大事な予定
大事な予定がある。
しかもこの予定は定期的にやってくる。
課題の締め切り日、ではない。後でやる。あの子とデート、でもない。そもそもそんなお相手は隣にいない。
何をするのか。
そう、「何もしないをする」のだ。
アラームをかけずに寝る。
窓の向こうに見つからないくらい高く昇ってしまった太陽の光に目を細めながら布団からのそりと抜け出す。ぽやぽやしながら朝にしては遅く、昼にしてはなんか納得のいかないご飯をもしゃもしゃする。
「今日何しよっかなー」という考えは今日はご法度。もう惰性のままに、何も考えない。体が動いた方向に進んで手が動いたらそれをやる。
そうすると、「今本当に求めていること」が見えてきたりする。
例えばコーヒーをゆっくり淹れるとか、読みかけでもない本棚の奥に眠る本を開くとか、窓を開けてぼーっとするとか。
なんなら入れたコーヒーなんかほっぽっていきなりベッドにダイブしてそこからの記憶が無くなったり。
もしかしたらいきなり公園に行ってみたりするかもしれない。
それでいいのだ。
ゆっくり、世の中に流れる時間なんか気にせず、自分だけの時計で動いてみる。
何もしないで、心の声に耳を傾けてみる。書き出してみてもいいし、何も持たずに家から出てみてもいいし、そんなの関係なく寝てもいい。今日だけは私だけの世界で私だけが支配者なのだ。誰も咎めない。
繰り返しになるが、いつもの癖で「あれしないと」と考えるのはご法度だ。
とはいえ、いざ「何もしない」と決めると「やらないといけないこと」が浮いて見えてくる。ぐっと我慢。悪くいえば無視。だから案外難しい。
それでも、そんな仮面を半ば強制的に剥がして、奥に眠る自分の本当の気持ちに手を伸ばしてみることは大事なことだと思う。
今日だけ。今日だけでいい。
明日からはまた世の中の時計で生きなければならないけれど、今日だけは思いのままに。
さて、明日がこちらにやってきている。
今日の私は偉い。何もしなかったのだから。
だから明日もきっと、頑張れる。
追われがちで大変な毎日だけど、たまには立ち止まって自分とお話ししていきましょ。
お互い、生きていきましょうね。