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君にかかった魔法が解ける ~Secondo viaggio 第1章「春嵐出来フェルマータ」

はじめに:Secondo viaggioについて

 スマートフォンアプリ「金色のコルダ スターライトオーケストラ」(通称:スタオケ)における長編シナリオシリーズ「Secondo viaggio(通称:SV)」について、紹介と感想を兼ねて書く。Secondo viaggioはスタオケのメインストーリーの続編であり、スタオケのメンバーたちがそれぞれの音楽と人生に向き合っていく青春物語が描かれる。
 Secondo viaggioのストーリーはイベント形式で配信されていくが、基本的に「最新章のみイベント報酬として解放される」仕組みであるため、最新章以外のストーリーは常設されている。閲覧にはアプリのホーム画面の ストーリー > イベント > SV へ遷移する必要がある。
 Secondo viaggioのストーリーはイベント形式で配信されたが、オフライン版では1~11章まですべて解放されている。閲覧にはアプリのホーム画面の ストーリー > イベント > SV へ遷移する必要があるが、イベントへの参加・不参加を問わず、オフライン版をインストールしたすべてのユーザーに解放されているコンテンツである。

 本記事ではSecondo viaggio 第1章として配信された「春嵐出来フェルマータ」について書く。メインストーリーの続編の物語なので、メインストーリーやその他イベントストーリーの内容を踏まえる、つまりネタバレを含むことをご了承いただきたい。

ストーリーライン概観

夢の続きの幕開け

 国際コンクール優勝を目指して仲間を集め、メインストーリー9章で国内予選を勝ち抜いたスターライトオーケストラ。ウィーンで開催される本選に先駆け、日本オーケストラ協会主催で優勝記念のガラコンサートに出演することが決まっている彼らは、コンサートの演目として「ラデツキー行進曲」「田園」等の楽曲を仕上げている真っ最中だった。

 現実のクラシック音楽界において、ニューイヤーコンサートでおなじみの曲である「ラデツキー行進曲」。つい手拍子をしたくなるノリの良い華やかなこの曲は、シリーズ過去作「金色のコルダ4」で実際に演奏できるアンサンブル曲のひとつでもある。

 一方、「田園」の通称で知られるベートーヴェンの「交響曲第6番」第1楽章は、「金色のコルダ」の最終セレクション期間のBGMとして採用されたもの。明るく優雅な曲調はもちろん聞いていて気持ちがよく、「金色のコルダ」をプレイしたことのあるユーザーであれば間違いなく懐か死ぬやつである。
 2曲とも超のつくほど有名な曲であるとしても、あえて過去作に深いかかわりのある曲がここで登場したことに、なんとなく運営の意図を感じる。

コンサートミストレス・朝日奈唯、コンディションは絶好調!

 まあ、その好調は暗転の前振りになるわけであるが……。

春嵐出来:イグナーツ・ザイドルの訃報

篠森先生が練習を中断させるのはたぶん珍しいんじゃないだろうか

 合奏練習の最中、音楽監督である銀河に対し、日本オーケストラ協会から急な呼び出しがかかる。曰く、クラシック音楽界の巨匠で世界的に有名な指揮者であるイグナーツ・ザイドルが逝去したという(「スタオケ」のストーリーにおいて、イグナーツ・ザイドルの名はここが初出である。ユーザーとしては「そんな人おったんか」くらいの受け止め方になる)。
 朝日奈も楽団員の代表者として銀河に随伴し、日本オーケストラ協会本部へ向かう。

銀河はザイドルに可愛がられたことがあるらしく、訃報に思うところがある様子

 本部で二人を待っていた月城慧(彼も協会の理事のひとりである)から受けた連絡事項は――3月に予定されていた国際コンクール本選の無期限延期

ザイドルの死の余波が思わぬところに……

 月城&銀河の話によると、“中止ではなく延期”なので、開催の見込みはある。だがスターライトオーケストラを含む日本の学生オーケストラは、3月が年度の区切りである以上、進学しない者、進学してもオーケストラ活動を続けられない者――すなわち退団者が出る可能性が濃厚だ。
(実際、諸外国を見渡してみると年度が4月始まりの国はごく少数派だ。おそらく国際コンクールに出場するのは9月始まりのヨーロッパの楽団が多いだろうから、混乱は最小限に留められると主催者側に判断されてしまったのだろう)
 朝日奈は驚きと悲しみでなにも言えなくなる――現在のメンバー全員が揃ったスタオケでウィーンの本選を戦う気満々でいたのだから。

