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終点の先へ
黄色いカボチャは人気者
久しぶりに高校時代の友人と再会。カフェに立ち寄りながら近況報告をしあう。途中で話題は最近した旅行について。相手にスマホの画面を見せながらスクロールして思い出を共有する。複数ある写真の中から「あっ、これみたことある。有名だよね!」相手の目に留まった。それは海辺に浮かぶように佇む黄色いカボチャの写真だった。
黄色いカボチャは草間彌生の作品でお馴染みだ。瀬戸内海に浮かぶ直島は別名アートの島とも呼ばれている。その写真をはじめ、挙げればキリがないほど複数のアーティストの作品が点在する。とても面白く2泊3日では足りず、リピートすると心に決めている。しかしその旅行の中でボクの一番記憶に残ったアートは別の土地にあった。それは海を渡る前、直島の玄関口であり岡山県のJR終着点。宇野という港町にあるアート作品だった。
日本にもあったんだ
かつてはこの先にも線路が続いていた。
宇高連絡船といって、線路が搭載された船に列車ごとズドンと乗り込み、瀬戸内海を渡って高松駅に繋がるという、「海の鉄道」が存在していた。瀬戸大橋ができて間もなく、宇高連絡船は需要が減り幕を閉じることになったが、現在もこの港町では様々な当時の面影に出会うことができる。
ちょうど最近読んでいた小説と重なる部分があった。イタリアの寝台特急の列車が船に乗り込むシーンだ。普段使わない言葉だが、これがセレンディピティというのだろうか。なんだか嬉しい気持ちが込み上げた。
↓↓↓イタリアの海鉄道について触れた話。
実際の作品はこちら
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作品「終点の先へ」
作品紹介はこのように続く。
そんな宇野の街巡りや島巡りに、連絡船に見立てた10台のレンタサイクルを、この地で一度「道具としての終点」を迎えた鉄たちを集め、熱して叩き、実際に乗車できる自転車に再生させた。塗装色は連絡船の色、後輪上
の文字は船名を示している。
現代アートは好きだが、よくわからない。
現代アートは作品との対話だ。鑑賞者が「これって何だろう?」っと思考して初めて作品として完成するらしい。それゆえに第三者に委ねられている部分があまりにも大きいと言われている。ボクは過去の歴史がぎゅっとそこに詰まっているはずなのに宇高連絡船やその先の直島は不思議と脳裏によぎらなかった。代わりになぜか行ったこともないイタリアの情景が頭の中で広がっていた。
久しぶりに高校時代の友人と再会。旅行の会話はすぐに幕を閉じ、別の話題へ。だからすごく些細なこの話は話さなかった。だからここでつぶやくことにさせていただいた。
*星野リゾート社員が「旅」について書いています。
この物語に登場したアートは、「道具としての終点」を迎えた鉄たちを集め、熱して叩き、実際に乗車できる自転車に再生させた作品でした。実は星野リゾートには船とアートに関連するホテルがあります。同様に「終点の先へ」を考えさせられるのではないでしょうか。
オーシャンビューの客室と海や船旅にまつわる
アートを取り入れたモダンな温泉旅館
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