たいていは
滑らかな白いブラウスを着ておられました。
外出するときは必ず、昔のジャガーに乗り、
群青色のようなジャケットをはおって出かけます。
フローラアンとの毎週のカクテルパーティが
どういう風に始まったのか覚えていないんです。
それは一種 恋をしているみたいに私をずっと
とらえて離さない強烈なイベントでありました。
お蔭で、シャドネーがどんなに美味しいか、
カリフォルニアのワインもフランスのワインに
負けてないとつくづく考えさせられた甘い
ひとときでありました。
一緒に食卓に出されるチーズは
ごく普通のチェダーやグーダなのですが、
だいたいそんなにのんびりした時間を
過ごす贅沢はなかったわけで、
私から見ればフローラアンはなんて気持ちの
大きい人なんだろうと憧れが強まる一方でした。
カンクンくんもいつも一緒に行ってましたが、
別の部屋で色々Disney の映画を見ていました。
そしてビデオが終わると私たちのところに来て
一緒にチーズを味見していました。
けれどものちに隣のローズマリーに聞いたところ
フローラアンは娘3人が遠くにお嫁に行って
しまって寂しくて、糖尿病であるにもかかわらず
わたしと飲むワインの時間を本当に楽しみに
していたということでした。
私はフローラアンとはその後7年に渡って
ワインを飲んだのですが、あの時間が英語だけで
なく私の人生にとってどれほど貴重な時間
だったか表現することは難しいです。
他の人とは共有できないとても愛しい時間
でした。
フローラアン
天国でご主人と幸せに過ごされていることを
願っています。
つづきは第6章で