ガラコンサート終了後のスタオケの活動が想像できない朝日奈…

初めての客演

 国際コンクール本選の無期限延期をスタオケメンバーに知らせた銀河と朝日奈。各メンバーも、「理解はするが納得はしがたい」という反応を見せる。
 とはいえ、現在準備中のガラコンサートは予定通り開催される。だがそのコンサートに、日本オーケストラ協会の指定で、客演のピアニストが入ることになった。客演を迎えるのは、スタオケでは初めてのことだ。

「同期の俺もおっさんってことになるだろーが!」by銀河

 最近、とある著名なピアノコンクールで優勝した兵頭。星奏学院出身で、銀河&篠森の同期でもある。「すすすすすみません!!」「ごごごごごごごめんなさい」が口癖の自称陰キャだが、実際の演奏では強い個性が炸裂するタイプのソリストだ。
 オケ協の指定で加えられた演目「ピアノ協奏曲イ短調 作品16」(グリーグ)を兵頭とともに合奏練習するスタオケ。我の強い兵頭の演奏に振り回された朝日奈は全体をまとめきれず、いつものように各人の個性も発揮させられずに終わってしまう。

 あまりのふがいなさに奮い立ち、夜遅くまで個人練習に没頭する朝日奈。
 一方で、3年生メンバー(香坂・桐ケ谷・刑部・乙音・笹塚・仁科)たちが寮の食堂で朝日奈、ガラコンサート、そして自分たちの進退について話し合う。銀河は彼らに本選の延期を伝えると同時に、「今後のスタオケの活動にどう参加していくかゆっくり考えてほしい(=自分の今後の人生を第一に考え、検討した結果より優先すべきものがあるならスタオケをやめても構わない)」と話していた。

朝日奈を筆頭とする下級生たちがどうこう言える問題ではないので…

 ひとまず、来るガラコンサートに備えねばならない。だがピアノ協奏曲の完成度はまだ低く、3年生たちも練習不足であることは否めなかった。3年生たちも個々人で精度を高めていこうということで一致し解散する。
 ひとり食堂に残った笹塚は、練習室から漏れてくる朝日奈のがむしゃらなヴァイオリンを聴きながら難しい顔をしている……。

朝日奈とスタオケのいびつさを学生メンバーのなかで唯一把握している笹塚

 一方、「ピアノ協奏曲」の調整を続ける銀河と兵頭。ピアノ協奏曲はピアノが主役なので、ピアニストである兵頭の解釈にスタオケが合わせるのが本来のあり方である。だが銀河は兵頭に表現方法の変更を持ち掛ける。

図星ィ!

 放課後の練習では、コンサートミストレスである朝日奈が兵頭の解釈に合わせられないのが失敗の原因だった。銀河は朝日奈のやりたいことを汲み取り、それを兵頭とすり合わせようとしているのだ。兵頭はそのことに気付いて「君は、あのコンミスをすごく大切にしてるんだね」と指摘し、「今回の客演が僕じゃなくてもっと一般的なソリストだったらどうなってただろうとは思う」と述べる。

銀河自身にも自覚はあった

 兵頭の指摘はもっともだ。銀河のこのやり方はコンサートミストレスである朝日奈に対して過保護であり、客演のソリストを軽んじていると不快がられても文句は言えない。今回は銀河の旧知で、銀河の音楽を好意的に見ている兵頭が相手だったからこそ、快く受け入れてもらえたものの……。
 一方、兵頭の方にもまったく問題がないわけではない。彼はどうやら手を負傷しているのを隠しているらしい。銀河のみが練習期間中にその事実に気付いて療養を勧めようとするが、演奏家として後がない兵頭は「ガラコンサートでは最高の演奏をするから」と押し切る。

 銀河の調整が奏功し、スタオケはガラコンサート当日に向けて楽曲完成度を上げていくが……。

ガラコンサート当日

 上級生メンバーの去就を気にして、リハーサル直前なのにいまひとつ集中力を欠いた朝日奈。見かねた朔夜が気分転換のために外に連れ出す。追いかけてきた他メンバーたちとともに満開の桜に歓声を上げた朝日奈だが、桐ケ谷が上級生メンバーを代表して「全員スタオケの活動を続ける」と表明したことで目に涙を浮かべる。

兄貴ィ!!!
メインストーリー第1章、星奏学院合格発表のシーンのリフレイン

 「未来はわからない。だからこそ、今、共に音楽を奏でられることがとても大切に思える」。桜吹雪を見上げながら、朝日奈は最高の演奏をガラコンサートで披露することを改めて決意する。
 朝日奈ら下級生たちの憂いは一旦これで晴れるが……同時刻、兵頭はそうはいかなかった。

