ソシャゲアプリのサ終告知、諸行無常の響きあり
噂に聞くサ終のお知らせが……自ジャンルにも来た……!
(筆者がそれなりに課金して遊んでいたソシャゲがサービス終了するのは、これが初めてである)
2年半に亘って汗と涙の青春音楽物語を無限に浴びせられてきたユーザーとしては、情緒をはちゃめちゃにさせられながら楽しんではいた。が、10月以降あからさまにイベント開催頻度が落ち、追い打ちをかけるかのようにコミカライズの最終回も告知され、なるべく口には出さないようにはしていたが嫌~~~な空気は漂っていたので、まあ……唐突感はなかったと思う。
一応、アプリ内で獲得したカードのイラストや解放済みのストーリーを継続して楽しめるオフライン版が配信されることは告知されているが、こちらは期間限定だそうだ。
分岐点
この段はサ終前の“嫌~~~な空気”を体感したユーザーの主観と、そこから導き出される憶測を含む備忘録に過ぎないので、客観的事実として捉えないようご留意いただきたい。
2023年8~9月
2023年8月の時点では、まだ継続の雰囲気があった。というのも、盛大ではないがアプリ2.5周年の企画が立ち上がっていたし、今後のコンテンツ内容に反映させるためのユーザーアンケートが実施されていたからである。加えて、8月末から始まる3年目のバースデー企画について概要が発表されたことから、「バースデーが一周する2024年8月まではアプリを継続する見込みがあるんだな」と受け取ることができた。
2023年9月には、「金色のコルダ」シリーズ20周年記念イベントがアプリ内で開催された。これまで少しずつ実装されてきた過去シリーズのキャラクターのカードが一気に4人分実装され、未実装のキャラクターがいよいよ少なくなってきたところだ。
が、同時に「シリーズ過去作移植を検討してはいるが、単純に出すだけでは採算が取れず厳しい」という公式からの発言(4Gamerのインタビュー。収録日は2023年8月29日)があったことから、そうなのか……という空気が漂い始める。
2023年10~12月
2023年10月上旬には「すみすみ」とのコラボ第2弾が実施された。2022年に開催された「すみすみ」コラボ第1弾はキャンペーンとカード実装のみだったが、第2弾ではストーリーのあるイベントとなったため、ユーザー間では「第1弾よりも気合が入ってるな」との感触があった。
だが「すみすみ」コラボイベント終了後は10月下旬のハロウィン期間まで、まったくイベントのない期間(いわゆる虚無期間)が発生した。「すみすみ」アプリ内でもコラボイベントがあったため、「あーこれはすみすみの方に集中しろってことね」と理解してパズルに勤しむユーザーたち(結構難度の高いパズルゲームなので時間と手間を食う)。だが10月下旬のハロウィンも、前年までのストーリーつき「イベント」ではなくログインストーリーと新規カード実装のみの「キャンペーン」のみであり、ハロウィン期間に突入してから気づいたユーザーからは「あれ?」と疑問の声が上がることもあった。
2023年11月の新規イベントは、メインストーリーに準じる「Secondo viaggio」の新章のみ。いやさすがになにもない期間が長すぎでは……? もしかして運営、2023年8月から実装されたバースデーコンサートを1イベントと認識してない……?と不穏な空気を感じるユーザーたち。
そして冒頭で述べた、コミカライズ版連載終了の告知が11月28日。これが真綿で首を絞められるような感覚ってやつかぁ!?
