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企業再生メモランダム・第57回 後ろを振り返らずに前を見よう 前編

「企業再生メモランダム」では、私が、20代の時に、複数の会社の企業再生に従事する過程で作成したメモを題材として、様々なテーマについて記載していきます。

メモの46枚目は7年前に作成した「後ろを振り返らずに前を見よう」と題したメモです。

今回は長くなってしまったので、前編後編の2つに分けて記載します。

メモの背景

人が変わるには、そう簡単ではありません。

もしその変化が確実に正しく、そして、その人に迷いがあるようならば、その人のためにも退路は断ってあげた方がよいと思います。

そういった環境整備やコミュニケーションをするのも、経営者の役割だと思います。

多くの人は、そこまで自分を強く持っていないので、置かれている環境に左右されます。

厳しい環境に身を置けば、厳しい環境で生き抜くスキルと感覚を身に着けますし、逆に、易しい環境に身を置けば、易しい環境でしか生きられない、少しのスキルと感覚しか身に着けることができません。

対象会社でも、私のリーダーシップが不足していたばかりに、多くの人が変化について来られず、結果として会社を辞めることになってしまいました。特に、企業再生の当初の幹部社員については、この時期になると、会社の求めるレベルについて来られず、大半の人は離職していたと思います。

素早く、会社内において、変化を楽しめる人たちなどをまとめあげることができれば、結果は変わっていたかもしれません。

メモ「後ろを振り返らずに前を見よう」の中身

私は、皆さんは何が真実で、何が正しいかをしっかり理解していると思っています。今回は「後ろを振り返らずに前を見よう」という話をしたいと思います。

1.昔に戻ることはない!

対象会社の前身の会社は、バブル期の過大な借入金と労働組合が強く、そのために会社が潰れてしまいました。そこで、今の株主らが対象会社を設立しました。

その後、対象会社では労働組合はありませんでしたが、① 経営者の放漫経営、② 労働組合体質の幹部社員の当事者意識の欠如から、再度、倒産の危機に瀕してしまいます。

このままだと再度、対象会社が倒産してしまうと思い、数年前から本格的な経営改革をし始めます。① 放漫経営をやめる(経営者の浪費ストップ)、② 赤字部門の閉鎖、③ 経費削減、④ 営業・広報部門改革、⑤ 徹底した情報開示(月次決算)などの改革をしました。そのおかげもあって、経営成績は久しぶりに黒字化を果たしました。

しかしながら、対象会社が過去に浪費した年月は膨大です。その中で大きく3つの問題が発生してしまいました。

① 資産の老朽化、② 税金・社会保険など公租公課の滞納、③ 人件費の抑制・世間相場からの乖離(若手スタッフに関しては地元でも最低の給与水準)です。

これらを是正するためにも、私たちはもっと売上と利益を増やさなければなりません。

そのため、対象会社で働くスタッフの働き方が、過去の労働組合時代、放漫経営時代に戻ることはありません。

スタッフ一人ひとりがもっと成長しなければ、上記を改善できず、会社を維持・発展させられないからです。

このことは株主や経営者が誰であっても同じだと思います。むしろ、他の株主・経営者だったら、もっと苛烈なブラック企業になっているかもしれません。

昔に戻ることはありません。

日本社会が不景気になってから早いもので20年以上が経ちます。市内でも他社の厳しい経営状況は耳に入っていると思います。対象会社が今後、生き残っていくためには、しっかりとした経営をしていかねばなりません。

最後に、再認識して欲しいのですが、世間で言う良い会社は、決してスタッフにとって楽な会社ではありません。しかし、良い会社は、継続してスタッフに働く場所を提供して、安定した生活をもたらします。

もちろん、良い会社は、ブラック企業のようにスタッフをいじめるようなこともありません。良い会社は自分たちの手で創るのです。自分たちに厳しくなければ良い会社にはなりません。

みんなで一緒に良い会社を創りましょう!



本連載は事実を元にしたフィクションです。

株式会社スーツ 代表取締役 小松 裕介
 2013年3月に、新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、JASDAQ上場企業)の代表取締役社長に就任。同社グループを7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に株式会社スーツ設立と同時に代表取締役に就任。2016年4月より総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師。2019年6月より国土交通省PPPサポーター。

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