怪しい男たちに接触されている兵頭に対し、銀河は……

 兵頭は、怪しい男たちに“取引”を迫られていた。応じれば、兵頭は手のけがを直す手術を受けられるだけの大金を得られ、活躍の場を保障されるらしい。
 事情を悟った銀河は、兵頭に“取引”に応じて去るように伝える――コンサートの観客、日本オーケストラ協会、そしてスターライトオーケストラ、彼らに対するすべての責任を一身に引き受けて

 個人的には、銀河と刑部のやりとりのテンポの良さにしびれた。

刑部斉士「さすがに、一ノ瀬先生がそんな人間でないことくらいは理解しているつもりですが」
一ノ瀬銀河「そんじゃ、悪いがもう一歩、踏みこんで理解してくれ。俺は今、事の経緯を――」
刑部斉士「説明するつもりがない」
一ノ瀬銀河「理解が早くて助かるよ」

「Secondo viaggio 第1章 春嵐出来フェルマータ」第12話

 ピアニストの消えたスタオケの「ピアノ協奏曲」は、銀河が弾き振りをすることになる。

 コンサート前半の演目は順調に進み、集まった聴衆たちにスタオケらしい演奏を楽しんでもらえた。だが20分間の休憩のうちに、状況はさらに混迷を極める事態となっていく。

日本オーケストラ協会はスタオケのスポンサーでもある

 日本オーケストラ協会の上位団体にあたり、国際コンクールを主催する「国際オーケストラ協会」が、日本の国内選抜の結果の妥当性に疑義を呈した――という一報が駆け巡っていた。スターライトオーケストラの国内選抜勝ち抜きに不正があったようにも取れるこのニュースは、SNSで爆発的に拡散されていく。
 なにひとつ恥じることはしていないが、ショックで意気消沈する朝日奈をはじめ、動揺を隠しきれないスタオケメンバー。さらに悪いことに、休憩後の後半の演目には、問題の「ピアノ協奏曲」があった。

すべての責任を負って、銀河がひとり奮起する

 ……なんとか形を持たせたものの、銀河ひとりが圧倒的な才能を発揮する演奏は、もはや“スタオケの演奏”ではなかった。スタオケにやましいことはないが、一般聴衆から見れば舞台上の演奏がすべてである。「指揮者は確かに一流だった。だが全体としてグランツに勝てるほどかというと……」「やはりスタオケが国内予選を突破できた裏にはなんらかの不正があったのでは?」という聴衆の疑念が増幅してしまう結果となった。
 なにより、「自分たちが楽しみながら、来てくれたお客さんのために最高の演奏を届ける」という使命を果たすことが、朝日奈たちにはできなかったのだ。

 SV1章、マジでここで終わったんですよ!! 読み終わったリアタイ勢が口をそろえて「ここで終わるの!?」って悲鳴を上げていて、実際に自分も読み終わったら「ここで終わるの!?」って同じことを叫ぶ阿鼻叫喚の巷だったよ。
 後発勢はシームレスに続きのSV2章を読めるが、配信当時はSV1章が2022年9月末、SV2章が11月半ばだったので、1か月半ここで情緒メタクソにされたのもいまとなってはリアタイ当時のいい思い出だ。

 Secondo viaggio各章タイトルには、「金色のコルダ」シリーズの伝統に倣って音楽用語が付されている。SV1章タイトルの「フェルマータ(fermata)」は「(音符や休符を)程よくのばす、程よく休む」の意味。イタリア語の名詞としては「停止」「滞在」を意味し、バスの停留所を指すこともある。スタオケのメンバーは銀河の運転するバスに乗って旅をしてきたが、この停留所での停止を求められ、メンバーの再確認、目的地と経路の再設定に迫られている。

二度目の船出

道を断たれた若者たち:コロナ禍とのかかわり

 著名人の死という不測のできごとによって若者の活躍の場が失われる――2020年代を生きる我々にとっては記憶に新しいが、コロナ禍によって東京五輪をはじめ多くのイベントが中止や延期になったことに重ね合わされていることは間違いない。
 2020年7月に開催される予定だった東京オリンピックは、新型コロナウイルス感染症の世界的流行を受け、開催4か月前の2020年3月に1年間の延期が決定された。決定通りちょうど1年後に開催される運びになったが、すでに出場が決まっていた選手、彼らを支えるスタッフやスポンサーたちから不安や苦悩が聞かれることもあった。スポーツ選手は(種目にもよるが)、選手としての“旬”が必ず存在する。オリンピックは4年に1回なので、2020年の夏にその“旬”を合わせようと調整を進めていた選手たちにとって、延期や中止は大きな負担となる。事実、2021年7月に開催されたとき、金メダルの獲得が期待されていた日本選手の予選敗退が相次いだが、本来の予定通り2020年に開催されていれば結果は違った可能性がある。また、マイナースポーツにおいてはスポンサーの確保も大変難しく、1年の延期が決定した段階でスポンサー探しに追われた選手も少なくなかった。
 学生の活動においても、高校野球や吹奏楽の大会も中止が相次いだことも思い出される。オリンピックと異なり、学生の大会の場合は延期というわけにはいかない。2020~2022年の3年間、スポーツや音楽において活躍の場を奪われた若者たちは多く、進路に影響が出たケースもあったに違いない。