(1枚目の画像に「次号、堂々の最終回!」とある)
画像を見てわかる通り、八橋はち先生のコミカライズはとても丁寧で作画も最高だったので、メインストーリー完走までぜひ読んでみたかった。ただし、約2年かけてメインストーリー2章までの内容を執筆されていたため、全9章のメインストーリー完走までこのペースで連載するのは厳しかっただろう。
そして2023年12月4日(月)のサービス終了告知につながる。
実際のサービス終了は3月末なので、2月のサービス開始3周年を迎えることはできる。だが年度末であることを考えると、さほど落ち着いて“お別れ”ができるとは思えない。オフライン版の詳細を待ちつつ、残された日々の中でたくさん思い出を作らねばならない。【2023/12/20 追記】オフライン版の詳細が発表されたので、リンクを貼っておく。2024年3月30日~6月30日までに既存のアプリをオフライン版へアップデートする形のようだ。
ただ、メインストーリーの続きの物語すなわち第二部に相当する「Secondo viaggio」は残り2章+αをもって完結させるとの告知もあった。メンバーそれぞれの音楽と将来を模索する物語に一区切りがつくところまで見届けることができるようなので、その点はとりあえずよかったと思う。
憶測
ユーザー目線で明らかに不穏な空気が漂い始めたのは、イベントが少なくなった10月以降のことである。とすれば、その準備期間に相当する8~9月の時点で“なにか”があったことは想像に易い。
素人なりに思いつくのは、9月に発表されて大荒れとなったUnityのライセンス料の改定告知である(【ファミ通.com】Unityがインストール数に応じた新料金プランの修正案を公表。開発中/開発済みゲームへの遡及的な適用も撤廃【リリース追記】)。「スタオケ」もUnityを用いて開発されているので、直接ではなくとも間接的な原因になりそうではある。
【2023/12/20 追記】「B's-log 2024年2月号」のクリエイターインタビューにて、襟川ブランド長がサービス終了について言及している。
後で振り返ってみると、10月末のハロウィンキャンペーンは、本来は従前通り全10話のイベントストーリーを伴うハロウィンイベントの予定で準備されていたものを急遽変更した結果のようにも思われる。それが事実であると仮定するならば、舞台設定やログインストーリーが凝っていたので、本来のイベント形式でハロウィンを楽しんでみたかった。
半年持てば御の字というソシャゲ戦国時代の中で、リリース後3年間運営できたのは悪くない結果だとユーザーとしては思うが……まあ、偉い人たちがどう評価するかは別の話かな。
「サ終したら何も残らない」は真実か?
「ソシャゲはサ終したら何も残らない」と言う言説は、ソシャゲ黎明期から取り沙汰されてきた。ソシャゲコンテンツを嗜まなかった筆者にとっては他人事だったが、今回初めて“サ終”にぶち当たったことで、「言うほど何も残らないもんか?」という気持ちになっている。
消費型娯楽体験も悪くなかった
サービス終了したらアプリ内のコンテンツにアクセスできなくなる、そのこと自体は事実として、それはよく比較対象とされるコンシューマーゲームもサポート終了した後にハードが故障したらゲーム体験ができなくなるので、なんら変わらないのではないだろうか。オタクは「モノを所持する」ことにこだわる傾向が強いと指摘されることもあるので、その傾向に由来する言説なのかもしれない。
美酒美食を楽しむとか、旅行を楽しむとか、世の中には消費するタイプの趣味がさまざまある。見ようによっては“体験が済んだら終わり”かもしれないが、それらを趣味にしている人々にとってはそうではない。ソシャゲもそんな消費型趣味のひとつで、当人がその消費体験によって満たされていれば十分娯楽として成立するのだなと改めて思った。
コンシューマーゲームへの回帰は是か非か
コンシューマーゲームとして発売されていたシリーズがソシャゲに進出した際、「コンシューマーで売ってほしかったのに」と言われることがある。それに伴って「ソシャゲ堕ち」という言い方が存在するのも、まあ理解はできる。
実際、「金色のコルダ」は手堅いシミュレーションゲームとしてシリーズを重ねてきたコンテンツである。ユーザーの行動がキャラクターのパラメータに事細かに反映され、フラグを立てることで多彩なイベントを発生させることで、ユーザーにもうひとつの”人生”を提供してきた。そうしたゲーム体験を期待するシリーズファンにとっては、ソシャゲ特有の"手軽さ”は求めるものと相反するものになりがちだ。
そして、この場で個別に取り上げることはないが、「スタオケ」においてもサ終告知の際にもそうした内容のつぶやきが散見された。
こうしてひとつのソーシャルゲームアプリの終焉を迎えるいま、アーカイブ的なソフトを求める気持ちはもちろんあるが、いちユーザーの立場としては「最初からコンシューマーゲームとして売ってほしかった」とは思わない。
現代人向けソシャゲスタイル
ゲーム性はシンプルにまとめつつ、最小限の作業で育成ができるシステム。フレンド機能は実装されているが、ゲームプレイにおいてさほど重要ではない(強いフレンドがいなくてもイベントをクリアできる)。イベントごとに実装する美麗なイラストで物欲を煽り、ストーリーをじっくり読ませることに特化したスタイル――スタオケはそんなゲームだ。
