リーダーシップ往復書簡 035
引き続き、リーダーが理解し身に着けるべきインテリジェンスについてご紹介したいと思います。
力あるリーダーには様々な情報が集まります。そして、公式・非公式問わず、様々な情報にアクセスすることができるのが、優れたリーダーの持つ影響力の力です。
今回は、その集まった情報を、リーダーはどのように取り扱うべきかについて記載をしたいと思います。
「情報保持者は、情報開示相手に対して、その情報の全部または一部を、自分のタイミングで、共有することができます。」
これが情報というカードを切る際の選択肢ですが、①情報開示相手を自由に選べること、②情報は、必ずしも全部開示する必要はなく、部分的に取り扱うことができること、③タイミングを自由に選べることなどから、それこそ無数に選択肢があります。
例えば、業績不振の会社が、あえて会社の苦境に関する情報を一般スタッフまで情報共有することによって、全社的に士気を鼓舞するような選択肢もあるかもしれません。逆に、会社の苦境に関する情報は上層部しか持たせないことによって、一般スタッフたちに安心感を持ってもらうという選択肢もあるかもしれません。
リーダーは、情報開示相手に関する情報も持っていることが多いため、その情報共有した情報が、その後、どのように流れるかまで予測がつくはずです。
情報を制すれば、人の動きをコントロールできるのです。
もちろん、倫理観を逸脱して権謀術数を尽くして情報コントロールしてはいけませんが、優れたリーダーは、この情報というカードの切り方で、人を動かしていることも事実でしょう。
リーダーシップについて疑問がある、質問をしたいという方がいらっしゃいましたら、コメントや個別にメッセンジャーでご連絡ください。
また、コメントも大歓迎です。もし興味ある人がいれば、これを酒の肴に一杯やりましょう!
【Q.35】
今まで”組織人”としては情報共有するのが正しいという理解をしてきましたが、違うのでしょうか?
<コメント>
教科書の世界では、”組織人”は、報告・連絡・相談をしましょうと習ったように思いますが、実際は違います。
少なくともリーダーは、組織のために、情報を抱えなければならない、あえて、情報を分断しなければならないことがあります。
経済小説などでも、「(この情報は)墓場まで持っていく。」という表現が出ることがありますが、まさにあの世界です。
なお、私は、少しですが危機管理コンサルティングをしているため、大企業の重要情報や恥部のような話を聞くことがありますが、このような情報にアクセスできる人はとても限られています。
例えば、資金繰りに窮している会社があるとします。この窮状は社長と財務役員のみが情報を持っているとしましょう。これを、全社的に共有したらどうなるでしょうか?
多くのスタッフからすると、その情報をもらったところで何もできず、不安が増して業務効率が落ちてしまうだけです。
弱い人や、組織に対して忠誠心の乏しい距離感の人に、組織に関する重要情報を共有されても、逆効果の場合があります。
情報共有しないことがスタッフを守るケースもあります。
これはスパイの世界などでは当たり前の考え方なのですが、あえて情報を分断することで、その人を守るという考え方です。
この考え方は、基本的に、人間は、拷問などを受けた場合は、もし情報を持っていたら相手に情報開示してしまうという前提に基づいています。
当たり前ですが、もし機密情報を持っていることが分かったら、そのスパイは敵から襲われるリスクが高くなります。
組織としては、下手に情報共有することによって、情報漏洩リスクを抱えるばかりか、当該スタッフまで襲われるリスクを抱えてしまいます。
そのため、情報を分断することが、組織を守ることになりますし、そのスタッフを守ることになります。
これらのように、情報共有と情報の分断とを使いこなすことで、リーダーは組織を守らなければなりません。
必ずしも、情報共有が全て正しいとは考えないほうが良いでしょう。また、もしリーダーから機密情報を共有されなかったとしても、疎外感を覚える必要もありません。
リスク・マネジメントの世界ではむしろ当然のことなのです。
※この記事は、2020年6月6日付Facebook投稿を転載したものです。
株式会社スーツ 代表取締役 小松 裕介
2013年3月に、新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、JASDAQ上場企業)の代表取締役社長に就任。同社グループを7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に株式会社スーツ設立と同時に代表取締役に就任。2016年4月より総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師。2019年6月より国土交通省PPPサポーター。
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