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20世紀最後のボンボン 第一部東京篇 第九章 ボンボンの苦しみ
このへんからはSUJIは31才になっています。
20世紀最後のボンボン
第一部 東京篇
第九章 ボンボンの苦しみ
![](https://assets.st-note.com/img/1638622377302-rDXIRFFoou.png)
最初は、自分が全く知らない世界を
見たくて、そしてそれはとても面白いから
夢中だった。
どこに行っても、商人はみな丁寧で、
どの場所も圧倒的に清潔だった。
ボンボンはバブルが終わった後の
バブル探しをしているようだった。
ボンボンは大変傷つきやすかった。
すぐにプライドに傷がつく。それは男性は
誰でもそのように壊れやすいものかも
しれないが、ボンボンの程度はちょっと
違う感じがあった。
どうして大理石のロビーのあるホテルに
行かないといけないのか。そこでなければ、
自分の渇きを埋められないかのように。
![](https://assets.st-note.com/img/1638622377469-z2YsyOgm1J.jpg)
箱根宮ノ下の富士屋ホテルの特別スイートの
ようなところに旅行で、宿泊していたこともある。
何か先祖からのレガシーを私に示している
のかと思われる節もあった。
そこの椅子に座っているときでも、虚ろで、
何かに苦しんでいる感じがあった。
ボンボンはお金にはまったく困って
いなかった。
けれども私は仕事を辞めなかった。
それがまずボンボンには信じられなかった。
私は夕飯の時間前には帰っていたし、
ご飯も全部作っていた。
それに仕事といっても、当時の対象はたいていは
女子学生で、土曜日曜は以前のようには
働いていなかった。
一方、ボンボンは土日は私と美術館や
ブティックやホテルのロビーに繰り出し、
休日の私の時間を独占しようとした。
けれどもボンボンは孤独だった。
そして淋しがりだった。
それは相手が私であっても
誰であっても到底埋めることのできない
この世界にあるボンボンと他者との溝
にも思えた。
ボンボンは私が知っている日本人の誰とも似ていなかった。
とてもオリジナルで、強い個性を放っていた。
第十章 決心
つづく
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