20世紀最後のボンボン 第一部東京篇 第九章 ボンボンの苦しみ
このへんからはSUJIは31才になっています。
20世紀最後のボンボン
第一部 東京篇
第九章 ボンボンの苦しみ
最初は、自分が全く知らない世界を
見たくて、そしてそれはとても面白いから
夢中だった。
どこに行っても、商人はみな丁寧で、
どの場所も圧倒的に清潔だった。
ボンボンはバブルが終わった後の
バブル探しをしているようだった。
ボンボンは大変傷つきやすかった。
すぐにプライドに傷がつく。それは男性は
誰でもそのように壊れやすいものかも
しれないが、ボンボンの程度はちょっと
違う感じがあった。
どうして大理石のロビーのあるホテルに
行かないといけないのか。そこでなければ、
自分の渇きを埋められないかのように。
箱根宮ノ下の富士屋ホテルの特別スイートの
ようなところに旅行で、宿泊していたこともある。
何か先祖からのレガシーを私に示している
のかと思われる節もあった。
そこの椅子に座っているときでも、虚ろで、
何かに苦しんでいる感じがあった。
ボンボンはお金にはまったく困って
いなかった。
けれども私は仕事を辞めなかった。
それがまずボンボンには信じられなかった。
私は夕飯の時間前には帰っていたし、
ご飯も全部作っていた。
それに仕事といっても、当時の対象はたいていは
女子学生で、土曜日曜は以前のようには
働いていなかった。
一方、ボンボンは土日は私と美術館や
ブティックやホテルのロビーに繰り出し、
休日の私の時間を独占しようとした。
けれどもボンボンは孤独だった。
そして淋しがりだった。
それは相手が私であっても
誰であっても到底埋めることのできない
この世界にあるボンボンと他者との溝
にも思えた。
ボンボンは私が知っている日本人の誰とも似ていなかった。
とてもオリジナルで、強い個性を放っていた。
第十章 決心
つづく
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