虚無で振るペンライト
※いじめ、パワハラの描写が出てきます。なるべく詳細に記載しないよう配慮していますが、人によっては気分が悪くなる可能性がありますのでご注意ください。
※荒れてる公立中のちょっとしたエピソードと、パワハラ教師がお気に入りの男の子たちを無理やり女装させて歌って踊らせるという謎イベントがあった話を書いています。
教育困難校とは何か
皆さんは、「教育困難校」という言葉をご存知でしょうか?
バカ校、底辺校、荒れてる学校…
こういったネガティブな言い方はやめて、「教育困難校」という呼び方をしようという動きがあります。
偏差値30〜40台の普通科高校を指すことが多いようですが、肝要なのは偏差値云々ではなく「授業が成り立っていないこと」です。
授業中に席に座ってない生徒の方が多いとか、そもそも教室内にいないとか、そういうの。
で、関連記事を読んでて思ったんですよ。
これって、私の通ってた地元の公立中学校そのまんまじゃない?
荒れてる中学校前史〜小学校はサル山〜
話は小学校時代に遡ります。
私が通っていた小学校は、今で言う教育困難校に該当していたと思いますが、当時はシンプルに「荒れてる学校」と呼ばれてました。
授業中にずっと席に座っている児童は少数派。大多数はクラス中を駆け回ったり庭の木に登ったり…サル山かよ。
教室のドアに「3ー1」とか書いてある表札あるじゃないですか。あれは悪ガキが面白がって破壊するから基本ボロボロ。もちろん教室のガラスはしょっちゅう割れる。
同質性が高く、ランドセルの色が違うとかちょっとした差異が気軽に虐めに発展します。なんか色々浮いてたので私も虐めのターゲットにはなっていたのですが、取り囲まれてブース、ブースと叫ばれるレベルなので、非常に不快ですが実害も無く扱いに困るのが正直なところ。
荒れてる中学校あるある早く言いたい
まあ、今思えばまだ小学校は牧歌的でした。
当時は心霊ブームだったのですが、クラスの女子がコックリさんをうっかり呼び出してしまったとかでクラス中がパニックになった時に、私を含めたいじめられっ子数人にも「こういうのはシャレにならないから全員にしないと」と真剣な顔でオリジナル除霊をしてくれた映画版ジャイアンのような男気を持つガキ大将のA君とか、「ブスのスジャータ♪ブジャータ♪ブスすぎてキモすぎて牢屋に入れられる♪でもブジャータ頭いい♪頭いいから食事を抜いて痩せて脱獄した〜♪」と、悪口歌にところどころユーモアとリスペクトを混ぜてくるB君とか、心温まるエピソードが無いわけでも無かったのです。
が、中学校になると空気は一変。
学区のある公立中学は、地元でも有名な荒れてる学校。少しでも経済力のある家庭のマトモな子供はさっさと中学受験で去って行きました。
より凶悪な隣小のヤンキーも合流し、校内は世紀末。
廊下をヤンキーが自転車で走ったり、校庭をヤンキーがバイクで走ったり、気が向いたら誰かの自転車ヘルメットあたりを校庭に持ち出してバットでメタメタに叩いたり。
多分、荒れてる学校あるあるかと思うんですが、火災報知器が毎週のように鳴るから感覚が麻痺してきて、年一くらいでボヤ騒動が起きても誰も気づかないんですよね。
…うん、わかるよ。まとも環境に育った人間には状況伝わらないよね。
ヤンキーって、ボタン好きなんですよ。
一度、間近で見たんですけど、テンション上がったヤンキーが掃除道具振り回して、廊下に設置してある火災報知器の黒い部分を柄の部分で連打してました。
途端に鳴り響く警報。すぐに止めにくる教師(ご苦労様です)。通り一遍の説教。ヘラヘラするヤンキー。流れ解散。何ということのない平和な日常。
まあそんな中、タバコの火の不始末あたりで、年に1回くらい本当に小火(ボヤ)が起きて警報が鳴るんですが、全員ノーリアクションで、あとで校長あたりが「なぜ避難訓練通り動かないんだ」ってちょっと怒るんですけど、流石に無茶な要求だと思い返してトーンダウンするまでがお約束です。
厳選されたヤバ教師たち
さて、教育困難校は生徒もヤバいのですが、本当にヤバかったのは、「木を隠すなら森の中。ヤバい奴を隠すなら奴らの中。」とばかりに市中から厳選されたヤバい教師の皆様です。