忙しい中でも、ぼーっとして頭が働かないときでもゲームを進行させて美しい物語を楽しめる、ソシャゲの形式だからこそ、3年間楽しんでこられたのだ。手持ちのスマホの中にキャラクターたちがいてくれたからこそ、忙しいときでもキャラクターたちのことを思うことができた。
ネオロマンスの過去作に関しては、描き下ろしイラストが少ないのが個人的に大きな不満だった(ゲーム内立ち絵を並べただけのジャケットイラストでCDが販売されるとか普通にあった)ので、ソシャゲ特有のスピードで新規イラストを提供してくれるスタオケは本当にありがたかった。
システムやUIまわりの改善が著しかったのもありがたかった。リリースからしばらくはアプリデータが常時10GB以上と非常に重かったためにやめてしまったユーザーも多かったようで、2022年6月以降は改善した(3GB程度)にも関わらず、そのあたりが知られないまま終わってしまうのは残念に感じる。
短いスパンで配信されるストーリーの感想をユーザー同士で共有し合うのも楽しかった。これはコンシューマーゲームで提供されたのではできない体験だったと思う。
加えて、スマートフォンで基本無料で遊べるため、これまでに「金色のコルダ」シリーズを遊んだことのない人がその魅力の一端に触れてくれた(=新たなファンを開拓できた)のもよかった。サービス終了後も、せっかくついてくれた新規ファンを繋ぎとめる施策があることを期待したい。
コンシューマーゲームとして発売されていたら、筆者の場合、おそらく一定期間集中して初回クリアまで取り組んだ後、それきりで終わってしまったと思う。自分の生活を成り立たせるだけで精一杯なので、ゲーム内の一定の期間を何度も繰り返して遊ぶ余力がないのだ。
もともと「金色のコルダ」シリーズを含むネオロマンスシリーズは、ゲームソフトを発売した後、ドラマCDやキャラクターソングCDを発売し、声優イベントを開催してファンを通わせるというところまでを1サイクルとしてキャラクターコンテンツを発展させていった経緯がある。だがユーザーのライフスタイルの変化とゲームのモバイル化が進んだ結果、同じ方法で収益を挙げることが難しくなっていることは想像に難くない。
まあ、率直に言って、コンシューマーゲームの方が儲かると見込めるであれば、「遙かなる時空の中で7」や「アンジェリーク ルミナライズ」のファンディスクがとっくに発売されているだろう。企業も慈善事業でゲームを開発しているわけではないのだし。
とはいえ……
スタオケがサービス終了してしまうと、現行で動いている、あるいは開発が発表されているルビーパーティー作品が完全になくなってしまう。移植作品も含めて毎年最低でも1本はゲームソフトをリリースしてきた開発チームが、2023年は1本も出していないのは、ファンとしてはやはり気がかりにもなる。ましてや偉い人から「過去作移植は採算が取れず難しい」との発言があったばかり。なんらかのよいニュースがほしいところだが……。
4ヶ月間の身辺整理
サービス終了の告知を受け、個人的には二日間ほど食欲減退症状が出たものの、比較的穏やかな気持ちでいる。これまでも悔いのないように(もちろん生活が立ち行かなくなるレベルの重課金は避けながら)遊んできたことが奏功しているかもしれない。また、サービス終了までのロードマップが告知と同時に公開されたので、「とりあえず4か月間は悔いのないよう楽しもう」「オフライン版配信に備えて未取得カードを入手したり未読ストーリーを解放したりしよう」「買ったグッズを大切にしよう」などと気持ちを切り替えられたこともある。
ただひとつ困ったことに、オフライン版アプリを入れている端末が完全に動かなくなった場合、キャラクターたちの声が聴けなくなる可能性が非常に高い。学校ごとにフィーチャーされたCDシリーズが出たキャラクターはいいが、出ていないキャラクターはそうはいかない。やはりボイスつきストーリーを録画するしかないのか……準備が必要になりそうだな……。【2023/12/20 追記】未発表キャラクターソングを含むアルバムの発売が告知されたので、とりあえず「キャラの声が聴けなくなる」は回避できそう。助かった~!
「スタオケ」のアプリ内ではのメインストーリーの続編にあたる「Secondo viaggio(通称SV。イタリア語で「二度目の航海」の意)」の物語がイベント形式で配信されており、メインストーリー以上にキャラクターたちの音楽と人生に踏み込んだストーリーが展開されている。これについていつかnoteに紹介を兼ねた感想をまとめてみようと思っていたが、なかなか時間が取れず取りかかれなかった。というわけで、サービス終了までの4ヶ月の間、スタオケとの別れを惜しみつつ、これを書き上げることを個人的な目標としてみたいと思う。
アプリはなくなってしまうが、配信されたストーリーに対する感想を書き残しておくことで、こんなに素敵な物語が存在したことを後世の人に知ってもらうことができるだろう。そして筆者はそれが意義あることだと信じている。
最後に、ごく個人的な話。それのためだけに本誌を追いかけるくらいにはハマっていた「将国のアルタイル」が完結し、ほぼ同時に「スタオケ」のサービス終了を告知されてしまった筋金入りの腰重オタクの筆者。今後のオタク人生の明日はどっちだ……?
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