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企業再生メモランダム・第72回 皆さんにお伝えしたいこと③

「企業再生メモランダム」では、私が、20代の時に、複数の会社の企業再生に従事する過程で作成したメモを題材として、様々なテーマについて記載していきます。

「企業再生メモランダム・第70回 皆さんにお伝えしたいこと①」及び「第71回 皆さんにお伝えしたいこと②」では、「皆さんにお伝えしたいこと」と題したメモの背景とメモの中身の一部について記載しました。

残りのメモの中身について、引き続き、ご紹介したいと思います。

メモ「皆さんにお伝えしたいこと」の中身

5.社内の数字を知る権利

この数年で、対象会社のスタッフの皆さんが勝ち取った権利に、月次決算など、社内の数字を知る権利があります。

対象会社は、数年前に、赤字事業を閉鎖しました。この赤字事業では、毎年5,000万円以上の営業赤字を垂れ流しており、当時、会社の存続にすら、危機的な影響を与えていました。

一番の問題は、当時の一部の経営陣が、この事実を隠蔽して、スタッフに対して、あたかもホテルが順調に稼働しているかのような話をしていることでした。

会社は、スタッフに対して、労働の対価として、お給料を支払います。

そのため、スタッフやスタッフの家族の生活のためにも、簡単に倒産するわけには参りません。

そこで、会社にかかわる全てのスタッフは、社内の数字を知る権利を行使して、経営者がしっかりとした経営を行っているかを監視していかなければなりません。

何度かの経営交代があったとはいえ、50年以上の社歴のある会社で月次決算などがしっかり整備されていなかった会社は珍しいです。

スタッフの皆さんには、もっと社内の数字に興味を持って欲しいと思います。

私は、何社もの会社にわたり、企業再生の仕事をしてまいりましたので、経験則で言うと、社内の数字など情報を隠す経営者の多くは、スタッフに知られたら困るような不都合な事実があるのです。

常に社内の数字に興味を持っていないと、そのような悪い経営者によって、情報は隠されたり歪められたりしてしいまいます。

もし一度そのような状況になったら、スタッフの立場からは手も足も出ません。情報が把握さえできていれば、スタッフ自ら行動することができるのです。

月次決算など社内の数字を知る権利は、対象会社で働くスタッフがせっかく手に入れた権利です。

もっとその価値に気付いて、会社のために、自分たちの生活を守るために活かしてもらいたいと思います。

6.愚痴を許容する

スタッフの皆さんには、愚痴と好き嫌いが明確に区別できるようになって欲しいと思います。

また、個人の感情の代表例である好き嫌いを、仕事に持ち込まないようにしてもらいたいと思います。

より良い会社を目指すからには、経営者や上司は、スタッフに対して、もっと良いサービス、もっと良い品質、とさらに上を目指すように負荷をかけます。

それは決して、そのスタッフが嫌いだからでも憎いからでもありません。

純粋に、会社のため、お客様のためであり、さらにはそのスタッフの成長や経験のために、上を目指すよう負荷をかけるのです。

しかし、若い頃の私もそうでしたが、人間的な成熟度が乏しいスタッフの場合は、これに対して、どうしても愚痴が出ます。

スタッフは、例え、会社のため・・・、お客様のため・・・、将来の自分のため・・・には、今、頑張らなければならない、と頭で理解していたとしても、やはり許容度を超えてしまえば、愚痴や文句が出てしまうのです。

とはいえ、これは、多くの経営者や上司も、いつか来た道です。彼らは、温かい目で、そのスタッフを優しく見守ってくれるでしょう。

このような状況の中で、話が歪んでしまう場合があります。この愚痴や文句を聞いた第三者による噂話です。この第三者の人間的な成熟度が乏しい場合は、単なる愚痴を好き嫌いの話に置き換えてしまうのです。

そうすると、上司と部下の信頼関係にひびが入りかねません。

成長している会社によくある光景とは、経営者や上司が、スタッフに負荷をかけて、スタッフが「上司の○○さん、言っていることは理解できるけど、無茶苦茶言うなぁ」などと言いながら、自分が成長していることを実感しながら、チャレンジして、前向きに楽しく仕事をするというような光景です。

対象会社は、皆さんの努力によって、赤字会社から企業再生を成し遂げ、更なる成長を目指しています。

経営者や上司は、スタッフの愚痴ぐらい許容してあげてください。

「一時的には愚痴や文句を言われ、将来的には感謝される。」

そういった経営者や上司を目指してもらいたいと思います。

会社が良くなる・会社が大きくなる過程に出くわすことは、人生でそうあることではありません。

ぜひとも、共に働く仲間として、お互いに支え合って、濃密な人間関係を築いてもらいたいと思います。



本連載は事実を元にしたフィクションです。

株式会社スーツ 代表取締役 小松 裕介
 2013年3月に、新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、JASDAQ上場企業)の代表取締役社長に就任。同社グループを7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に株式会社スーツ設立と同時に代表取締役に就任。2016年4月より総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師。2019年6月より国土交通省PPPサポーター。

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