企業再生メモランダム・第54回 あなたは会社のために何ができるか
「企業再生メモランダム」では、私が、20代の時に、複数の会社の企業再生に従事する過程で作成したメモを題材として、様々なテーマについて記載していきます。
メモの43枚目は7年前に作成した「あなたは会社のために何ができるか」と題したメモです。
メモの背景
別連載の「リーダーと考える経営の現場」と「リーダーシップ往復書簡」では、リーダーシップについて記載をさせていただいています。
多くの日本人はリーダーシップに対して誤解があると思います。それは、リーダーシップとはリーダーのみ、会社であれば社長など経営陣のみが発揮するものだと考えていることです。
本来、リーダーシップとは、ありとあらゆる人が発揮すべきもので、リーダーシップに組織における立場は関係ないのです。
そのため、このような考え方に基づけば、会社であっても、一般スタッフから経営陣を動かすこともできるのです。
企業再生の現場では、会社の経営がおかしくなるほど、幹部社員が私利私欲にまみれていて、一般スタッフはやる気がないといった会社をよく目にします。
現実的には極めて大変なのですが、このような会社だとしても、一般スタッフにリーダーシップがあれば、幹部社員を悔い改めさせて、良い会社にすることもできるかもしれません。
少なくとも、リーダーシップを発揮して、自分の頭で考えて行動すれば、ほんの少しぐらいは、より良い方向に変革することができるはずなのです。
以前も記載したとおり、企業再生を開始した頃の対象会社では、多くのスタッフは思考を停止してやり過ごしていました。
どうにかこの状態を改めなければ、本当の意味での再生、組織と人の再生は成し遂げることができません。
対象会社をより良い会社にするためには、スタッフは会社から何かしてくれるのを待つのではなく、スタッフ一人ひとりが、会社に対して何ができるのかを考えなければなかったのです。
一般スタッフに伝えなければならなかったことは、今までの経営陣と違って、現在の経営陣は、聴く耳を持っているし、何よりスタッフが自分の足で自分の人生を歩むことを望んでいるということでした。
会社と個人は対等の関係です。どちらがどちらの面倒を見るではなく、お互いがお互いのことを慮って、同じ船を同じ目標に向かって漕がなければならないと考えを改める必要があったのです。
このメモは、私が、対象会社の全体会議において、スタッフ全員に対して語り掛けた内容です。
この頃の私は、一つ一つのスタッフとのコミュニケーションは勝負で、一言一句を大事に伝えたいと考えていました。
メモ「あなたは会社のために何ができるか」の内容
対象会社の歴史をひも解くと、前身である会社が身売りをしたり潰れたりするほど労働組合が強くなり、未だに労働組合気質が色濃く企業文化として残っています。
労働組合そのものが悪いとは思っていません。しかし、経営者・幹部社員とスタッフを身分で分けることに何の意味があるでしょうか?
経営者・幹部社員も会社を良くしたい、同じようにスタッフも会社を良くしたいと思うのであれば、協力して会社を盛り立てていけばよいと思います。
世間の労働組合がよく言う労働条件の改善ですが、それには前提として、会社の業績を良くすることがあります。会社の業績が良くならなければ、会社に余力がなく、労働条件の改善など行うことはできません。
会社の業績を良くするために、経営陣・スタッフが一致団結して、売上向上、経費削減など企業努力を行う。
会社に所属する全ての人は、まず先に、自分が会社のために何ができるかを考えて欲しいと思います。
最後に、有名なアメリカ大統領のケネディ大統領の言葉を紹介します。
「国があなたのために何をしてくれるかではなく、あなたが国のために何ができるかを考えようではありませんか。」
この言葉の「国」を「会社」に置き換えてみましょう。
「会社があなたのために何をしてくれるかではなく、あなたが会社のために何ができるかを考えようではありませんか。」
ぜひとも、全てのスタッフの皆さんに、自分が会社のために何ができるかを考えて欲しいと思います。
※ 本連載は事実を元にしたフィクションです。
株式会社スーツ 代表取締役 小松 裕介
2013年3月に、新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、JASDAQ上場企業)の代表取締役社長に就任。同社グループを7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に株式会社スーツ設立と同時に代表取締役に就任。2016年4月より総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師。2019年6月より国土交通省PPPサポーター。