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企業再生メモランダム・第20回 第1回勉強会 経営とは? 前編

「企業再生メモランダム」では、私が、20代の時に、複数の会社の企業再生に従事する過程で作成したメモを題材として、様々なテーマについて記載していきます。

メモの15枚目は9年前に作成した「第1回勉強会 経営とは?」と題したメモです。

「企業再生メモランダム・第16回 勉強会について」に記載したとおり、私は、対象会社の中堅スタッフに言われて、希望するスタッフ向けに勉強会を開始しました。

今回は長くなってしまったので、前編後編の2つに分けて記載します。

メモの背景

初回の勉強会には、若手スタッフから幹部社員まで、非常に多くの人が参加してくれました。

希望者の自由参加としたこの勉強会ですが、純粋にスキルアップをしたいスタッフのみが集まるわけではありません。社内のパワーバランス、社内の風を読むのが上手なスタッフたちによって、参加者が増えたり減ったりするのです。

対象会社では、「何もしない。」宣言をした新社長と、東日本大震災によって著しく痛んだ財政状態を脱するためにも経営改革を進めようとする私との間で、新たな火種が燻ぶっていました。

今回は、この新社長と私の間の確執のエピソードをご紹介しましょう。

当時の私は20代後半とはいえ、既に経営者としてのキャリアは5年程度あり、社内手続きを飛ばすようなことや、事前に上司である社長の根回しを怠るようなことはありませんでした。

とある件で、前もって、社長に話をしたところ「そうなんだね。会社にとってもいいんじゃないかね。やってみましょう。」という話をいただきました。そのうえで、取締役会に諮ることにして、取締役会でも役員が満場一致の賛成をし、会社としても機関決定を行いました。

ところが、いざ実行の段階に入ると、なぜだかどうも現場の幹部社員の動きが悪いのです。さらには、株主側にも、あたかも適正な社内手続きを踏まず、私が勝手に暴走しているような嘘の情報まで流されていました。

その結果、その件は残念ながら、失敗に終わってしまいました。

企業再生の仕事をしていると似たような裏切りはままあるのですが、事前の根回しもしっかりして、取締役会までスムーズに承認可決した案件を、ひっくりかえされたのは初めてでした。

しかも、本来は経営改革の旗振りをするリーダーである会社のトップ、社長に裏切られたわけです。

信じられないことに、対象会社では、社長が、弱いスタッフに対して、地位による影響力を行使して、経営改革の邪魔をしていました。そのスタッフも、板挟みとなってしまっていて、不憫でしかありません。

この反省を活かして、私としては、できることならば、自分の力だけで成功させることができる経営改革、もしくは、少しだけ強い意思を持ったスタッフのみの関与で成功させることができる経営改革というように、これからしばらくは、より失敗リスクの少ない堅い改革に注力することになりました。

読者の皆さんは、なぜ株主チームは、このような方を社長に据えたのだろうと思われる方がいるかもしれません。

当時、社歴、年齢、そして、生え抜き人材であることなど総合的に考慮すると、この方が社長に就くことが間違いだったとは思いません。むしろ、順当な人選だったのではないかと思います。

しかし、その社長は、言うなれば、中身がどうであれ、いつも声高に反対を叫ぶ野党のような存在だったのです。

私や株主チームは、同氏についても、前任の社長同様、真っ当に社長としての役割を果たすことを望んでいました。

ただ、結果として、残念ながら、評論家のような立ち位置に慣れてしまっていたからか、自らがリーダーとなって旗振りをすることはできない方だったのです。

そして、経緯はどうあれ、一度手にした地位や名誉は、人間はよほどのことがない限り、手放すことができないものです。

同氏の苦悩の始まりは、会社の苦悩の始まりでもあったのです。

メモ「第1回勉強会 経営とは?」の中身

1.なぜ勉強会を行うのか?

(1)なぜ今、勉強会を行うのか?(変化の必要性)

① 対象会社の現状
現在の対象会社は、税金や社会保険など公租公課の未払い、未払退職金、老朽化した資産や若手スタッフの著しく低い給与水準など様々な問題を抱えており、業績向上が必須です。

② 今までの経営改革

私がターンアラウンドマネージャーとして着任してから、今まで経費削減を中心に経営改革を行い、年間1億円以上の利益を増大させてきました。

今まで行ってきた経営改革は不採算事業の撤退や経費削減など「やめること」が中心であり、経営陣が正しい意思決定さえ行えば、大半のスタッフの皆さんの協力を得ずに実現可能なことばかりでした。

③ これからの経営改革

しかしながら、これから行うべき経営改革は、スタッフ全員が一丸となって協力しなければ実現できません。具体的には、① 売上向上、② 全社的なさらなる経費削減、③ 管理会計などKPIの設定、マネジメントサイクル、業務分掌や職務権限が明確な正当な人事システムの導入など自律的なマネジメントシステムの構築が挙げられます。

④ まとめ

そのため、スタッフ全員の① 目的意識の向上、② マネジメント・スキルの向上が必須であり、スタッフ教育の実施が急務です。



本連載は事実を元にしたフィクションです。

株式会社スーツ 代表取締役 小松 裕介

 2013年3月に、新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、JASDAQ上場企業)の代表取締役社長に就任。同社グループを7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に株式会社スーツ設立と同時に代表取締役に就任。2016年4月より総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師。2019年6月より国土交通省PPPサポーター。

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