最初の5分しか授業しない英語教師とか、そもそも日本語が覚束ない英語教師とか、「pretty」という単語が出た時に
「ぷりてぃってゆうのはーー
ヤマダみたいなーー
カンワイイ女の子のことをーー
ゆぅんだぞぉうーーーーー
みんなーー
わかったーーー?」
とクセ強な言い回しで山田さんに本気でキモがられてた英語教師とか…あ、すいません、これ全部同一人物でしたね。
まあここまで強烈なのは稀でしたが、平成も半ばに差し掛かるのに暴力教師をはじめヤバ教師がズラり。
1年の時は運良く件の英語教師としか関わらなかったのですが、進級でクラス替えをしたタイミングで、赴任したばかりのパワハラ教師(という概念は当時なかったですが)に当たってしまいました。
世紀末のような学校とは言え、当然全員がヤンキーな訳ではありません。どちらかと言うと、2年の時に私が所属していたのは良く言えば大人しい、本音で言えば無気力な生徒の集まるクラスでした。
パワハラ教師×無気力生徒…
どうなるかお分かりですね。
そう、とっても無気力なクラスの爆誕です。
担任のパワハラエピを書くと筆が止まらなくなってしまうので、ここでは一つに絞りましょう。
私のいたクラスは、全員が第一志望の高校に合格しました。すごいでしょ?
ここで、テクニックのお披露目です。
まず、担任が、給食時間中に、進路志望書に実力以上の学校を書いた生徒を呼び出します。なるべく大人しくて反論しなさそうな子であることが望ましいです。
そして、担任から生徒に優しく諭しましょう。
担任「お前さ…〇〇高校だって?」
…(沈黙)…
担任「ハッ(←鼻で笑う)」
…(沈黙)…
担任「バーカ!」
…(沈黙)…
担任「ハッ(←再度、鼻で笑う)」
…(沈黙)…
担任「バーカ!バッカじゃねぇの!お前が〇〇高校!お前マジでバカだな!!」
もちろん、相手が泣きそうにしていても気にしてはいけません。ひとしきり罵倒…じゃなくて優しく諭したら、自席に返しましょう。最後に「お前がバカなせいで先生、昼飯食べられなかっただろうが」と付け加えるのを忘れずに⭐︎
なお、給食中はデフォそんな感じなので、給食中に喋る生徒はいつの間にかいなくなり、気がつけば全員が無言で食事をしていました。黙食の先取り。意識高いですね⭐︎
パワハラ教師による女装強要イベント
「兵役逃れの女装」?
まあ、そんな担任のパワハラエピソードは語ると止まらなくなるのですが、読んでいる方も気分が悪いでしょうし、私も心臓がバクバクして吐きそうになってきたので適当なところで収めましょう。
さて、本題ですが、パワハラ教師は本当は教師ではなく脚本家になりたかったとのことで、毎年2月に開催される「三年生を送る会」で急にやる気を出してきました。送る会では、体育館で学年単位の出し物をします。大体が合唱あたりに落ち着きますが、ダンスや劇のこともあります。
担任「この学校は女が強すぎる。男が弱い。」
そうなんだ。初めて聞いた。
担任「だから、男子を活躍させる」
はい。
担任「三年生を送る会では劇をやる。キャストは全員男だ。キャストは全員こちらで決めた。キャストには劇の練習を最優先してもらう」
そうか。
担任「台本はコレだ」
読ませて読ませて♡私こういうの大好き♡♡
担任「あらすじはこうだ。『舞台は太平洋戦争直後の日本。兵役を逃れるためにカツラを被り女装した男たちがいた。リーダーのエリザベス(サッカー部エースC君)、元気なマーガレット(サッカー部部長D君)、ちょっぴり頭の弱いキャサリン(バスケ部副部長E君)…
8人の男達が歌って踊るエンターテイメント超大作!乱入するゆず!「気が付いたんだ。俺たち、本当の自分を偽ってた。さぁ男に戻ろう!」』」
……
なんだこりゃぁ!!!(←チャブ台をひっくり返しながら)
何だよそのガバガバな時代設定!戦時中の日本でキャサリン名乗って化粧してヒラヒラしたスカート履いてたら普通にリンチだろ!何が「この学校の生徒は歴史ができないね(嘲笑)」だよ!お前の歴史感覚が一番ヤバいだろ!社会科教師として恥ずかしくないのかよ!時代背景無視するなら「時は21xx年、第三次世界大戦直後の」くらいで誤魔化しとけよ!
