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ヴィンテージという、言葉の額縁をつける。
ファッション関連の話題で、ヴィンテージという言葉をよく耳にする。ふと、ヴィンテージという言葉が「絵画における額縁みたいな機能を持つようになってるのでは?」と思ったので少し考えてみる。
そもそも、ヴィンテージの言葉としての起源は、ラテン語で「ぶどうの収穫」を意味する"vindemia"にあるらしい。そこから派生し、良いぶどうで作った良質なワイン、当たり年のワインを特別にヴィンテージワインというみたいだ。
その派生で、年代物を指す言葉として様々なものに使用されている。
洋服は、ワインのように当たり年とそうでない年が明確ではないし、そのような概念もない。ただ、古い洋服がすべてヴィンテージとしてラベル付されるかと言われれば、そうでもない。
ファッションにおけるヴィンテージは、
ヴィンテージ(ビンテージ,Vintage)は、完成度が高い、古くて価値が高い、年代物のアイテム、また商品。ファッションでは、古着のことなどを意味する。
(出典:FASHION PRESS <https://www.fashion-press.net/words/186>)
ということらしい。特徴のあるデザイン、素材、仕立て。それらが優れていたり、現在では制作不可能だったりして、希少性が高ければ価値も上がる。
特定の集団の中では、ヴィンテージは歴史を語る。ヴィンテージを身に纏うことは、当時の時代感を身に纏うことだったりする。それくらい強烈な意味合いで使われる。
しかし、その集団の外、より一般の集団では、ヴィンテージの意味は薄まる。
より一般の集団域においては、特定の集団の中ではヴィンテージというカテゴリに分類されていなかった洋服も、ヴィンテージとラベル付されているのを見かける。ここに表れるような「ヴィンテージ」の言葉の持つ意味は、特定の集団におけるそれと同じほどに強烈ではないが、一定の価値を与える。
このように、ある特定の集団ではない、より一般の集団域で使われるヴィンテージという言葉に、絵画における額縁と似た役割を感じた。
絵画における額縁の役割はなんだろうか。
額縁の役割
額縁はどのようなときに使われるのか。
全てがそうとは言い切れないが、美術館だったり、一般の目に触れるとき、絵画は額縁に囲われる。額縁には、いろいろな役割があるのだろうが、ひとつの機能的な役割として、一般の目にも分かりやすく、作品を際立たせるというものがある。
作品としての価値をより分かりやすくすることが、多くの額縁がもつ機能のひとつだと思う。
額縁としての「ヴィンテージ」
古着屋で買い物する際に、店員から「これはヴィンテージで、、」と言われれば、なんとなく凄そうに思える。このように、「ヴィンテージ」といった額縁を添えてあげることで素人目にも凄みが感じられる。
これが、額縁の役割のひとつと似ているなと感じた。
ただ、全ての古着にその額縁を添えることはできない。ヴィンテージとラベル付される洋服には、奥深さだったり、渋さを内包した華やかさだったり、独特な雰囲気がある。これらのように、いわゆる「味」として表現される曖昧なところに、ヴィンテージ感みたいなものが存在している。
より一般の集団では、歴史とか価値よりも、この独特な雰囲気、おしゃれさの方が重要なのかもしれない。最近は、そういったヴィンテージ品の雰囲気を汲み取った、ヴィンテージ風な新品の洋服が売られていることもある。
より一般の集団内で、ヴィンテージという言葉は額縁のような機能を持ち、ヴィンテージっぽさを作り上げている。
ひとつのトレンドと、言葉の変化の話。