 2021年2月にサービス開始した「スタオケ」の世界ではコロナ禍は存在しないが、「スタオケ」のシナリオは時にユーザーの生き方に寄り添う姿勢を見せることがある。SV1章を読んだユーザーの多くが、今回の朝日奈や仲間たちの描写に共感できる部分が多かったのではないか。

“スタオケの実力”を問い直す旅

 メインストーリー第一部(1~9章)の内容を振り返ると、「メンバーを集めるためのロードムービー」という要素が強く、各キャラクターやコンビの紹介に留まっていた面があるように思う。実際、メインストーリーはサービス開始の2021年2月から9月までほぼ毎月新章が配信され、章ごとに新キャラクターが加入する形だった。時系列順にキャラクターたちをゆっくりと掘り下げていくと、後半に登場予定のキャラクターたちが実装されるまで長くかかることになるので、ひとまず顔見せ的に全キャラクターを紹介し、後でイベントストーリーで掘り下げていく形式自体はまちがっていない。だが、8章までに集まった仲間が9章で常勝軍団(前年の国際コンクールの出場実績もある)とも呼ばれるグランツ交響楽団を大舞台で下すのは、あまりにも展開がスムーズすぎるとの指摘が多くあった(筆者自身も「ん? これで勝って終わり? あれ?」となった)。
 Secondo viaggio 第1章でスタオケに降りかかる試練は、メタ的な意味も含めて“スタオケの実力の問い直し”をしている。ユーザーが2021年9月に抱いた「スタオケは本当にグランツに勝る実力があったのか?」という疑問を、2022年9月にストーリー内の聴衆たちから実際に投げかけさせているのである。

月城、朝日奈を評す

 メインストーリーが各キャラ紹介に終始しているため、主人公(朝日奈唯)の音楽家としての立ち位置や実力も、いまひとつわかりづらかった。メインストーリー第1章で銀河に「お前がコンサートミストレスだ」と指名されてコンミスを務めてきた朝日奈の、コンミスとしての資質が、Secondo viaggio 第1章13話の月城によってようやく明言される。同時に、現在の彼女が一ノ瀬銀河の補佐なしで才能を発揮できないことも。

成宮小百合「…ということは? 朝日奈さんの実力が高くないならいったいどこが彼女の強みだと?」
月城 慧「おそらくは、構成力
月城 慧「いくつもの個性を拾い集め、新しい音楽を作り上げることに長けている」
月城 慧「あれは、オーケストラをやるための才能だ」
成宮小百合「拾い集めるとは、どういう意味?」
月城 慧「たとえて言えば、そう――和洋折衷、創作料理の天才シェフのようなもの」
月城 慧「異なる素材や調理法を自由に採り入れて、新しい料理のように見せるのを得手とする」
成宮小百合「…なるほど」
月城 慧「ただ、今はその片鱗が見えるだけでまだまだ未熟だ」
月城 慧「おそらく本人さえも自分の資質に気づいていない」
成宮小百合「でも、日本代表になったわよ?」
月城 慧「スターライトオーケストラに彼女を器用に補助できる人間がいるだけの話」
月城 慧「彼女のやりたいことを汲み上げ、実行できる実力者――」
月城 慧「逆に言えば、彼がいなければスターライトオーケストラの優勝はありえなかった」
成宮小百合「……ああ。納得がいったわ」

「Secondo viaggio 第1章 春嵐出来フェルマータ」第13話

 思い返せば、メインストーリーで銀河個人がピックアップされるシーンはほぼない。彼は各章において、新メンバーとのかかわりに悩む朝日奈に助言を与え、物語の主役を若者たちに譲り、常に脇役としてオケを取りまとめていた。イベントストーリーでもだいたい「ダメな大人」で、ときどき妙に朝日奈の保護者ヅラをしているかと思えば、ふとしたときに真面目なツラをしている銀河。彼の本来の実力と魅力をこのような激動のストーリーラインに載せて表現するのは、“話が上手い”としか言いようがない。