そもそも何だよ「俺たち、本当の自分を偽ってた」って!兵役逃れで女装してたならそりゃそうだろうよ!本当の自分も何も方便だろう!なに感動した風に落としてるんだよ!
てか台本読んだけど地の文で説明するんじゃねぇよ!終わったあと三年生に感想聞いたけど「歌良かったよ!舞台背景とかも頑張ってた!戦争?なんのこと?ストーリーは全然わからなかったけど、戦争??」って困惑してたぞ!せめてセリフで説明しろよ!!
…などと言える筈もなく、無表情で決定事項を聞くともなしに聞いていました。
強制徴用される1軍男子
そもそも、「この学校は男子が弱い」とか言いながら、元気いっぱいの男子ばっかり指名してるんですよね。私の母はE君(キャサリン)の母親と仲が良かったんですけど、どうもE君、2年冬の大会に向けて練習強化してたのに行けなくなって、本気で嫌がってたみたいです。思春期の男子が母親に学校のこと愚痴るとか相当だぞ。
他のキャストも状況は大同小異。部活によっては深刻な問題が出てる筈なので、顧問経由でクレームあげるとか色々あると思うのですが、そんな主体性はこの学校に存在しません。「兵役逃れで女装」というプロット劇をやるために一軍男子を強制徴用って、なんか皮肉ですね。
というか、話は変わりますが、嫌がる一軍男子を連れてきて、ヒラヒラした服を着せて、ナヨナヨさせて、女言葉を喋らせて…
うん、これシンプルに担任の性癖ですよね。
「お前ら恥ずかしがるんじゃねーよ。真面目にやれよ。あ?」
とか言いながら、めっちゃ嬉しそうだったし。
どんな性癖を持ってようがとやかく言うつもりはないけど、生徒を巻き込むなよ。同人誌でも書いてろ。
あ、ここまで特に記載しなかったですし、私も途中まで確信が持てなかったのですが、担任は女性です。
虚無で振るペンライト
さて、キャストとしての役割を与えられなかった私たちモブには、大事な役割があります。それは、自宅から持って来させられた懐中電灯に、学校から配られたセロファンを貼った即席ペンライトを振る役目です。
ホームルーム授業の時間、体育館に集められ、歌に合わせて正しくペンライトを振ることが求められます。
…あのさ、ペンライトって、もっとこう、楽しい気分で振るものじゃない?虚無で振るペンライトって、これもうペンライトへの冒涜じゃない??
ペンライトは色分けされており、私たちが正しいタイミングでペンライトを振るまで、練習は何度でも何度でも何度でも続きます。
底冷えする体育館。
赤上げて、青上げて。
「そうよ、キャサリン、一緒に踊りましょう」
青下げないで、赤下げて。
ホームルーム終わりのチャイム。
赤上げて。
掃除の時間はじまりのチャイム。
赤上げて。
「駐車場の猫は、あくびをしなーがらー♪」
ゆず嫌いになりそう。あ、赤下げて。
掃除の時間終わりのチャイム。
赤下げて。
ヤケクソで人形を振り回すキャサリン。
赤下げて。
下校のチャイム。
赤下げて。
…私は何をしてるの?
急に、全てが馬鹿馬鹿しくなりました。
私、クソ真面目なんで、どんな理不尽なことにも黙って従ってましたし、嘘をついたことなんて、生まれてこのかた片手で数えるくらいしかなかったんですよ。
でも、もう無理。
適当な理由をその辺に立っていた他クラスの教師に告げて体育館を後にしました。
終わりに
まあその後色々あって、「私を助けてくれる大人はこの世に存在しない。私は他人に期待しない。私を救えるのは私だけ。私を幸せにできるのはこの世で私だけ!!!」と急に開眼した結果、猛勉強して偏差値78のガチ進学校に合格したはいいけれど、推定偏差値35の荒れてる公立中学とは文化が違いすぎて色々苦労した話はまた今度ということで。
それでは!
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