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企業再生メモランダム・第11回 若手スタッフへの話 中編

「企業再生メモランダム」では、私が、20代の時に、複数の会社の企業再生に従事する過程で作成したメモを題材として、様々なテーマについて記載していきます。

「企業再生メモランダム・第10回 若手スタッフへの話 前編」では、メモの背景について記載しましたが、中編では「若手スタッフへの話」の中身をご紹介したいと思います。

話をする対象は、赤字で資金繰りが厳しい、地方企業の大会社、終身雇用(前提)、20代の若手スタッフです。

もしあなたがターンアラウンドマネージャーならば、彼らに対して、どのような話をするでしょうか?

当時この話を聞いてもらった若手スタッフも、10年経って、今は役職者になっているものと思います。もしかすると今は若手スタッフに対して同じような話をしているかもしれません。

メモ「若手スタッフへの話」の中身

<仕事とは?>
1.不確実な時代

2.あなたの仕事は狙われている?
(1)ライバルは老人、若者、外国人
(2)社員は経費(お金を使うコスト)なのか、資産(お金を稼いでくれる財産)なのか
(3)付加価値のある仕事が求められている。
(4)給料分の付加価値のある仕事をしよう!ぶら下がり社員にならないために。

3.「労働」ではなく「仕事」にしよう!何のために働くのか?

4.キャリアとは?
(1)あなたは会社に何ができる?社内におけるキャリア設計。憧れの上司。
(2)社外におけるキャリア設計。どこにいっても通用する人材になろう。

5.「上司」と「部下」は、組織における役割分担。

6.上司には「役得」もあれば“役損“もある。

7.自分に投資をしよう!
(1)勉強のススメ(会計、マーケティング、経営戦略、ファイナンス、オペレーション、テクノロジー、歴史、心理学、統計・・・)
(2)読書のススメ

私はターンアラウンドマネージャーです。企業再生をするのが仕事ですが、若かりし頃、上司の指示で関与した案件では、完全に手遅れの案件もあり、その会社をどう静かに終息させるかといった案件もありました。

この手の仕事をしている人は、再生も見ていますが、終わりも見ていますので、いわゆる終身雇用には懐疑的な人が多いと思います。

対象会社は赤字で資金繰りが厳しく経営改善待ったなしの状況だったにも関わらず、スタッフの大半は、未来永劫、明日も今日と同じような毎日が続くと思っている人ばかりでした。

このような状況下で、まず、若手スタッフに伝えなければならないことは、私たちが生きている世の中は不確実であるということです。

この15年を振り返っても、2008年には100年に一度と言われる「リーマン・ショック」がありました。2011年には同じく100年に一度と言われる「東日本大震災」がありました。そして、2020年には未曽有の新型コロナウイルス感染症問題が起きました。

昭和の高度経済成長期がいかに安定していて、むしろ、私たちの親世代が生きていた時代が「異常な安定」だったのかを知る必要があります。

しかし、未来は不確実ではありますが、しっかりと準備と心構えさえしていれば、不安定の中でも安定を見出すことができます。

経営者は真実を伝えるべきだと思います。

全盛期のソニーで、創業者の盛田昭夫さんが、入社式で新入社員に贈った言葉に「君たち、ソニーに入ったことをもし後悔することがあったら、すぐに会社を辞めたまえ。人生は一度しかないんだ。」があります。

そして、続いて「そして、本当にソニーで働くと決めた以上は、お互いに責任がある。あなたがたもいつか人生が終わるそのときに、ソニーで過ごして悔いはなかったとしてほしい。」と言ったとあります。

経営者でこれはなかなか言えることではありません。この言葉は誠実だと思います。本来は会社とスタッフは対等の関係なのです。

世の中の経営者ではテキトウに空手形を切る人が多いのですが、経営者として最大限努力をしたとしても、その人の人生そのものの面倒をみることはできないわけです。

次に、自分の目の前の仕事を、イヤイヤ過ごす「労働」ではなく、イキイキと過ごす「仕事」にするべきだということを伝えたいと考えました。

これは、最終学歴が大学卒で就職活動をした人からすれば当たり前のように思うかもしれませんが、最終学歴が高校卒の方の多くは、残念ながら、しっかりとしたキャリア意識を持っていないことが多いです。

私が社会活動で手掛ける一般社団法人スクール・トゥ・ワークで追いかけているテーマでもあるのですが、今の日本では、中学生や高校生に対するキャリア教育が不十分にも関わらず、約19万人近い人が高校就職をして、社会に羽ばたいていきます。

しかし、残念ながら、統計的には就職後3年以内に約4割の方が離職します。高校卒の方の勤労観は、アルバイトの延長線に近く、大学卒の方の考えるような「仕事」ではなく、時間を切り売りする「労働」に近いイメージです。

対象会社は毎年、地元の高校から新卒採用をしていましたが、私としては、仕事を通じた自己実現であったり、仕事を通じた夢であったりについても、多くの時間を割いてコミュニケーションしたいと考えたのです。



本連載は事実を元にしたフィクションです。

株式会社スーツ 代表取締役 小松 裕介

 2013年3月に、新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、JASDAQ上場企業)の代表取締役社長に就任。同社グループを7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に株式会社スーツ設立と同時に代表取締役に就任。2016年4月より総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師。2019年6月より国土交通省PPPサポーター。

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