 SV第1章冒頭部分で、朝日奈の内心の表現として「ずっとこの時間が続いてほしい――」というテキストが表出したのは、当然ながら「幸せな時間は永遠ではない」と現実を突き付けて否定するための前フリである。朝日奈と仲間たちの幸せな音楽は、銀河の庇護の下によって実現していた。過去のイベントストーリー「Music and the Fatal Ring」でもその片鱗が表れていたが、元気にのびのびとヴァイオリンを弾いているように見えていた朝日奈は、その実、籠の中の鳥だったのだ。
(銀河と朝日奈の関係については、続編となるSV2章でさらに詳しく語られているので、本記事ではこれ以上掘り下げないこととする)

上級生たちの巣立ち

「ゲームのストーリー内で年度を改め、学年をひとつ上げる」というシチュエーションは、部活動を描く学園物のストーリー漫画の連載が長期化した場合にしばしば発生する。これまでの「金色のコルダ」シリーズは、基本的に年度内で完結するストーリーであったため、「学年が上がる」シチュエーションはほとんど描かれてこなかった。スタオケはここに一歩踏み込んだ形となる。

襟川氏:
 実は,キャラクターの学年を1年上げようと思っています。スタオケの世界って,いずれ過ぎ去っていく期間限定の青春の時間を描いていますよね。学年を上げることで,そういった部分をもっとエモーショナルに描いて,「やっぱり音楽が好きだ,スタオケが好きだ」と,みんなが成長していく過程を描きたいなと思っているんです。

4gamer : 「金色のコルダの日&「スタオケ」1.5周年記念インタビュー。プレイヤーとの対話で目指す,幸せな気持ちを運ぶアプリ作りとは。メインストーリーの先の展開も聞く」

 スタオケの3年生メンバーはそれぞれ希望の大学や専門学校に進学しつつ、引き続きスタオケの活動を続けると表明することで朝日奈や下級生たちを安堵させる。SV1章ではひとまず「全員が各々の希望の進学先に進む」ことだけ判明するが、卒業をテーマにしたイベントストーリー「SV間奏1 旅立ちのシンティッランテ」でさらに掘り下げられた。
 部活動を描く学園物の長期連載漫画のストーリー内で学年が上がる場合、卒業年次にあたる3年生の人気キャラクターの扱いに難儀することが多いらしい。だが「スタオケ」は課外活動を中心としたストーリーなので、卒業後も彼ら自身の意思によって引き続き活動を続けることができるという、なんともいいとこどりの着地点を実現できた形だ。卒業したメンバーはSV2章以降は各学校の制服を着ることがなくなるのがちょっと寂しいが……。

 一方、月城が語った通り、グランツ交響楽団に在籍しているメンバーにも変化が現れる。グランツ所属のメインキャラクターのうち、巽と御門は高校3年生だ。

 巽は大学進学を選んだ(音大ではない)。といっても大学で特に学びたいことがあるわけではなく、あくまでも月城とグランツ交響楽団のための受験&進学であるという。音楽を専門的に学ぶための音大への進学を強く勧めていた月城から「まるで理解できない」と言われてもどこ吹く風。まじでおもしれー男……。

グランツに在籍し月城に仕え続けるためには学生でなければならないため、留年or進学が必須だった巽。合格発表の確認を主にやらせるんじゃありません!

 一方で、進学せずに“黒橡”としての音楽活動を続けることを選んだ御門。メインキャラクターの中で唯一学生でなくなる。よってグランツ交響楽団を退団し、さらに補足すると参加資格を“22歳以下の学生”と規定した国際コンクールにも出場できなくなることになる。彼の場合、「世界の舞台を目指す」などと夢と希望に満ちた目標を標榜していられる立場ではないので、こうした決断を下すのも納得できる。

このツラから「稼がせていただきます」という発言が出るの、だいぶギャップがすごい

 進学しないのは、現在彼が世話になっているリーガルレコードへ金銭面で頼るのを避けるためだという。幸い、大学は高校を卒業したいまでなければ入れないということもない。彼に経済的・時間的余裕ができた際に進学を検討できる機会があるとよいが(もちろん、学ぶ気があればの話)。
 まあ、グランツ脱退についてはリーガルレコード社長・成宮小百合にだいぶ反対され、最終的に「脅された(ので脱退を認めざるを得なかった)」と言わしめるほどだったというが……いやまじでいったいなにしたの? この人。

 引き続き「金色のコルダ スターライトオーケストラ」Secondo viaggioの各章を読み直し、記事をまとめていく予定でいる。サービス終了に……間に合え……!

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