リーダーシップ往復書簡 097
ビジネスシーンで愛・愛情について話をすると違和感があるかもしれません。鳩山元首相が以前、政治シーンで友愛という言葉を使いましたが、国民の多くに受け入れられなかったことも根っこは同じだと思います。
夏目漱石が「I love you」を「月がきれいですね」と翻訳したという逸話がありますが、日本人は直接的に愛という言葉を使うことに対して気恥ずかしさがあるとともに、愛とはある種の宗教性を帯びた言葉なのだと思います。日本はクリスマスやハロウィンなど大々的にイベント化している一方で、宗教性を隠す文化ですから、直接的な表現を使うと逆に一定数の人は身構えてしまうのだと思います。
しかし、リーダーシップを語る上でこの愛・愛情について語らずにはいられないのです。
なぜならフォロワーを大きく成長させるためには、より一層の努力をしてもらわねばなりません。その努力をやりきらせるためには、精神的なサポートがなければ、途中で離脱してしまうのです。
本連載の重要なキーワードである「人は性善なれど弱し」という言葉を思い出してください。いかにフォロワーが世のため人のために素晴らしい夢や目標に共感していたとしても、想定以上の負荷がかかれば人は弱いから辞めてしまうのです。
この負荷をフォロワーが克服するためには、そこにはリーダーの大きな愛情がなければなりません。
例え話でいうと、一流アスリートとコーチのような関係が分かりやすいかもしれません。アスリートとコーチの関係も疑似親子・疑似兄弟のように周囲の人から見受けられる場合がありますが、それに近いものかもしれません。
一部の大企業などは人の成長には愛・愛情が必要であることに気が付いて、なるべく直接的な表現を用いずに、愛・愛情を育みやすいような仕組みを作るなどをしています。
リーダーシップについて疑問がある、質問をしたいという方がいらっしゃいましたら、コメントや個別にメッセンジャーでご連絡ください。
また、コメントも大歓迎です。もし興味ある人がいれば、これを酒の肴に一杯やりましょう!
【Q.97】
自分の「心の闇」、ネガティブな部分と、どのように向き合っていますか?
<コメント>
私も経営者としてのキャリアが15年程度になりましたが、まだまだ成長途中の人間ですので、日々においても、一喜一憂してしまうのが正直なところです。
ご質問で「心の闇」と表現されているような怒りであったり復讐心であったりが芽生えるときもあります。もしかすると、一般的な人たちよりも、感情的には遥かに激しいものが自分にはあるように認識しています。
アンガーマネジメントのような話になりますが、私はそういったネガティブな感情が生まれた場合は、まずは自分の感情を認識することに努めています。
その次に、それを、どうにか口に出さない努力をしています。口にしたら最後で、周囲の人の目もありますので、引くに引けなくなっていってしまうのです。そのために一生懸命に我慢をするのです。
そして、罪を憎んで人を憎まずで、行動と人間を切り分けて考えるようにしています。人間ですから、どんなに優れた人であったとしても、失敗は付き物です。腹立たしい行動のたびに人に憎悪の炎を燃やしていたら、周囲に人がいなくなってしまいますし、何より自分も疲れてしまいます。
自責と他責という観点もあります。自分の周りに起きたことは全て自分が引き起こしているのです。誰かに怒りの矛先を向けるのではなく、自分が反省して、問題解決に努めたほうがよいと考えます。
若かりし頃にメンターの方から言われた「敵を愛せ」という心持にはなかなか到達できませんが、優れたリーダーになるためにはネガティブな感情を自制できることは大事なポイントだと思います。
※この記事は、2021年5月23日付Facebook投稿を転載したものです。
株式会社スーツ 代表取締役 小松 裕介
2013年3月に、新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、JASDAQ上場企業)の代表取締役社長に就任。同社グループを7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に株式会社スーツ設立と同時に代表取締役に就任。2016年4月より総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師。2019年6月より国土交通省PPPサポーター。